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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「冷房利きすぎて、ここの店寒くない?」と君が言った。
暑がりな僕にはちょうどいいぐらいの室温だった。
僕は仕方なく、君の指を握り締める。
冷たいと感じるほど、君の手は冷えきっていた。
これなら確かに寒いだろう。
僕の温もりを分けあうように、君の指先を握ったままでいた。
そんな夏の日。
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『泣き虫駆除してます』

あなたは電信柱に貼られた紙を見て「お前にちょうど良さそうだな」と言った。
張り紙には『泣き虫駆除してます』と大きく書かれていて、電話番号と住所が載っていた。
「そんなに泣き虫じゃないもん」と私は訴えた。
あなたは私の頭を撫でる。
「どうだろうな」と笑う。
『いよいよ清く』

青空を見上げていたら、眩しい太陽が燦々と日差しを降ってきた。
アスファルトには僕の黒い影が映る。
汗がじんわりと滲んで、伝っていく。
蝉時雨が耳の中で輪唱する。
どこにでもある季節の移り変わりだ。
それを僕は今、体験している。
青空はいよいよ清く、色を変えていく。
『せめてあの夏の弔いを』

息絶えた夏にお別れの言葉をしていないことに気がついた。
向日葵が首を垂れれるように、頭を垂れた。
せめてあの夏の弔いを済ませてしまいたい。
それは青春と言う名の通り過ぎてしまった季節の一枚だから。
終わることのない、と信じていた無邪気さに今、弔いを。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
だってもう、仕方がないだろう?」

------

僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
君が迷子になってしまったような表情を浮かべていたから。
それは自分が傷つく嘘だった。
最後だと思って言った。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と告げると君と視線があった。
縋りつくような目の色に心が痛む。
だってもう、仕方がないだろう?
少女が持っていたプリントをクラスメイトが掠め取った。
「面白いことは何も書いていないよ」と少女は言った。
「それを決めるのは俺だから」とクラスメイトの少年は言う。
「今年は体育祭があるのか。楽しみだな」と少年は笑った。
「プリント返して、コピーしなきゃいけないから」少女は言った。
君と出会って一年の記念日は、遊園地デートになった。
「次、あれに乗らない?」と僕はフリーフォールを指をさす。
すると君はそっと、空いている片手の指にしがみつく。
ジェットコースターは大丈夫な君だけど、フリーフォールはダメなのか。
君のことをまた一つ、知ることができた。
僕は笑った。
『魔法使われ屋』

鬱蒼と茂った森の中にポツリと立った家があった。
魔法が使えると噂の住人の家だった。
私は恋を叶えてほしくて、森へと入った。
薄暗い景色に、鳴く鳥の音にビックリしながら歩を進める。
小さな家のドアを叩く。
ドアが開いて青年が出てきた。
「ようこそ、魔法使われ屋へ」
『未来のあらすじ』

それは推理小説を最後から読むようなものだった。
決まりきったレールの上に乗って、今日のような顔をした明日に会いに行くようなものだった。
日々はくりかえしにすぎない。
そんな未来のあらすじに、ドラマが生まれた。
どうやら面白いことが起きる、そんな予感がした。
『ラストフューチャー』

これが最後の未来旅行だ。
馴染みになってしまった雑貨店で、未来へ飛んだ証を求めて入る。
私は夢を見続けているのだろうか。
雑貨は、どれもこれも待ちぼうけ顔で待っている。
その中から一つキーホルダーを手にした。
これなら過去に持ち帰っても違和感がないだろう。
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「君が幸せなら、幸せだよ」、と。
胸の痛みは消えやしないな。」

------

僕は、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
これ以上、僕にどうしろというのだろうか。
「君が幸せなら、幸せだよ」と寂しい気持ちを押し隠して笑顔で嘘をついた。
「ありがとう」純白のドレスを花のように纏った君は笑う。
胸の痛みは消えやしないな。
君との帰り道。
「夕焼けが綺麗だよ」と言って、僕は君の手にふれた。
本当は手を繋ぎたかったのだけれど、そこまでの勇気はなかった。
二人は沈んでいく太陽を見つめる。
君が僕の手を握った。
「頬が赤いのも気のせいってことにしてあげる」と君は笑顔を見せた。
恥ずかしくなって、僕は俯いた。
奥手の君は勇気を出したのだろう。
きっと勇気を総動員したのに違いない。
君が頬を染めて恥ずかしそうに、僕の指先を指先でなぞる。
ひんやりとした君の指先をふれていく感触が、僕はくすぐったけれども笑わなかったよ。
その代わり、君の指先を包みこむように握りしめた。
気持ちが伝わったかな。
『私が恋したって噂』

噂が広がっているのをひしひしと感じていた。
これ以上、視線を感じるのは御免だった。
誰が噂を広げたんだろう。
その元凶を捕まえたい。
私が恋したって噂は似合わない。
私は、おひとり様で充分なのだ。
恋い慕うなんて空想の中だけでいい。
リアルでの恋愛は、いらない。
『青春なんて名前の計画』

青春なんて名前の計画は、破綻するのが決まっている。
どうやっても上手くいかない計画に、僕たちは『青春』という名前を付けたんだ。
それは夏の雲のように大きく発達して、ゲリラのように雨を降らす。
僕たちは空に広がる青のように、その場所に夢を描いたんだ。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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