忍者ブログ
ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

無意識の仕草だったのだろう。
男はズボンのポケットを探り、不思議そうな顔をした。
手のひらには飴玉があった。
それに苦笑した。
察するについ先日まで、煙草を吸っていたのだろう。
男は口寂しそうに飴玉を口に頬りこんだ。
それから気まずそうな顔をして、こちらを見た。
禁煙を始めて日が浅い。
PR
友だちが映画のDVDを持って遊びに来た。
友だちご贔屓のアイドルが主演を張った映画だということをの僕ですら知っていた。
早速、上映会になった。
どうやら恋愛ものだったらしい。
主演のアイドルが相手役に口唇を許した。
友だちは奇声を上げて狂う。
素早くDVDを取り出して、真っ二つに割った。
春は出会いの季節であり、別れの季節でもあった。
君は泣き顔で、自分の両手のひらを握る。
まるで我慢をするように、いや、この別れに未練の言葉を吐かないように我慢していた。
僕は少しだけ笑って、君の頭を撫でる。
すると君は決壊したダムのように、今まで以上に涙を流した。
僕は息を飲んだ。
『結末ありきの恋愛小説』

幼い頃から一緒にいる公爵令嬢を娶ることになるだろう。
それが王族に産まれた使命だからだ。
公爵令嬢は控え目な性格だが、頭の回転は悪くない。
妥協するのも悪くない相手だった。
だけれども、結末ありきの恋愛小説のようで少し退屈だった。
運命の恋をしてみたい。
『恋にウソを混ぜたらいけん!』

バーガーショップで他愛のないお喋り。
学校では話しづらいことでも、放課後のバーガーショップでは気安く話せた。
私は親友に興味を持っていなかった相手から告白されたことを話す。
そろそろ年齢=彼氏のいない歴から卒業したい。
そう正直に話したら怒られた。
『どこかにいってしまった蝉たち』

うるさいぐらいの蝉時雨もぱたりと止んだ。
アイスを食べなくなるように、季節は大きく一歩を踏みこんだ。
縁側に立つと草むらから鈴虫たちの鳴き声が聞こえる。
僕はどこかにいってしまった蝉たちに弔いを捧げる。
もう戻っては来ない夏へと思いを馳せる。
「iotuは、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「永遠を信じている」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

------

僕は、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をついた。
君の耳元に二人だけの秘密にするように。
それは現実逃避のための嘘だった。
そこには、本当のことなどひとかけらもなかった。
それでも僕には必要だった。
「永遠を信じている」と永久の愛を誓った。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
君は涙ながら「なんでこの手を離してくれないの」と言った。
「離したら、僕の見てないところへ行くだろう?」僕は最後の一言を飲みこんで言った。
君は自分の人生に終止を打とうとしていた。
それが分かるだけ、僕は君の隣で見てきた。
「あなたには関係ないでしょ」と僕の手から離れようとする。
夕焼けが早くなったと感じられた。
君と並んで歩くと、君の頬まで染める。
どこか哀しい季節になった。
昨日まで夏だったのに、景色が全く違って見えた。
そんなセンチメンタルリズムを感じていると、「寄り道して帰らない?」と君は言った。
どうやら君も僕と同じ気持ちを感じていてくれたようだ。
君はこれから起きることに怯えていた。
二人で過ごす初めての夜。
ひどく緊張をしていたのだろう。
君は泣きそうになりながら、僕の指先に指を絡める。
僕にまで震えが伝わってきた。
「大丈夫だよ」と僕は慰めにならないことを言う。
潤んだ瞳が煽情的に僕には映った。
できるだけ優しく、と思った。
『二足歩行の天才』

原初の生き物は足すらない。
やがて泳ぐためにエラを持った。
そして陸に上がるために手と足を手に入れた。
生きていくのには、それで充分だったはずだ。
けれども人類は二足歩行を選ぶことになった。
そのため脳は肥大化し、文明を築くことになる。
まさに二足歩行の天才だ。
『手紙がおとしていったもの』

郵便受けを覗くのが癖になった。
顔も知らない相手と文通をしている。
他人にそう言うと馬鹿にされるか、笑われるか、古風だねと曖昧な顔をされる。
だから、私は言わなくなった。
郵便受けに入っていた手紙に心が踊る。
見知らぬ相手がおとしていったものは恋心。
『急に「愛してる」を言ってくれ』

どっちが酒を呑めるか、賭けないか?と男は言った。
何を賭けるの?女は笑う。
賭ける前から勝敗が決まっている、とでも言うように。
男は急に「愛してる」を言ってくれ。どのタイミングでもかまわない。俺が驚くように。
君が勝ったら君の望みを叶えよう。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

------

僕は、目をそらしながら最後の嘘をついた。
嘘だと悟られるわけにいかなかったから、君の目を見ることができなかった。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と僕は言った。
僕の傍にいて良いことなんて一つもないだろう。
お互いが駄目になる。
本音は仕舞い込んだまま。
気がつけば落とし穴にはまっている。
推しができるということはそういうことだと思っていた。
道のそこら中に落とし穴は用意されている。
『落とし穴にご注意を』という看板もむなしく、新しい落とし穴にはまった。
どうやっても抜け出せそうにない。
空の高さを見上げながら、新しい穴の中で座る。
PREV ← HOME → NEXT
プロフィール
HN:
iotu(そら)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
フリーエリア
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH