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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『かつては友情と呼んだ恋』

「ずっと友だちでいてくれる?」転校してきたばかりの君は言った。
僕の心がチクリと痛んだけれど、笑顔を浮かべた。
「もちろん」と僕は頷いた。
歳月は確かに流れ去る。
僕たちは手を繋いで、街を歩く。
かつては友情と呼んだ恋は、見事に丸く結実したのだった。
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「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「ずっと君と一緒だよ」、と。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。」

------

僕は、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をついた。
いったい何が『大丈夫』なのだろうか。
そんな曖昧な嘘は最後にふさわしくない。
それは現実逃避のための嘘だった。
「ずっと君と一緒だよ」とできもしない嘘を甘く、君にささやく。
嘘を貫いてみせる。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。
ふれあうだけの口づけでもドキドキするのに、深い口づけは心臓が壊れたかのように早鐘を打つ。
あなたから与えられる口移しの愛は、大きすぎて上手に受け止められない。
甘やかな快楽に身も心も溺れていきそうだ。
真っ直ぐに立っていられなくなって、あなたのシャツを私はぎゅっと握りしめる。
最初は小さな羨望だった。
それがいつの間にか、膨れ上がって対抗心になった。
敵うはずもないと分かっていても、少女は今度こそはと願う。
白金色の頭髪の少年が万年一位の座から転げ落ちたら、どんな表情をするのだろうか。
少女はそれを見てみたいと、意地悪な感情も入り混じることになった。
「両手を貸して」と君が言った。
僕は首を傾げながら、両手を差し出した。
君は堂々と、僕の両手のひらを指先でなぞる。
「ふふ」と君は笑った。
そんなことを堂々とできる君に嫉妬した。
両手のひらに一文字ずつ書かれた言葉は『ス』『キ』。
僕はお守り代わりに、優しく両手のひらを握り締めた。
『となりのブランコ』

いつだって君は、となりのブランコにいた。
二人並んでブランコをこぐのは、いつの間にかお約束になっていた。
君はいつもつまらなそうな顔をして、ブランコをこいでいた。
そんな君になにも言えずに、僕は沈みゆく夕陽に向かってブランコをこいでいた。
まだ幼かった頃。
『君の「サヨウナラ」が
 せめて冬をあたためますように。』

君と別れたのは、まだ暑い夏だった。
向日葵畑の向こうから、君が手を振ってくれた。
だから、僕には衝撃的だった。
君の中では決まっていたのだろう。
だからこその夏の情景。
君の「サヨウナラ」がせめて冬をあたためますように。
『不純愛心配性』

いつでも君のことを心配している。
色んなことに飛び出して、僕の元に傷ついて帰ってくる。
そんな君を止めたいと何度、思ったのだろうか。
それでも僕は君に純愛と言えるような愛を持っていないから、言える立場ではない。
この不純愛心配性はどうにかならないのか、と思う。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

------

僕は、ひどくためらいながら最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
暗い瞳で宙を見つめる君の手に、僕は手を重ねる。
「世界は希望で溢れている」と、絶望の中にいる君に言った。
君は何も口にしなかった。
泣き疲れて乾いた瞳が僕を見つめる。
嘘だと言えたら、どんなにいいだろうか。
君と僕の物語をもう一度、紐解こうか。
想い出という名の過去になってしまった物語にも、懐かしいことがあるだろう。
新たな発見があるだろう。
だから、物語をもう一度、始めよう。
きっと君と僕は、微笑み交わすことだろう。
不思議と、そんな自信があった。
僕は、心の中のアルバムを取り出す。
君が病院の待合室で震えるから、僕は無理矢理、君の指先を軽く握る。
君はそろそろと視線を上げて、僕を見つめる。
僕は小さな声で「大丈夫だよ」と君に告げる。
指先から伝わってくる震えは収まらない。
どうしたものかと、ひんやりとした指先を握ったまま、僕は考える。
君が安堵する方法を探す。
連れてこられた屋敷には、アヴェ・マリアが流れていそうな雰囲気だった。
「椅子に座ってて待っていて」と屋敷の主であり、助けてくれた人が言った。
ほどなくマグカップを持ってきてくれた。
蜂蜜入りの生姜湯。
おばあちゃんが飲ましてくれたものと同じ。
とても懐かしくて涙が零れる。
『中古家族』

僕は独りで住むには大きすぎる部屋を借りた。
そこに中古のアンドロイドを住まわせた。
これでもう、僕は独りぼっちではない。
中古家族は案外、居心地がいい。
よくできた人形で遊んでいることを忘れてしまう時がある。
もともと家族との縁が薄かった僕には、これで充分だった。
『せめて娘たちに魔法をたずさえて』

育てきた娘たちも巣立ちの時期に来た。
もうついていくことはできない。
怖い夢を見た、と泣く娘に添い寝をすることもできない。
今日は頑張ったの、と笑う娘に大好物のシチューを作ることもできない。
せめて娘たちに魔法をたずさえて、巣立ってほしい。
『訪れちまった悲しみに』

訪れちまった悲しみに、今日も冷たい雨が降る。
傘なんて持ち合わせていなかったから、悲しみと共に濡れて帰る。
それだけだ。誰の上にも訪れないでほしい悲しみを、僕が引き受ける。
どうか君には幸せが訪れてほしい、と願いながら、訪れちまった雨に濡れられる。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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