忍者ブログ
ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『青空の手触り』

極上のシルクに触れるような青空の手触りに、思わず微笑みが浮かぶ。
手を伸ばして、何度も何度もくりかえし青空を触る。
まるで子供に戻ったような仕草だったけれども、それが楽しかった。
これをとっておけないのが、もったいないと感じる。
そんな青空の手触りは儚かった。
PR
『現状維持のコミュニティ』

世界は逼迫していた。
それなのに首長は『現状維持をくりかえしお願い申し上げます』と言うばかりだ。
我慢ができない若者たちから音をあげていった。
現状維持のコミュニティは、いつまで持つのだろうか。
明日がくることが恐ろしい。
誰かが死んでいそうだった。
『愛されとけ世界』

「こんな通知がきたんだけど」と君は封筒を取り出した。
君は緊張しているのか、指先が震えていた。封筒の中から、紙を取り出すのにずいぶんと時間がかかった。
『貴方様は世界に愛される資格を得ました』と紙には書かれていた。
「とりあえず愛されとけ世界に」と告げた。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

------

僕は、ひどくためらいながら最後の嘘をついた。
嘘をついてもいいのか、と迷いながら口に乗せた。
それは自分が楽になるための嘘だった。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と寂しく思いながら言った。
君が嘘だと見破ってくれたらいいのに。
そんな自分勝手なことを僕は思いながら、君に微笑んだ。
政略的に結ばれた白い婚姻のはずだった。
花嫁はまだ幼く、子をなすには早すぎる。
同じ寝台で眠るだけの約束だった。
その代わり、花嫁以外の寵妃を持つことが認められていた。
けれども花婿は寵妃を持つことなく、歳月が経っていった。
ある日、花婿は花嫁を組み敷いた。
破られた不可侵条約だ。
生命はいつかついえる。
永遠なんてないんだ。
生まれた時から決まっていたおしまい。
そのことを君に説くけれども、君には通じない。
「でも、いつか生まれ変わるのでしょ?」と君は微笑む。
堂々巡りをしてしまう。
輪廻転生を信じるのは、悪くないかもしれないけれど。
記憶を維持できないだろう。
「罰ゲームだよ」と君は言った。
「そんなことした覚えないんだけど」僕は『無実だ』と告げる。
君は満面の笑みを浮かべながら、手のひらに触れる。
君の手はひんやりとしていて、暑さを感じさせなかった。
「私を寂しがらせた罰ゲーム」君は僕の瞳を見て言った。
こんな罰ゲームなら大歓迎だった。
『忘れられないモノ市』

「ここは忘れられないモノ市。何をお探しですか?」シルクハットを脱いで、モノクルをした紳士が言った。
「さあ、何かしら?」私は首を傾げた。
忘れられないモノなんてあっただろうか。
「ここは忘れられないモノを求めて集う市。お嬢さん、あなたにもあるはずだ」
『ケーキケーキケーキ』

「ケーキケーキケーキ」と君は子どもっぽっくテーブルを叩く。
その様子が可愛らしく見えたから、思わず笑みを零してしまった。
星に願いをかけるように、三回くりかえすさまは、祈りにも似ている。
「はいはい。もうすぐですよ」僕は冷蔵庫からケーキを取り出した。
『月面銀詩』

月面が銀色に輝いている、そんな詩があったはずと記憶の中から探り出す。
太陽が金色だから、月は銀色なのだろうか。
新月の今、月面は見られない。
星たちが煌めいていて、月が不在でも寂しくはなかった。
それでも夜になれば月の存在を探して仰ぐ。
銀に輝く月面を見たいと願う。
「iotuは、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「今とても幸せだよ」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

------

僕は、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
だからこそ、明るく言ったのかもしれない。
湿っぽいのは最後には似合わない。
「今とても幸せだよ」と僕は告げた。
次の瞬間、不幸せが訪れることを知っていても。
こんなことしか言えないなんて、僕は俯いた。
掃除当番に当たったから、箒でごみを集めていた。
当番の相方は、あまりやる気がないようだ。
先ほどから椅子に座って、私を眺めている。
「好きだよ」とクラスメイトが言った。
箒で床を掃いていた私の手が止まる。
クラスメイトを見やる。
「一回、言ってみたかったんだ」少年は夏のように笑った。
僕は夢を見て飛び起きた。
枕元の目覚まし時計を確認すると、まだ起きるのには早い時間だった。
カチコチと規則正しく、目覚まし時計は時を刻む。
僕の横で君の寝息が聞こえてきた。
夢は夜闇に溶けていって、どんな夢を見ていたのか忘れ始めていた。
しばしの眠りに落ちていくように、目を瞑った。
炎天下の中、買い出しに出かけた。
体温と変わらない外気温に眩暈を覚える。
どこかに涼める木陰を探すが、そんなものがない街だった。
すぐ側を通っていった車がアスファルトを切り裂く。
余計に暑さを感じた。
早く買い物をすませて、冷房の利いた我が家に帰りたい、と流れる汗を拭いながら思う。
真夜中のファミレスで友だちと話しこんでいた。
友だちが受けた仕打ちを聞いて、耳を疑った。
私は泣きそうになりながら、自分の両手をぎゅっと握る。
友だちは「もう通り過ぎたことだからさ」と朗らかに笑う。
その表情が痛々しくて、余計に涙を誘う。
駄目だ、目頭が熱くなってきた。
涙が零れる。
PREV ← HOME → NEXT
プロフィール
HN:
iotu(そら)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
フリーエリア
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH