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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『天使にならなかった人たちへ』

その手紙の始まりは大人たちへ向けてのものだった。
白い便箋に整った文字で『天使にならなかった人たちへ』と書かれている。
ある日、天使が翼を喪うように、いつか子供心を喪うこともあるのだろう。
恋に堕ちて羽衣を奪われるように、天使ではいられない。
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『君は「僕が眠る前に泣いて」と言った。』

君は「僕が眠る前に泣いて」と言った。
その瞳は薄暗がりの部屋でらんらんと光っていた。
何か胸に抱えるものがあるのだろうか。
泣きたくても泣けない事情があるのだろうか。
だから私は「いいよ」と言って涙を零し始めた。
嘘泣きでもいいのなら。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「君が居なくても何も変わらないさ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

------

僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
幼子だったのは僕の方だった。
けれども嘘をとはいえ告げなければならないことだった。
それは前を進むための嘘だった。
「君がいなくても何も変わらないさ」と僕は笑顔をそっと貼りつけた。
悲しいぐらいの嘘だった。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
僕は笑顔で君の旅立ちを見送った。
もう二度と出会えない君だったけれども、最後ぐらい潔く別れたかった。
『ずっと一緒だよ』と何度も約束をした。
朝日に照らされた君は「いつから嘘だってわかってた?」と尋ねた。
僕は自信をもって「最初から」と答えた。
「ごめんね」と君は悲しそうに言った。
太陽が紅色に空を染めた。
毎日くりかえされる天体ショーだった。
沈みゆく夕陽を見つめて、僕は立ち止まる。
すると隣を歩いていた足音も止まった。
「どうしたの?」と君はあどけない表情で尋ねた。
いつまで、君は隣を歩いてくれるのだろうか。
いつしか別れの日が来るのだろうか。
僕は微笑んだ。
英語の授業はかったるい、というクラスメイトが大半だろう。
私は英語の授業を楽しみに、テキストを抱きしめる。
眼光が鋭い英語の先生は、私にとって憧れの人。
いつしかその瞳で、恋心を貫いてほしいと思っていた。
授業開始のチャイムが鳴った。
私はいそいそと着席をして、先生を来るのを待つ。
修学旅行の帰りのバス。
隣の女子がうつらうつらしていたので、僕は手のひらをくすぐった。
目覚めた女子は怒り顔で、僕の指をぎゅっと握った。
もう悪戯ができないように。
それすら愛おしくて、僕は笑ってしまった。
女子は目を鋭くして、僕を見つめる。
全然、怖くなかった。
恋をしているのかな?
『感涙園』

そこは誰もが感涙してしまう感涙園だという。
感動して泣いたことのない私は、冷淡に笑った。
そこの住人たちは宝石のように涙を流していた。
何が楽しいのだろうか、私にはちっとも分からなかった。
案内役は『いつかあなたにも感涙が訪れますよ』と言いながら、涙を零していた。
『恒星のプロポーズ』

夜空を彩る星のほとんどが恒星だという。
「そんな君も恒星のようだね」とあなたは笑った。
どういう意味か訊く前に、夜空に瞬く恒星のような金剛石があしたわれた指輪を取り出した。
恒星のようなプロポーズだった。
夜空の恒星の輝きすら失せて見えるような浪漫だった。
『余命宣告されてるから、綺麗に振って欲しいと願った』

生命がサラサラと零れる音を聞き続けているような気がした。
砂時計の砂のようにサラサラと流れ続けているのは、私の生命。
恋人は毎日のように見舞いに来てくれる。
私は余命宣告されてるから、綺麗に振って欲しいと願った砂時計の音。
「iotuは、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
君は何も知らないままでいて。」

------

僕は、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をついた。
それは本音とは真逆の嘘だった。
心の準備はできていない。
君の前で平静な顔をするので、せいいっぱいだ。
「まだ一人で生きていける」と君なしの人生を想像できないまま、僕は言った。
君は何も知らないでままでいて、幸福な人生を歩んでと思う。
今日もギリギリの時間に電車に飛び乗った。
これを逃すと遅刻する、そんな時間の電車だった、
いつものように朝ご飯は抜いてしまった。
座りたい、と思いながら電車に揺られる。
血の気が引く感覚がした。
すると「どうぞ、お座りください」と初老の紳士が言った。
ありがたく席を譲ってもらった。
スーツに羽根が生えていても、道行く人たちは気がつかないものだ。
自分たちの人生で精一杯だからだ。
それを電柱に腰をかけながら、ひとりの天使が見守っていた。
俯きがちに歩く少女に目が留まった。
天使は羽根を隠して少女に近づいた。
薄暗い瞳をした少女は驚きもせず、ぼんやりと天使を見た。
『禁断の果実は酸っぱい』

禁断の果実はリンゴのように密が入っていて甘いものだと思っていた。
けれども重ねた唇に残った味わいはレモンのように酸っぱい。
初恋の味だからだろうか。
重ねていた唇の感触が離れて、私ははにかむ。
アダムとイブのように、禁断の果実を食べてしまったのだから。
『夕焼けのロマネスク』

沈んでいく夕陽を残せないものか、と僕は考える。
できたらこの夕焼けにふさわしくロマネスク的に。
そんな文才があったら、こんなことを思っていないだろう。
僕は赤く染まった空をスマホで撮った。
忘れないように、思い出せるように、記念になるように。
溜息をつく。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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