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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
もう、覚悟は決めたんだ。」

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僕は、大丈夫と自分に何度も言い聞かせながら最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
今度こそ、と夢を見るような嘘だった。
「欲しい物は手に入れたから、もういいんだ」と。
一番、欲しかった君を手に入れることはできなかったけれども。
僕はもう、覚悟を決めたんだ。
前を向く。
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死が分つまでの誓いは破られた。
永遠なんてものはないのだ、と私は心から笑う。
それとも男を見る目がなかったのだろうか。
辛うじて、子どもができる前で良かったと思う。
幼い子どもにとって両親の離婚は痛手だろう。
傷つくのは夫だった、誠意のない男ひとりで充分だ。
私は独身生活を満喫する。
室内よりも外の方が涼しいだろう、と勉強に飽きた集団は肝試しをすることにした。
あくまで息抜き、ということだから墓地を一周してくるだけだ。
くじ引きで、運良く気になる彼とペアになった。
それでも深夜の墓地は明かりがなくて怖い。
私は「怖いの」と呟き、さりげなく、彼の腕を握り締める。
『赫色のスーパーカーの秘密』

街というよりも、町に近い場所にふさわしくない赫色のスーパーカーが止まっていた。
それも我が家の前に。
思わず二度目してして、表札まで確認してしまった。
玄関先で兄と出会う。
「カッコいいだろう」と兄が言う。
「これなら街中でも目立つからな」と笑った。
『春の慟哭』

季節が移り行く。
置いていかれた春の慟哭を聞く。
どんなものにも終わりはくるのだ。
泣いても、叫んでも、終焉は華々しくやってくる。
終わってしまった春の隣で座りながら、慰めも、労わりもなく、寄り添っていた。
それだけでも充分だったのか、気がついたら春はいなかった。
『バースデーケーキで待ち合わせ』

「次に会えるのは誕生日だね」と私が言うと「バースデーケーキが目的?」と彼が言った。
「誕生日なのは、あなたでしょ?祝いたいだけだよ」と私は笑った。
「そういって君の方が美味しそうに食べるんだよね」と彼は笑った。
バースデーケーキで待ち合わせ。
口論は、どこまでいっても平行線。
これ以上、言ったらお互い傷だらけになるだけ。
僕は押し黙った。
すると重たい沈黙が落ちた。
このまま終わりにするのもどうだろうか、と僕が思っていると君が泣き顔で、腕にしがみつく。
「ごめんなさい」鼻水をすすり上げながら君が言う。
僕らは仲直りをした。
夏至を通り過ぎると母が口癖のように言う。
「本当の家族に会いたくない?」まるで心配するように。
「ここが本当の家族だし。今さら会っても赤の他人と同じだよ。ごちそうさま」と私は話題をぶっちぎる。
この世に産んでくれただけの家族よりも、今の温かな家族を大切にしたいと思う。
『燃える恋の日』

まだ使えるととっておいた反古紙。
その裏に君への想いを綴る。
面と向かっては言えないけれども、反古紙の裏になら書ける。
君には見せられない想いの紙は、一枚、二枚と増えていく。
満足できるほど書ききったら、シュレッダーにかけて、ゴミ箱へ。
燃えるゴミの日に捨てる。
『十六の朝』

体が弱くて、生まれた時から長生きはできないだろうと医者が言うほどだった。
それでも両親は生まれてきたことを感謝して、延命処置に少なくない金を払った。
健康体とは言えないけれども、それでも両親の子として十六の朝を迎えた。
自分自身よりも周囲の人に感謝する朝だった。
『京都の海で』

忘れた頃に手紙が郵便受けにやってきた。
宛てだし人の名前を見れば懐かしい名前。
もう数年会っていない友人だった。
結婚式の案内か、それとも同窓会の案内か。
不思議に思って封を開けると白い便箋が一枚。
几帳面な文字で『京都の海で、待っています。』とだけ書かれていた。
「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「ずっと君と一緒だよ」、と。
本当に、ごめんね。」

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僕は、特別に優しい声で最後の嘘をついた。
寝物語を聞かせるように、寂しい夜を埋めるように。
それは本音と真逆の嘘だった。
君の手を取り「ずっと一緒だよ」と。
永遠の誓いをするようにささやいた。
そんなことはできないことを知っていながら、君の笑顔のために嘘をついた。
本当に、ごめんね。
「僕には生きている価値はないんだ。塵芥のような存在だ」あなたは虚ろな目をして言った。
元より自己肯定感の低いあなただから、呟くようにささやくのは、当然の帰結かもしれない。
あちら側に行きそうなあなたを必死に引き止める。
「私の為だけに生きて。あなたが必要なの」と私は手を握った。
さりげなくお揃いの服を着て、デートするのが楽しみだった。
例えばデザインは違うものの同じ色の服を着たり、同じ小物を持ったり。
恋人同士の証のように、おしゃれをするのが楽しかった。
そんな日々の中、あなたはお揃いのペアリングを付き合った記念日に用意してくれた。
私はそれに喜んだ。
海岸沿いの松を切る、という案が出た。
唯一、残った松は枯死寸前とはいえ冷酷な判断だった。
忘れない、と被災者たちは立ち上がる。
署名運動やビラ配りを熱心にして、そういう事実があるということを知ってもらう。
その運動の輪は大きく広がり、県だけではなく他所の県からも、署名が集まった。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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