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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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言ってはいけないことを言ってしまうところだった。
感情のままに、致命的な言葉を吐いてしまうところだった。
私は泣き顔で、自分の両手のひらを折れんばかり握る。
言わずにすんだ言葉を飲みこむ代わりに、涙を流す。
誰にも知られてはいけない、そんな言葉を言わずにすんで良かった、と思う。
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『誰かに好きと言っておいて。』

窓辺にいた君が言った。
『誰かに好きと言っておいて。お願いだから』
僕はそれをつまらなく聞いた。不満が口に出る。
『僕じゃないんだ』と言った僕を、『だってあなたは私のことを好きでしょ』と当然のように君は言った。
そして、振り向いて僕へと微笑んだ。
『夜、君の街まで』

何度、寝返りを打っても眠れない夜だった。
蛍光灯をつけるとゆらゆら揺れる紐には金魚の飾り紐。
僕は眠ることを諦めて着替える。
スニーカーを履いて、自転車に乗る。
持っていくのは携帯電話と財布だけ。
夜、君の街まで向かう。
君も起きていればいいな、と思いながら。
『思い出になにを添えるの。』

君と増やしていった思い出になにを添えるの。
僕は不思議に思った。
二人で作った思い出は、それだけで完璧で付け足すところは一つもない。
これからも増えていくだろう思い出に足すものは一つもない、と僕は信じている。
だって、振り返ればどれも愛しい思い出。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
だってもう、仕方がないだろう?」

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僕は、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
「欲しい物は手に入れたから、もういいんだ」と、物分かりの良さそうな笑顔を浮かべて言った。
だってもう、仕方がないだろう?
手に入れたい物は、欲しい欲しいとねだっても手に入れることはできないのだから。
暗い過去を持つ君は、何に対しても臆病だった。
例えば、それが楽しいことであろうとも。
いつもと違うというだけで、うつむいてしまう。
このままの関係を維持した方が君にとっては気が楽だろう。
けれども僕が、君に幸せにしたいと思ってしまった。
その変化が君にとっては、苦痛になるとしても。
君は透明な水に夢中だった。
買い替えたばかりのスマホで、何枚も写真を撮る。
すでに飽きていた僕はそんな君の姿をぼんやりと眺めていた。
澄んだ水音に耳を傾けて、どこでも見られる水の流れに、欠伸を噛み殺した。
君はまだ透明な水に夢中なようだ。
早く次の見どころに行きたい、と僕は思った。
とうとう眼鏡が必要なほど、視力が落ちた。
渋々と眼鏡を購入したら、視界がクリアになった。
今まで見ていたものは何だったのか、そう思えるほどの変化だった。
眼鏡をかけて、夏薔薇を見る。
花弁がぼんやりとせずに、はっきりと数を数えることができた。
もっと早く購入するすればよかった。
学校の文化祭の後夜祭で踊るダンスの練習が始まった。
あなたは優しく、私の腕に触れる。
まるで壊れものに触るみたいに、慎重に手に触れる。
普段から少々お転婆な私相手にがっちりと相手をするのに、意外な一面を見ているようだった。
いつもと違ったシチュエーションに照れているのだろうか。
『潮味の18時』

毎日、海岸沿いにやってくる。
海水浴客もいない浜辺で、少しだけ傾いた太陽を見つめる。
潮味の18時だ。
波の音は心を落ち着けて、ほんの少し早い夕暮れの空を見つめる。
海と同じ味の涙がすとんと零れ落ちた。
アスファルトではなく、浜辺に落ちて跡になった。
それすら愛しい。
『恋は日々。』

毎晩書く日記帳を開く。
そうしなければ忙しい日々の中、嬉しかったこと、幸せだったことを忘れてしまうから。
霞んでしまうから、私は日記をつけている。
それにもう一つ大きくなっていく感情も記している。
恋は日々。私の中ですくすくと育っていっている。
出会った時よりも。
『バーター恋愛』

交換条件の恋愛をした。
そうでなくては恋愛は不公平だから。
好きになった方が負け、なんて言葉でくくられる。
そんな恋愛はしたくない。
私が差し出した物と同じだけあなたからも差し出してほしい。
バーター恋愛はうまくいっているようで、今までの中でも大切にされている。
もう一度、あの夏で出会いましょう。
蝉時雨の中、ラムネ瓶を飲みながら、汗する夏で再会しましょう。
きっと私とあなた懐かしい気持ちになるでしょう。
もう一度だけ、あの夏をやり直しましょう。
最低だった別れまで時間を巻き戻し、喜びだけがあふれていた夏まで、向日葵のように戻しましょう。
生まれ育った地域にこれといった不満はない。一点を除いては。
それは電車に揺られないと海も山も見られない関東平野だということ。
そのせいか海を見るとテンションが上がる。
旅行先でも海を見ると、砂浜まで近寄りたくなる。
どこまでも続く水平線に落ちていく夕陽なんて最高のロケーションだ。
私は何もない大地に転んだ。
膝から転んだから、大きな怪我はなかったけれども、肌がすり向けた。
消毒しなければと、立ちあがる。
こんなおっちょこちょいをする大人は世界広しといえども、限られてくるのでは。
恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。
誰にも見られない朝早い時間で良かったと思う。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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