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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『空色のりんご』

まるで夕陽で染められたような空色のりんごだった。
もうそんな季節になったのかと空色のりんごを撫でる。
布で拭いて、禁断の園の果実にかじりつく。
体を流れる液体と君の肌のようなコントラストがまぶしかった。
果汁が腕を伝っていく。
それを舌で舐めて、君を思い出した。
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君に嘘でもいえない。
その言葉は『大嫌い』。
大好きな君相手にいえるはずがなかった。
そんな嘘をついて、万が一にも君に嫌われたら、考えるだけでも沈鬱となる未来だった。
だから、君の前では正直にいようと思う。
まだ『大好き』の一言を勇気を奮って言えないけれども。
言える日が来るだろう。
桜を花見してから、ほぼ半年。
月見の季節になった。
夜になる度に、君は空を見上げ、落胆する。
花見の時のように、行くわけではなかった。
月が見える時間は限られている。
そして、ここ数日曇り空だった。
星座早見盤を片手に、君は今日も熱心に空を見上げる。
花見以上に夜空に夢中になっていた。
20歳の誕生日に『松』を『待つ』にかけた和歌と共に、革靴が贈られた。
これからの人生を独りでも歩き出せるように。
贈り主の慈しむような視線は忘れられない。
初めて大人扱いされたのだから。
それにふさわしい人物になる、と革靴に誓った。
少なくとも贈り主に厭きられないように、と目標だ。
『針が一周するまでに』

どうせ振られるんだろう、と分かっていたから告白に条件を付けた。
『時計の針が一周するまでに答えて』と。
すると貴方は笑った。
『それは短針、長針?』と悪戯っぽく言われた。
失敗に気がついた私は俯く。
『どちらでも答えは決まっている。好きだ』と貴方は言った。
『6月の花嫁失踪、9月に帰る』

ようやく手に入れた高嶺の花だった。
『6月の花嫁に憧れているの』と言われて、結婚式は先延ばしにした。
そんな彼女が6月の花嫁になり、ウェデイングドレスのまま失踪した。
方々探して諦めかけた9月。
誕生月に彼女は帰ってきた。
まるで何事もなかったように。
『川で拾ってきた子供』

両親から愛されていないのだろうか。
何かしくじる度に『お前は、川で拾ってきた子供だからね』と言われた。
どれだけ大きくなろうとも言われ続けた。
両親が相次いで亡くなって喪主を務めていると親戚が笑いかけた。
『川で拾った子供が立派になって』と愛を知った。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「君が幸せなら、幸せだよ」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、まるで愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それとも最後だから、甘く嘘を紡いだのだろうか。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
君の笑顔を見たくて囁いた。
「君が幸せなら、幸せだよ」と言った。
本当はそこに僕も含まれていなければならない。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
「大丈夫か?」と訊かれたから、反射的に「大丈夫」と答えてしまった。
どうやら返事を間違えたらしい。
あなたは心配そうな顔で「全然、大丈夫じゃないか」と私の頭を撫でる。
こういう場合、どんな風に答えれば良かったのだろうか。
「そうかな」と私は笑顔を浮かべて言った。
泣きたかったのに。
研究室のカレンダーは春からめくられていない。
めくる人物がいなくなったからだ。
部屋の主は新しい方程式に没頭する。
カレンダーなんていらないように、来る日も来る日も研究を続ける。
やがて出来上がったのは奇跡のロボット。
鼓動を刻まない心臓を除けば、部屋の主の愛娘そっくりだった。
夕方、何かを探すように君は夕陽を見つめていた。
探すものは見つからない。
そう分かっているように、落ちていく夕陽を眺めていた。
約束一つできない我が身であれば、俯くばかりだった。
ぎこちなく、君の指を指先でなぞる。
夕陽よりも燃えるような赤い糸が結ばれているのか、と確認するように。
『無能方程式』

生産されていく無能方程式。
毎日のように量産されている無能な二足歩行の豚たち。
どこまでも歩いていく無能たちの行進。
夕陽を隠していく無能たちのパレード。
方程式が宙を踊る。
集まっていくのは、ナンバリングされた無能たち。
夕焼けの中で、それより赤い雨を降らせる。
『母はもういらない』

もういらないから首を絞めた。
鳥たちの羽ばたき音に紛らわされた断末魔の声。
母はもういらない。
私を殺そうと包丁を研ぐ、そんな母の首に力をこめる。
そんな夜明けと朝の合間に、何かを予兆したのか。
空から鳥たちが集まって誤魔化してくれるように鳴き声を上げる。
『教室の空気を凍らせたのは、ぼくだった』

それは単純で簡単にできた。
ぼくは誰も座らなくなった机に、白い菊を置いた。
それだけで、ざわめきは静かになった。
クラスメイトの誰もがぼくを見た。
教室の空気を凍らせたのは、ぼくだった。
クラスメイトから弾かれたきみに、白い菊で追悼を。
夢の世界にさまよいこんだのだろうか。
異形な人物たちが行きかう街にいた。
どこかで見たことのある風景だった。
まるで眠る前にめくっていた本の世界へと誘われたようだった。
すでに読み終えた本は枕元にあったはずだ。
兎耳の紳士がシルクハットを取り「物語をもう一度、始めましょう」と言う。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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