『養殖家族』
家族がいなくなった子供のために、政府は家族を与えることになった。
そのために成体を養殖して、知識を植えこむ。
最初から家族だったように、養殖家族を作り上げる。
その数は新聞の一面を飾るほどになった。
子供の幸福は家族がいれば幸せなのだろうか。
それは誰も分からない。
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『人類解散』
群れでしか生きられないと言われた人類が解散することになった。
家族ですらバラバラとなり、一人ずつ生きていく。
それが戦争を招かない唯一の方法だと国家が決めつけた。
他にも方法はあったのかもしれないけれど、人類は疲れてしまったのだ。
それ故に人類解散することになる。
『キスさえもどうか飽きさせるほどに』
どうかもっと強く愛して。
どうかもっと深く愛して。
キスさえもどうか飽きさせるほどに愛して。
私にはあなたしかいないのだから。
唇を重ねる相手はあなたしかいないのだから。
どうか飽きさせるほどに愛してほしいの。
抱きしめるだけじゃ足りないの。
「iotuは、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「君の全部を忘れたいんだ」、と。
胸の痛みは消えやしないな。」
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僕は、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
心はズタズタに切り裂かれて、涙は乾ききっていた。
「君の全部を忘れたいんだ」と僕は別れの言葉を告げた。
もしも忘れて去ることができても、胸の痛みは消えやしないや。
そして抜け殻のように生きていくのだろう。
僕は読書をしながら眠ってしまったようだ。
「本を大事にしないなら処分するよ」と寝耳に水の台詞で飛び起きる。
電気をつけっぱなしだったらしい。
明るい部屋の中には確かに聞こえた声の主はいない。
一人きりの部屋だった。
よく見ると、本の頁の角が折れ曲がっていた。
本を閉じて電気を消した。
朝がきたのだと知らせる鳥の鳴き声で目が覚める。
シングルベッドの中で、ぬくもりを分かちあっていた。
そんなあなたへ優しく、腕を触れ合わせる。
少し先に夢の世界から目覚めてしまった私は、あなたの寝顔を見つめる。
薄暗い部屋の中でも、あなたの凛々しい顔は、はっきりと見えた。
私は笑う。
『欠陥人間KAKERU』
それはレンタルCDショップに並んでいた。
『欠陥人間KAKERU』とは見覚えのあるタイトルだった。
気になってレンタルすることにした。
早速、家に真っ直ぐと帰ってCDをかける。
何遍も聴いた懐かしいメロディが流れてきた。
その時を思い出して、ふいに涙が零れてしまった。
『マリー・アントワネットのパラドックス』
マリー・アントワネットが無垢な魂のまま嫁がなかったら、運命は変わったのだろうか。
潔癖症なまま成熟しなければ、宿命は変わったのだろうか。
歴史にもしもない。
これはあくまで妄想でしかないパラドックスだ。
断頭台に立つ女性にもしもはない。
『僕の名は「君の嘘」』
僕の名は君によってさまざまに変わる。
異性にモテる君の恋人の振りをするからだ。
その時々で、僕の名は変わる。
それに一瞬の寂しさを感じる。
あくまで君の恋人の振りをするからだ。
真実ではないのがブラックコーヒーよりも苦い。
僕の名は「君の嘘」でできている。
「iotuは、無理に笑顔を作って最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
もう、覚悟は決めたんだ。」
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僕は、無理に笑顔を作って最後の嘘をついた。
それは自分が楽になるための嘘だった。
これで最後だと思うと、笑顔でなければいけないような気がした。
それが君に見せる誠意のように感じた。
「まだ一人で生きていける」と本音を隠して嘘をつく。
もう、覚悟は決めたんだ。
どんなことがあっても。
僕は君のことが好きだったから、少しの変化も見逃さなかった。
たとえば嘘をつく時は拳を握るとか。
「吐いた嘘を見抜いてしまう、貴方が嫌い」と君は吐き捨てるように言った。
しょうがないだろう。
僕は君から目を離せないほど、好きなんだから。
君から嫌われたとしても、気持ちは変わらない。
あなたが私に見せるのは作り物じみた表面だけでした。
もっと深くあなたのことが知りたいと思うのは、悪いことですか?
あなたが隠そうとすれば、それだけ気になるのです。
あなたの心の奥底を見つめて、優しく抱きしめたいと思うのは罪なことですか?
私はあなたの飾らない本当が知りたいのです。
子供時代は引っ込み思案だった。
君に話しかけるのにも勇気がいった。
手を繋いで帰るのにも度胸がいった。
僕は遠慮がちに、君の指を指先でつつく。
それが合図だった。
けれども、そんな子供時代とはお別れした。
僕よりも小さな君の手を握ることができる。
君は子供時代と変わらずに笑顔を見せる。
『違う空を見つめて』
君とは同じ空を見上げていると思いこんでいた。
どこまでも続く空の下、同じ想いを抱えこんでいると信じていた。
けれども、それは違ったのだと思い知らされた。
僕たちは違う空を見つめて、思い思いの方向に夢を描いていた。
二人が同じ空を見ることなどなかったのだ。
『君の願いは、いよいよ清く。』
もともと君は無欲な人物だった。
欲しがることはなく、嫉むことはなく、心の底まで綺麗だった。
そんな君の願いは、いよいよ清く。
雲の出ない快晴の青空のようにどこまでも清らかになった。
どうして他人の幸せなことまで願うのだろう。
僕には分からなかった。