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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『わたしの人魚』

海に来ると、帰ってきたという気持ちになる。
それを少女が告げると青年は目を細めた。
眩しいものでも見るような、憧れるものを見るような顔で、青年は少女を見つめた。
「いつまでもわたしという水槽で泳いでいてくれ。わたしの人魚姫」と甘く囁く。
少女はクスクスと笑う。
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「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

------

僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
こんな嘘で君に安寧を与えられるというのなら、いくらでも言える。
「君にもらったものは全部返す」と僕が言うと、君の瞳が揺れる。
思い出までは返せない。
僕はそれを頼りにする。
頼むよ、ごまかされてください。
勝気に見えて弱いところのある少女だった。
いつもは元気に走り回って、ハキハキとものを言う。
だから、少年もケンカをするつもりがなかったのに、口論になることしばしば。
そんな少女が今日は俯いている。
柄にもないけれども心配になった。
本当は少女の弱さを包みこんであげたいと思っていた。
「私たち家族になるのよね」とおっとりと王女が言った。
「そうですよ」家臣の青年は頷いた。
ほっそりとした手を取って、青年は唇を寄せた。
王女は小さく悲鳴を上げた。
隣室に控えていたのだろう。侍女が部屋に入ってきた。
青年は狼狽していると、侍女が睨みつける。
「何があったのですか?」
君が両手を差し出した。
僕は嫌々ながら、君の両手を触れ合わせる。
僕と君の間に大きな輪っかができた。
それが切なくて、悲しくて、ほろ苦くて、僕はすぐさま手を離した。
それなのに君は笑顔のまま、まるでいつも通りに「サヨナラ」と言った。
もう二度と会えないかもしれない別れの場面なのに。
『運命の赤い糸くず』

目に映るとどうしても拾い上げてしまう。
そして、それが途中で切れていることに落胆する。
そんな糸くずが片手で握れないほど溜まった頃だろうか。
同じようなことをしている青年に出会った。
お互い気まずい表情で「こんにちは」と挨拶をした。
運命の赤い糸が繋がった。
『どうぞ、5分だけ泣け。』

「泣いてもいいですか?」と少女は瞳を潤ませて言った。
それもそのはずだ。
目の前で両親から裏切られて、男の元へと嫁ぐことが決まったのだから。
「どうぞ、5分だけ泣け。それ以上は許さない。俺への侮辱ととる」と男は言い、腕時計を見やる。
少女は泣きだした。
『嘘を、叫んだよ。』

君が真実を絶叫したから、僕は嘘を、叫んだよ。
『愛している』って、心にもないことを叫んだんだよ。
それに君は嬉しそうに微笑んだから、僕の心はほんのばかり痛んだ。
だけど作り笑いを浮かべて、君の手を取った。
君は幸せそうに握り返してくれた。
僕は口をつぐんだ。
「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
もう、覚悟は決めたんだ。」

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僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それは本音と真逆の嘘だった。
「君を、信じきることができなくてごめん」と僕は謝った。
今でも君がくれた数々の言葉を信じている。
君がくれた想いの数々を信じている。
でも、もう別れだ。
嘘をつくことで心の整理をする。
もう、覚悟は決めたんだ。
『大好き』と思う瞬間がある。
それと同じぐらい『大嫌い』と思う瞬間がある。
自分でも情緒不安定だと思うけれども仕方がない。
好きと嫌いが裏表なのだ。
簡単に『大好き』になるし、単純に『大嫌い』になる。
紙の裏表のように、ひらりと渡り歩く感情は、あなただから。
他の人には感じないよ。
一羽の小鳥は蒼穹の果てになにがあるのか、知りたいと思った。
けれどもその小さな翼では、そこへたどりつけないことも分かっていた。
渡り鳥たちのお喋りを聞いていると、憧れは増すばかりだった。
勇気を振り絞って小鳥は飛びあがった。
ようやく電線に乗った。
空が近くなったような気がした。
「泡になってしまった人魚姫のように恋を貫きたい」と幼い少女が言った。
読み聞かせをしていた青年は幼い少女の頭を撫でる。
「きっと幸せだったに違いありません」幼い少女は悔しさをにじませて言った。
「それなら眠る前の読み聞かせは必要ないな」と青年は苦笑した。
幼い少女は目を瞬かせる。
夕方、君と一緒にたどった帰り道。
空が一瞬にして真っ赤に染まった。
ピンクモーメントだ。
それに気を取られて、僕は立ち止まった。
君の足音も止まって、沈黙が漂う。
いつまでそうしていただろうか。
空は夕闇に沈んだ。
君は上目遣いで、僕の両手のひらを指先でつつく。
僕は包みこむように握る。
『荒ぶる新国と不用意な隣国』

荒ぶる新国と不用意な隣国、どちらと手を結べば、この小さな国を守ることができるだろう。
どっちもどっちの条件に、王様以下家臣も困り気味。
どうして、この国は小さく弱いのだろう。
虎視眈々と国盗り合戦する新国と隣国。
小さな国は生き残れるのだろうか。
『声、ただ凍え。』

鬱蒼とした森の一軒家に、沈黙の魔女が住んでいた。
美しい紅い唇からは言の葉はもれない。
魔女は身振り手振りや文字で依頼人と会話した。
ある日、そんな魔女の声を聞きたいと、青年はドアをノックした。
魔女が喜びそうな薬草を籠いっぱい持って。
けれども声、ただ凍え。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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