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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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今日も女性は届くことのないメールを出した。
メールアドレスは女性が少女だった頃と同じものだ。
毎日、あったことをメールにしたためて、送信をタップする。
そういえば最初はガラケーだったな、と女性は過去を振り返る。
毎日のように届くメールを面倒に思いながら、返信をしたものだった。
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少女はやがて感謝をする日が来るだろう。
少なくとも今は、恨まれていても。
別れの言葉は言わなかった。
それほど青年にとって未練があったからだ。
少女には悟られるわけにはいかないと、青年は笑顔を作った。
いつものように手を振って別れた。
少女は元気に「また明日」と何も知らずに言った。
二人そろってソファの上で、DVDを観ていた。
少し退屈な昼下がりだった。
君が遠慮がちに、手のひらを触れ合わせる。
僕の心臓がトクンッと跳ねった。
僕は反射的に君を見た。
君の瞳は液晶テレビを見つめているばかりだった。
僕は触れ合った手の意味をしばらく考える。
そして君の手を握りしめた。
『もう二度と会えなくてもいいよね。』

君は笑顔で残酷な言葉を告げた。
僕は心の中で、その言葉を反芻する。
もう二度と会えなくてもいいよね。と、君は言った。
僕はそう思わなかった。
けれども、それを言う勇気はなかった。
君は手を大きく振り、その言葉を別れの言葉にした。
僕は涙を零す。
『バックホームタウン』

全てを投げ捨てて、電車に飛び乗った。
昼間の電車は空いていて、車窓から青空が見えた。
それだけのことなのに、涙が零れそうになった。
何もかも捨てて向かう先は、バックホームタウン。
帰らないと思った故郷へと逃げかける。
何も言わずに迎え入れてくれるだろうか。
『バーテンダーはグラスに
 なごり夢をそそいで。』

ショパンのピアノが泣くようにバーで響いていた。
私はカウンターに座って、今の自分のようだな、とグラスを空けた。
「次は何にしますか?」バーテンダーは尋ねた。
私は答えなかった。
バーテンダーはグラスになごり夢をそそいで。置く。
「iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

------

僕は、情けなく笑って最後の嘘をついた。
それは自分が楽になるための嘘だった。
君と過ごした日々が、それを後押しした。
「すべて夢でも構わない」と僕はへらへらした顔で口を開いた。
「私は夢だったら嫌だよ」と君が言った。
僕も同じ気持ちだった。
嘘だと言えたら、どんなに良かっただろう。
「もうちょっと身なりをどうにかすることができないの?」と君は言った。
「そうは言われても、昔からこうだったし」と僕は言い訳をする。
「こんなあなたと付き合っている。それがプライドが許してくれないの」と君は面と向かって言った。
君のプライドのためだけに自分は変えたくない、と思う。
せっかくの遊園地のデートだった。
何日も前から楽しみにしていた。
遠足効果だろうか。
前日、あまり眠れなかった。
遊園地の目玉のジェットコースターに乗った直後、気持ち悪くなった。
「ごめん」と僕は謝って、恋人に膝枕されていた。
「こういうのも悪くない、と私は思うよ」と恋人は微笑んだ。
夜になると、ひたひたと足音が響く。
襖の前まで足音は続き、開けてほしそうに立ち止まる。
けれども、どんなに懇願されても開けてやるわけにはいかない。
それが心を痛む。
魂だけの存在になった恋人を拒絶するのは辛い。
それが毎晩となると僕も魂だけになりたくなる。
雨音のような涙が聞こえる。
夕方になるのも、ずいぶん早くなった。
僕は茜色に染まる夕焼けを見つめていた。
君は軽々しく。僕の指を両手で包む。
僕の心拍は、それだけで早くなる。
君は笑顔で「あなたの手は冷たいのね」と言う。
「その分、優しいのかしら」と続けて言う。
「心まで冷え切っている証拠だよ」と僕は呟いた。
『天使の指あつめ』

神様はある日から、少しばかり悪趣味なことを始めた。
それは天使の指あつめだ。
人間に加担したり、堕天したり、神様にとって不利益なことをした天使の指をあつめて、透明な箱にコレクションしている。
それを知る者はいない。
指を取られた天使は天使でいられないのだから。
『夫はどこかの星の王子さま』

どこにでもいるような平凡な会社員の夫には秘密があった。
結婚する時に打ち明けられた話は、突拍子もなかった。
けれども、納得するような話だった。
夫はどこかの星の王子さま。
故郷の星にいられなくなって、単身で逃げてきたらしい。
嘘にも聞こえるような話。
『哲学者とストリッパーと枝豆ビール』

場末のストリップ劇場に、今日も紳士は通う。
いつもの席に座って枝豆を肴にビールを呑む。
往年のストリッパーは紳士の座席の向かい側に座った。
「アンタお偉い先生なんだろう?」女性は言った。
「それほどでもないさ。若者に哲学を示しているだけだ」
「iotuは、感情を抑えながら最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

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僕は、感情を抑えながら最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
「君を、信じきれなくてごめん」と君の目を見つめて言った。
今でも君を信じている。
君が僕を裏切ることなんてないことを知っている。
でも、どうしても言わなければならなかった。
僕の本当の願いは、どうせ叶わないから。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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