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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『机上の空論すら
 書き終えていないのに
 戦争。』

城へと国民が詰め寄った同刻、軍師は机上の空論を書き続けていた。
我が国が勝つという甘やかな夢を綴っていた。
このままでは暴動が悪化すると解っていながら、男は書き続けていた。
「書き終わらないのか」国王が言った。
戦争が始まる。
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『箱詰めの民衆』

「あなたは選ばれた人だ」と暗がりから出てきた男が言う。
僕は驚いて一歩下がった。
「これはささやかなるプレゼントです」と男は小箱を取り出して、僕に見せる。
外灯のまばらの道だったので良く見えなかったが人形が入っているようだった。
「箱詰めの民衆の王に選ばれた」
親が決めた婚約者から、ドレスの贈り物が届いた。
真っ赤なドレスは夜会でも映えるだろう。
胸元が大きく開いていて、煽情的だった。
「私に似合うかしら?」不安になり、ドレスを運んできた侍女に零す。
「もちろんですわ。殿下のお見立てなのですから」侍女は笑顔で言った。
それでも心は揺れる。
僕は、落ちているものを拾う。
自分から生みだせなかったから、仕方なく。
他人が捨てていくものを拾って、我慢していた。
ある日、傷だらけの愛を拾う。
さすがに持ち主を探した。
自分だけのものにしてはいけない気がしたから。
心に布を巻いた女性と出会う。
愛を差し出した。
独りが二人になった。
「わー、海が見える」車窓を見ていた少女が歓声を上げる。
海のある県に来たのだから当然な眺めだ。
むしろ、浜辺に行くのだから、海が見えなかったら問題だ。
海が見たい、と駄々をこねる少女と共に電車に揺らること数時間。
もうすぐ目的地だ。
少女は輝く笑顔で軽々しく、手のひらに指を絡める。
『プロポーズは「家に帰ろう」』

同居生活を初めた頃は、何もかもが新鮮だった。
彼の知らない一面を見ることができて、私も少しずつだけど羽を伸ばすようになった。
同居が同棲になったのは私の誕生日からだった。
ある日、些細な口論をして飛び出した。
彼は「俺たちの家に帰ろう」と言った。
『占いなんて話半分、もう半分。』

雑誌の巻末に書いてある星座占い。
ついつい熱心に読んでしまう。
それを見ていた双子の姉が「占いなんて話半分、もう半分。叶わないと思った方がいいと思うけど」言った。
一卵性双生児として生まれてきたのに、こうも性格が違うのだからその通りだろう。
『未遂告白』

幼馴染に好きな人ができたらしい。
それはそれでめでたいことだ。
ただ相手が悪かった。
歳上の優しい男性には、すでに想い人がいた。
ただ奥手な男性は告白していなかった。
だから、幼馴染はチャンスだと思ったのだろう。
何度も練習した告白台詞を言う前に、恋は終わりを告げた。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

------

僕は、目をそらしながら最後の嘘をついた。
目を合わせたら、嘘だとバレてしまうような気がしたからだ。
これから、どうしようもない嘘をつく。
それは自分の幸せのための嘘だった。
君のためではない。
「まだ一人で生きていける」と呟くように言った。
嘘だと言えたら、君はどんなに喜ぶだろう。
私は、生まれて初めてお付き合いというものをすることになった。
告白してきた男子に「好きかどうかわからないから」と断った。
それが一度目。
何かある度にその男子は告白してきた。
私は根負けして付き合うことにした。
男性恐怖症の気がある私は、男子が近すぎると怖い、離れていても嫌になる。
花火大会は無観客で行われることになった。
中止されるよりマシだったが、夏の思い出が一つ少なくなった。
打ち上げ花火がよく見える坂道で、君と集合した。
そして、僕はびっくりする。
浴衣姿の君はいつもと違って、熱帯夜を泳ぐ金魚のようだった。
柔らかなオーガンジーの帯がはっきりと見えた。
「本日のラッキーアイテムは黄緑色の靴下」とテレビのキャスターが言ったからではないが、黄緑色の靴下を履いた。
占いはあまり信じない方だ。
単に選ぶのが面倒だったから、理由は深くなくそれだけだ。
笑顔で彼の元に向かう。
彼は深刻な顔をして「別れてほしい」と言った。
心の中で慟哭する。
夏も終わるということで肝試しをすることになった。
近所の墓地まで、懐中電灯一つで一周してくる。
そんな他愛のない遊びだった。
くじを作り、無作為に組み合わせを決めたのに、幼馴染と一緒になった。
二人きりになると、幼馴染は嬉しそうに、両手のひらを指先でつつく。
状況を楽しんでいる。
『風は今日君のため』

君が出立する日は、強い風が吹く日だった。
それに背中を押されるように、君は旅立つのだろう。
気持ちの良い風が吹いていた。
今まで無風だったのに、風は今日君のために吹き出したようだった。
きっと涙を流す代わりに、風が代弁してくれたのだろう。
『サヨウナラ』と。
『青春をムリしていた』

何でも、みんなと同じじゃなければいけないような気がしていた。
スカートの丈も、カバンにつけるマスコットも、スマホの機種も、同じじゃないと仲間外れにされるような気持ちがしていた。
だから、好きでもないのに告白されたら付き合っていた。
青春をムリしていた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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