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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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誰も彼もが震える夜を過ごしていた。
未来への保証がない、というだけで人は臆病になるものだ。
毎日、太陽が昇って、沈んでいく。
それを当たり前だと思っていた人々には、いつ太陽が爆発するかもしれない、という話は心を落ち着かせなくするものだった。
せめて、毎日を大切に生きていくだけだ。
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夜空に瞬く星を見上げながら、もうこの星は爆発して、宇宙のチリになっているのかもしれない。
そんな事実に気がつき、ハッとする。
光年という長い定規では、決して測れない距離の星たちの光を浴びている。
星の数だけ話があるように、地上からは測り知れない思い出の数々がある。
せめて届けて。
ウィンドウに可愛らしいカップルが映る。
背丈も同じぐらいのカップルは、仲が良さそうに見えた。
私はそのウィンドウの面影から目を逸らしつつ、硝子を手のひらに触れる。
全ては幻影だと分かっている。
だから、せめて今だけは釣り合いの取れたカップルのように見られたい。
そんなことを願った。
『あなたのモノにして』

夜空を見上げて寄り添った僕と君。
恋人同士に見えるだろうか。
それとも、それ未満に見えるだろうか。
友だちと呼ぶほど距離は近くない。
寄り添いあっているのに、心の距離は遠い。
君は僕の胸に顔をうずめて「あなたのモノにして」とささやいた。
僕は君の肩を握った。
『そばで名前を呼ばせて』

「最後のお願いをしてもいい?」と君は涙ぐみながら言った。僕は無言で頷いた。
「そばで名前を呼ばせて」と君はハラハラと涙を零しながらも、僕を見つめた。
意外なお願いに僕の心の臓は跳ねた。
これで最後になるのに、それだけでいいんだ、と思ったら笑えてきた。
『砂漠文学にオアシスはあるか』

永遠の命題だろう。
砂漠文学にオアシスはあるか。
誰もが望む希望。
誰もが夢見る未来。
からからに乾いた人々にとっての楽園。
誰も見やしない砂漠文学にもオアシスを与えたい、と思うけれども、所詮夢うつつだろう。
砂原に一睡の夢を見たシェラザードだろう。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

------

僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
神様、罪深い僕をどうか許してください。
嘘を本物にしてください。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
「君を、信じきることができなくてごめん」と僕は言った。
まるで君にだけ罪を重ねるような台詞だった。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
僕は自由になりたくて、君に告白をした。
夢の中まで出てくる君の面影を追いかけるのに疲れてしまった。
君は恥じらいながら頷いた。
僕は告白した側なのに、目を丸くしてしまった。
こんな都合の良い夢ならいっそ覚めてしまえ、と思った。
だって、こんな情けない僕を君が想っているなんて夢だ。
長いこと両片想いをしていた二人がカップルになった。
もちろん周囲は歓迎した。
むしろ、いつになったらカップルになるのか、賭けをしていたぐらいだった。
そんな二人の初デートをすることになった。
どこへ行くのだろうか、と面白半分で尾行をすることになった。
それに付き合う自分にあきれる。
僕は録画したDVDを観ていた。
液晶の中の君は『お手を拝借』と音頭を取っていた。
君の合図で三三拍子で録画は終わった。
ずいぶん酔っていたのだろう。
引っ込み思案な君が率先してこんなことをするなんて。
「また観てる」と洗濯かごを抱えた君が通りかかった。
僕は君を見やる。
君は頬を染める。
ドアの鍵が壊れた屋上は二人だけの貸し切りだった。
誰も来ない屋上のフェンス越しに、君と僕が出会う。
君は恥ずかしそうに、腕を触れ合わせる。
鉄のぬくもりは冷たくて、どこか他人行儀だった。
僕らは分かりあえるのだろうか。
フェンス越しの君は「終わりにしたい」と微笑んだ。
僕も頷いた。
『キスをあたためて』

あなたとするキスは、どこか冷たかった。
まるで窓ガラスを伝う雨粒のような感覚だった。
無色透明なのに、どこか哀しい。
そんなキスを何度しただろうか。
闇夜で飲むホットミルクのように、キスをあたためて。
そうすれば淋しい夜を乗り越えれいけるから。
どうかお願い。
『誰も僕の嘘を知らない世界』

僕はひとつ嘘をついた。
他愛のないもので、誰もが納得するような嘘だった。
本当は苦しかったのに、笑顔で『大丈夫』と言った。
僕の嘘はひとつだったのに、どんどん増えていった。
僕は涙を流してはいけない世界にいる。
誰も僕の嘘を知らない世界は窮屈だった。
『時がゆくのか
 私がゆくのか』

別れを告げるように季節は裏切った。
いつまでも続く青空は寒さを届けるようになった。
時間という概念は大袈裟なほど、私を通り過ぎていく。
節くれだった手をじっと見て息を長く吐き出す。
時がゆくのか私がゆくのか。
水のように流れていく世界の中で思う。
「iotuは、小さく笑って最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

------

僕は、小さく笑って最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
父が最期に残してくれたアンドロイドに、僕は命令する。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と言った。
「イエス、マイマスター」電子の声音が忠実に言った。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
僕は目を閉じた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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