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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は、特別に優しい声で最後の嘘をついた。
最後だから優しく、甘く嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
「君にもらったものは全部返す」と。
楽しかった思い出も、誕生日プレゼントも、全部返して、君のことを忘れようと思う。
そんなのは嘘だ、と心が叫ぶ。
頼むよ、ごまかされてください。
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優しい口づけは、口移しの愛だ。
された箇所に微熱がこもる。
余裕のある口づけに、心まで溶けていきそうだった。
揺れる心に、されるがままの口移しの愛を受け取る。
どうすればいいのか分からない。
唇がふれた箇所が愛しい愛しいと肌が声を上げる。
乱れた恋心に、これ以上しないで欲しいと願う。
唐突な雨に打たれて、すっかりびしょ濡れになった。
暑さから解放されて、これはこれで涼しかった。
梅雨の雨というよりも、真夏の夕立のような雨だった。
梅雨明けまで近いのだろうか。
冷たい雨は汗を流してくれて、気持ち良かった。
けれども、傘は持ち歩こうと思った。
洗濯物を増やしたくない。
私は突然、郷愁にかられて、新幹線に飛び乗った。
両親には、なんと説明しよう。
手土産すら持たずに故郷へと帰ってきた。
駅を降りると、旧友と邂逅した。
「帰ってきたんだな。久しぶりじゃないか」と旧友は、カラッとした笑顔を見せた。
うまく返事ができずに、私は頬を染める。
「久しぶりだね」
私は怖い夢を見て飛び起きた。
秒針が脳裏に響く。
目覚まし時計を見ると、まだ真夜中といっていい時間だった。
夢の内容は薄っすらと溶けていき、怖かったという印象だけが残った。
隣の部屋から明かりがもれていた。
私は恐る恐る、ふすまを開ける。
「どうしたの?」と姉が尋ねるから指先を握る。
青年が月光に照らされた満潮を見ていたら、少女が新茶を運んできた。
いつもはヘアゴムで結んでいる髪も、おろしているからわずかな風で揺れる。
「寒くありませんか?」少女は開かれた窓を見た。
「ちょうどいいぐらいだ」と青年は答えた。
恋心を冷やすのには、これぐらいの風がいる。
『君の恋は、僕をどう思っているの。』

ずっと君に訊きたいことがあった。
けれど臆病な僕は尋ねることができなかった。
君の返答が怖かったからだ。
自分に自信がなかったからだ。
それでも、今日は勇気を総動員して、質問してみたいと思う。
君の恋は、僕をどう思っているの。
返事に期待する。
『雨音ひとり分』

夜半から雨がずっと降っている。
傘を差した人々が行きかう。
音もない雨を避けるように、少女もまた歩いている。
耳の内側から雨音ひとり分、響いている。
それから逃げるように、足早に歩を進めていた。
まるでノイズのような雨音がひとり分だけ、少女の耳の奥で木霊する。
『銀色の砂漠』

砂にまみれた旅人がやってきた。
この街では珍しいことではなかった。
交易の中継地点の酒場には色んな人種が集まる。
旅人は空いている席につくとコインを置いた。
看板娘がビールを運ぶ。
「お兄さんはどこから?」と看板娘は愛想よく笑う。
「銀色の砂漠を越えてきた」と言う。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
まるで親からはぐれた幼子のような君の頭を撫でる。
「いなくなったりなんてしないよ」と。嘘をついた。
それでひとときでも君が慰められるならいい。
そんな嘘しか言えない僕をいっそ笑い飛ばしておくれよ。
寝る前にスマホが振動した。
緊急を要する用事でもできたのだろうか。
スマホをタップするとLINEの通知。
開けて見ると、猫の写真と『うちの子可愛いでしょ』という文面。
たいした用事ではなかったけれども、猫の写真に和む。
友人がペットを自慢してくるのは、これが初めてではない。
返信をする。
体育館に置き去りにされていたゴムボール。
片付けるのを忘れたのだろう。
ためいきをついて私はしまうことにした。
ふいに思いついてゴムボールを軽く蹴る。
体育館の壁に当たって弾む。
誰も見ていないことをいいことにもう一度蹴った。
くさくさしていた気分が晴れる。
私は笑顔で倉庫にしまった。
今年も彼方に行ってしまったあなたに贈り物を選ぶ。
そんな高価な物でなくていい。
あなたが生きていたら喜んでくれそうなささやかな物でいい。
こうしてあなたのための贈り物を選び始めてから、どれだけの月日が流れただろう。
カウンターに持っていくと「贈り物ですか?」と訊かれたから微笑む。
『風とうたえ。』

風とうたえ。嵐の夜も、凪の朝も。
野に咲く花と、空に浮かぶ雲と。
全てのものに感謝して、うたえ。
それは天まで届くだろう。それは地の底まで届くだろう。
誰かの癒しになるだろう。
だから風と共にうたえ。
その声はか細くとも、その声は儚いものでも。
風と一緒にうたえ。
『天才は誰だっていい』

神童だと呼ばれた子どもも成人した。天才のまま。
彼は皮肉気に笑う。
「天才は誰だっていい。努力できるか、どうかだ」挫折を知らない青年は断言した。
彼は知らない。努力できるのも、才能だということを。
真っ直ぐに夢を追いかけ続けるのも、才能だということを。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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