『空を青くした言い訳』
星たちはずっと輝いていられる夜空を望んでいた。
けれども、神様は東の空から太陽を昇らせた。
隠し事、秘密の語り事、それを溶かす。
わずかな時間で、空はすっかり青くなった。
星たちは溶けていった。
神様は空を青くした言い訳に、人たちを目覚めさせるためと言う。
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「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」
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僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
まるで分かっているという風に、君に対して嘘をついた。
それは本音とは真逆の嘘だった。
「君を、信じきることができなくてごめん」と僕は告げた。
君を疑ったことは一度もない。
君の心が軽くなるのなら、僕は嘘をつく。
嘘だと言えたら、どんなに。
重い腰を上げて、やっと恋文を書く気になった。
結果は分かっていても、自分の気持ちを知っていてほしくなったのだ。
迷惑だろうか、そんな思いが過る。
自分勝手だろうか、そんな考えに支配される。
用意した便箋は白いままだ。
全部、言い訳だ。
振られると分かっているから、恋文を出せないのだ。
雨の夜、古めかしい提灯を持った人物が近づいてきた。
心細く思っていたから、明かりは助かった。
人物は一人ではなく、複数の集団だった。
どこへ行くのだろうか、そんなことを持っていると、すれ違った。
和傘の下の人物はみな狐の面をつけていた。
向かう先は神社だ。
それに気がついて震える。
僕はすれ違う女の子に、心の中で得点をつけていた。
すると隣を歩いていた恋人が立ち止まる。
気になるショップでもあったのかな。
「両手、貸して」と恋人が言った。
疑問を持ちながら両手を差し出す。
恋人は満面の笑みを浮かべながら、僕の両手を折れんばかりに握る。
嫉妬でもしたのだろうか。
『君にナミダを、
私にアイスクリームを。』
幾度目の失恋だろうか。
私はアイスクリームを食べながら、ナミダを流す君を眺める。
どんな言葉をかけても、終わってしまったものは仕方がない。
その愚痴を聞きながら、アイスクリームを食べる季節もお終いだろうか。
私は最後の一口を食む。
『騙られたユートピアへの車列』
今日も道は混んでいる。
長い車列に運転手は苛々しながら、ユートピアへの切符を待っている。
「お母さん、ユートピアってなぁあに?」後部座席に座った幼子が問う。
「理想郷よ」と助手席に座った女性が答える。
騙られたユートピアへの車列は、途切れない。
『君の嘘を守ってあげたい』
君は嘘つきだ。
泣きそうな顔をして『大丈夫だよ』と言う。
華奢な肩に乗ったものは重いだろう。
君ひとりでは背負ってはいけないだろう。
分かっていながら、僕は君の『大丈夫』にうなずく。
できることなら、君の嘘を守ってあげたい。
君の笑顔を見られるように。
「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」
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僕は、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の噓をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
どこにも『大丈夫』はなかった。
それを分かりつつ、君に嘘をついた。
「いなくなったりなんてしないよ」と微笑みながら、幼い君の頭を撫でると笑顔が弾ける。
嘘だと見破ってくれたらいいのにと思う。
「君を愛しているから、ここで別れよう」と僕は言った。
すると君は微笑みながら「嘘つき」と言った。
駄々をこねられると思ったが、すんなり別れられそうだった。
そこまで清々しいと未練が湧き始める。
「いつから嘘だってわかってた?」と僕は尋ねる。
ささやくような声で「最初から」と言った。
一種のゲームみたいなものだった。
太陽のように輝く少女を誰が手にすることができるか。
恋に堕とした方が勝ち。そこには恋情も愛情もなかった。
ゲームの勝者は、仲間から賞賛を受ける。
少年は戦利品を見返してみると、そこには華やかな輝きはなかった。
恋に堕ちた太陽は真昼の月のようだった。
心が寒さを感じて傷つく。
いったいどんな罪があるというのだろうか。
美しく生まれてきた、それだけで献上品のように扱われる。
奴隷と一緒だった。
いや、奴隷の方が仲間がいる分、マシかもしれない。
味方になってくれる人はどこにもいない。
自分の肩を自分で抱く。
心を少しでもあたためるため。
世界的な感染症の流行のため、修学旅行は中止になった。
それを伝えなければならない教師も、辛い気持ちだった。
学生はおとなしく従っている。
三年間の集大成であり、楽しみである修学旅行まで取り上げるのか、と思うと時期が恨めしい。
上目遣いで、不甲斐ない自分の手のひらを握り締める。
『僕は夏を終わり』
僕は夏を終わりにした。
もう暑苦しいだけの時間をおしまいにした。
君と会うのもこれが最後だった。
そう決めたのだ。
向日葵も項垂れて、種がポロポロと零れ落ちる。
それを拾いながら、思い出を一つずつ欠片を合わせていく。
君の代わりに、僕は夏を見送りサヨナラを言う。
『僕等の最後の逃走』
卒業式が間近に迫っていた。
僕等は夢を叶えるためにバラバラの道を歩んでいくことになる。
もう『僕等』ではなくなる。
だから僕等の最後の逃走先は、二人で作った秘密基地になった。
そこで僕等は手紙を交わす。
夢が叶ったら見るという約束をしながら、白い封筒を渡す。