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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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今日は結婚記念日。
いつもは残業してくる夫も、今日は定時で返ってきた。
それだけでも嬉しいのに、ショートケーキと小さな花束を持って帰ってきた。
共働きなのに、いつも私が家事をしているからそのお礼に。
私は恋人同士だった頃のように、さりげなく、夫の両手に指を絡める。
夫ははにかんだ。
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『モールス心音』

僕の胸の上に頭をのせていた君が笑い声をもらす。
君の髪を撫でていた僕の手が止まった。
「まるでモールス信号みたい」と少しかすれた声が言った。
どうやら僕の心臓の音を聴いていたようだ。
「僕のモールス心音は、君が好きだといっているかい?」と僕は尋ねた。
「うん」
『SOSを教えて』

困ったことがあったら、すぐに呼んで。必ず君を助けるから。と、彼に言われた。
どんなことも我慢してしまう私を心配してくれたのだろう。
それでもSOSの仕方が分からない私は困った。
SOSを教えて、と彼に頼むと、暗号にしようか?と提案された。
それなら、と私は頷いた。
『どうやって君の言葉を抱けばよかったのか』

君は僕にたくさんの言葉をくれた。
一つ一つが小粒かもしれないけれど、雨が降るように自然に浴びた。
そんな君とも別れをする時がきた。
後悔はいつでも終わってから。
君が離れてから僕は空蝉のよう。
どうやって君の言葉を抱けばよかったのか。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
・・・うまく笑えたかな?」

------

僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
せめて最後の嘘で君が泣かなければいい。
そのためにできるだけ優しく、できるだけ甘く。
「これ以上関わらないでくれ」と。
なんて冷たい言葉だろう。
声の調子と内容がちぐはぐだった。
・・・うまく笑えたかな?
君のことを愛してる愛してる、愛していたかった。
恋が始まったばかりの情熱で、愛し続けたかった。
けれども、始まりがあるように終わりがあるのは仕方がないことなのかもしれない。
愛という名の灯火はずいぶんと小さくなってしまった。
強風が吹けば消えてしまうことだろう。
一夏の恋のようだ。
通勤路を歩いている最中に、スマホが律動した。
LINEだろうか。
不思議に思いながら指紋認証をして、ホーム画面を見る。
母親からのLINEだった。
『あんたの誕生日に荷物を送っておいたから』とスタンプも顔文字もないそっけない文面が表示されていた。
カンカン照りの中地面にぽたりと滴が落ちた。
外に出て夜空を仰ぐ。
少し欠けた月が見えるはずだったが、雲のせいで見ることはできなかった。
せっかく外に出たのだから、コンビニで飲み物でも買おうかと歩き出した。
すると徐々に雲が流れていった。
燦燦と輝くコンビニの看板が見える頃には、月を見ることができた。
不思議な気分になった。
お風呂で湯船に浸かったのは何か月ぶりだろうか。
いつも忙しくてシャワーですましてしまう。
それなのに入浴剤を入れて、肩まで湯船に沈む。
泣きそうになりながら、色のついた湯の中で両手のひらを握る。
本当は泣きたかった。
けれども独りきりになっても、泣くことができなかった。
それが辛い。
「iotuは、感情を抑えながら最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
・・・どうしようもないな。」

------

僕は、感情を抑えながら最後の嘘をついた。
なるだけ、君に嘘だとバレないように。
まるで自然に、切り出した。
それは未来へと歩き出すための嘘だった。
「いなくなったりしないよ」とささやかな嘘をついた。
感情はすでに、君を置いて先を見据えているというのに。
・・・本当どうしようもないな。
潮風が少女の髪をなびく。
陽はとうに沈み、月が顔を出す時間だった。
波打ち際はまるで子守唄のように、一定のリズムを刻む。
少女は素足で歩いていく。
日中の暑さから解放されて、ほんの少しばかり涼しい。
微かに吹く風が塩の味がした。
結ばず垂らしたままの髪が自由気ままに風に遊ばれていた。
『君は星座の詩を知ることになる』

いつもと違ったデートコース。
プラネタリウムなんて何年ぶりだろう。
隣の座席のあなたが『君は星座の詩を知ることになる』と囁いた。
ほんの少し気障な台詞だったけれども、薄暗くなっていく世界の中では甘く感じた。
街では見えない星々が架空の空に輝く。
『恋よ、どうか長く。』

神社へ行くと、ついつい引いてしまうおみくじ。
たいてい吉以下を引くことが多いと分かっているけれど、大吉を引くことを夢見て。
折られたおみくじをパラパラと開く。
待ち人の項目を注視してしまう。
結果を知って、ためいきがこぼれた。
恋よ、どうか長く。と祈る。
『ドレスよ咲いて』

一針一針ごと丁寧に縫っていく。
デビュタント用の白いドレスは一生に一度のものだ。
これから社交界に飛び出す令嬢のためのドレスだった。
緊張でドキドキしている令嬢に笑顔ができますように。
どうかドレスよ咲いて。
たった一晩でいいの。
緊張をほぐしてちょうだいな。
インクを流したような闇夜に涼風が吹いた。
静かに咲く薔薇の花に手を伸ばせば、棘が毒針のように指先に刺さる。
まるでさわれるのを厭うように、この花は棘を持つ。
それでも少年は気にせずに、闇夜に咲く薔薇の花を摘んだ。
赤く滲んだ指先をそのままに眠る少女の枕辺にそっと捧げる。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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