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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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映像の中の体には欠損がなかった。
あの日、点滅しかけた青信号を無理に渡らなかったら、今でも欠損のない体だっただろう。
映像の中で笑っている自分を見て泣く。
不自由になった体と取り換えられたら、どれだけいいだろう。
できないことを思って、映像を見続けた。
すでに過去になった日々を。
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『ねぇ、なみだ。』

一卵性双生児の姉は、今日失恋した。
同じぐらいの髪をショートカットにしてきた。
これでも私たちは同じでなくなった。
一目で分かるようになった。
鏡のようだったのに寂しくなった。
「ねぇ、なみだ。どうしてあなたが泣くの?」姉が私の頬にふれた。
泣いていたと知る。
『かえし忘れた言葉』

同棲していた彼と別れることになった。
決して少なくない荷物を抱えて彼は出ていった。
私は荷物が少なくなった部屋を見て、引っ越そうかと思った。
部屋の中は閑散として寂しすぎる。
テーブルの上に手紙が置かれていた。
感謝の言葉が綴られていた。
かえし忘れた言葉だ。
『今年の夏は誰色に染まる』

君は夏が来る度に恋をする。
そして、夏が終わる頃、恋をおしまいにする。
君が彼に合わせてマニキュアの色を決めるから、恋をしたら一発で分かる。
一昨年は海を思い出させるような青だった。
去年は太陽を思い起こさせるような赤だった。
今年の夏は誰色に染まる。
仕事は楽しい。
そういうとワーカホリックのように聞こえるだろう。
けれども、やりがいのある仕事につけて、嬉しかった。
楽しい上にお給料がもらえるのだ。
これほど良いこと尽くめなことはないだろう。
誰にも理解されなくてもいい。
私だけが知っていればいい。
今日も楽しい仕事が待っている。
私とあなたは対等だと思っていた。
虚栄心から思いこもうとしていた。
そんなあなたが私をかばう。
そんなことはあってはならないことだ。
それでは私が弱虫のような存在だと気づかされるじゃない。
心についた傷はいつの日か、勲章になるだろう。
晴れ晴れしいものだろう。
かばって欲しくなかった。
季節は気づかないうちに通り過ぎてしまう。
踏んだ感触で、それが木の葉だということに気がついた。
枝から葉が落ちる季節になったのだと、ようやく気がついた。
君は目をそらしつつ、僕の両手のひらを触れ合わせる。
その頬が赤いのは夕焼けのせいだけじゃないだろう。
僕はそっと君の手を握った。
『雨はなぜ、君を誰かの傘の中に。』

こんな時のために傘を置き傘していた。
君は天気予報を見たりせずに、家を飛び出ることは知っていた。
相合傘ができる、それが僕には嬉しかった。
けれども天の神様に裏切られた気分になった。
雨はなぜ、君を誰かの傘の中に。
君の隣にいるのが僕ではない。
『星よ、私に願いを。』

星空が見られないほど、空は雲が覆っていた。
君は祈るように「星よ、私に願いを。叶えてみせるから」と言った。
「君が星の願いを叶えるの?」僕は不思議に思って尋ねた。
「今日ぐらいは特別だ」と君は言った。
日付を見ると天の川に遮られた恋人たちが出会う日だ。
『雨、ふらなければいい。』

君は旅行の日程と週間天気予報を交互に見つめる。
「雨、ふらなければいい。曇りでもいい」と君は言った。
それだけ旅行を楽しみにしているようで、僕も嬉しくなった。
残念なことに週間天気予報は傘マークが続いているけれど一瞬でも雨が上がればいいと思った。
「iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、情けなく笑って最後の嘘をついた。
だって滑稽だろう。
笑ってでもいなければ、やり過ごすことができない嘘だった。
それはどうしようもない嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
ここが僕の死地だ。
生命を使い切るにはふさわしい場所だ。
君よ、いっそ笑い飛ばしておくれよ。
返事はいりません。
どんな言葉も軽々しくなるでしょう。
そんな言葉遊びのような返事は欲しくないのです。
優しくしてくれたあなたが好きです。
あくまで僕が、あなたを愛していたいんです。
あなたからの愛が欲しいと願ったりはしません。
あなたを愛している、という事実だけで満ち足りるのです。
映画研で恋愛映画を撮ることになった。
ヒロイン役は監督のイメージで、清楚な印象のあるあの子になった。
三角関係の微妙に揺れる恋心にふさわしいだろう。
最後のシーンでは主人公役とキスがあるそうだ。
一介のアシスタントには知りたくないことだ。
あの子が好きだったから余計に微妙な気分だ。
ランタンの明かりを頼りに夜道を歩く。
ふいに風が吹いて燈心が揺れた。
それだけのことで背筋が冷たくなった。
お化けが出たところで中身のない亡霊だ。
見えただけで、それ以上の被害はない。
分かっていても、鳥の羽ばたく音だけでも恐ろしかった。
一番に朝を迎える役目を選ばなければよかった。
今日、遊びに来た親戚の子は最悪だった。
軽々しく、私の大切のドールの指先に触れる。
「まるで人間みたいだな」とドールのスカートをめくる。
「いっちょ前にパンツを履いているぜ」と親戚の子は言った。
悪ふざけにも限度がある。
私はドールを取り上げて、親戚の子の頬を苛立ちでひっぱたいた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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