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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「もう大丈夫だよ」と青年は少女と目線を合わせるためにひざを折った。
青年は少女の頭を撫でるために手をかざした。すると、少女は目をつぶって、口を閉じた。
日常茶飯事に殴られていた証拠だった。
「手を繋ごうか」と青年は溜息を噛み殺して言った。
少女は恐る恐る、両手のひらに指を絡める。
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『サヨナラ切符』

今は珍しい切符切りの駅員がいる駅。
私は恐る恐る切符を差し出した。
「よろしいのですか?」と切符切りは尋ねた。
「もう待っているのに疲れてしまったの」と私は微笑んだ。
「あと一日ぐらい待ってみてもいいのでは?」切符切りは言った。
「切符を切ってちょうだい」言う。
『もういいから
 そこで待っていろ
 王子さま』

待っているだけでは願いは叶わないと分った灰かぶり。
あの日、最後にダンスを踊った女性を探しているという。
自分の力ではなく、家来に命じて。
もういいから、そこで待っていろ、王子さま。
隠していた硝子の靴を持って女性は王宮を目指す。
『私を早く
 見つけやがれ
 王子さま』

毎日、義理の母と姉にこきを使われている。
寝る場所は灰がばらまかれた暖炉の側。
わずかなぬくもりを感じながら、義理の家族のために雑用に追われている。
硝子の靴は階段に置いてきた。
私を早く見つけやがれ王子さま。
灰かぶりの願いは叶わない。
「iotuは、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「ずっと君と一緒だよ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

------

僕は、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をついた。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
君は最初から嘘だと気がついていたのだろう。
「ずっと君と一緒だよ」と僕が言うと「そうだね」と儚げに笑った。
僕の嘘に、優しく包みこんで真実にしようとしてくれた。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
君が笑うなら、僕が泣くよ。
君が苦しいと知っている。
泣くことすら許されないことを知っている。
だから君が強がりで笑顔を浮かべるなら、僕は声を上げて泣くだろう。
それが僕たちの愛の形だ。
なんて歪な形をしているだろう。
なんて美しい形をしているだろう。
君は僕のために、僕は君のために。
二人は出会い、恋人同士の時間を過ごし、やがて永遠を誓った夫婦になった。
君と過ごした時間は、どれもこれも幸せだった。
けれども、一つだけ未練があった。
君と僕との間に子供をもうけることができなかった。
こればかりは神様の領域だから、仕方がなかったのかもしれない。
可愛い子供だろう。
自分たちが選んだ未来だったとはいえ、無惨な最期を遂げようとしている。
気がつくことが遅すぎた、そんな後悔は意味がない。
生きることにしがみついた夜に、牢屋から抜け出せないかと考えていた。
けれども、誰の知識を拝借しても、決まりきった未来を覆すことはできなかった。
断頭台に立つ。
これが君と出会える最後だとは思っていなかった。
だから、目を逸らしつつ、両手を触れ合わせるだけで満足していた。
もし、あの時に最後だと知っていたら、力いっぱい君を抱きしめたのに。
消えない痕をつけるように、ぎゅっと抱きしめて離さなかった。
僕は君と会える最後だと知らなかったんだ。
君は雨の中、涙を流しながら目を見すえていた。
どこにでもある情景かもしれない。
それでも僕には、未来を見つめる挑戦者に見えた。
だから僕は君に精一杯のエールを送った。
いつしか君の夢が叶いますようにと願って。
届けばいいなと思いながら。
雨に打たれた君の夢が叶いますように。
空にもルールがあるから、ある程度の予測はできる。
けれども、あくまでも『ある程度』だ。
青空を覆うように広がった鰯雲を見て、先輩は肩を落とした。
今日の予測は快晴だったはずだ。
「空って自由ですね」と僕は慰めにならない慰めを口にした。
先輩は「君は優しいね」と微苦笑した。
『君とは帰省のバスで隣だった』

君と僕には接点がないと思った。
働いている部署も違うし、ランチを一緒にするわけでもないし、飲み会に行くグループとも違う。
だから、特に話したことをはなかった。
僕が夜行バスでくつろいでいると、大荷物を抱えた君がきた。
君とは帰省のバスで隣だった。
『ことばか』

「今、私のこと馬鹿って言ったでしょ」君は目を三角にして言った。
僕はびっくりして「そんなこと言うはずないじゃないか」と言った。
そして手元にあった詩集に目が入る。
「これのタイトルだよ。『ことばか』って言うんだ」僕は表紙を見せる。
「紛らわしいんだから」君は言う。
『サヨナラ上手なんてね』

カフェでブレンドを飲みながら、スマホをタップする。
あなたと一緒に撮った写真を整理しようとして、雫がひとつ零れ落ちた。
長続きしないのはガラケーに眠っている写真からだ。
学生時代に撮ったその一枚を消せないでいる。
サヨナラ上手なんてね。
私は嘘ばっかり。
「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「もう、迷わないよ」、と。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。」

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僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
「もう、迷わないよ」と声に出してから、僕は緊張しているのだと気がついた。
声が震えていた。
それを君に気づかれていないといいのだけれども。
君は泣きそうな顔をして僕を仰ぐ。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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