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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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君は顔色が悪いことを気にしていた。
だから、僕は君の誕生日に深紅のルージュを贈った。
それに君は飛び切り喜んでくれた。
二人で外出する時、必ず深紅のルージュを唇に乗せるほどに。
けれども歳月というのは残酷だった。
君は無垢な赤子のように、無邪気に記憶を忘却していった。
僕は心で泣く。
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仲秋だというのに扇風機が回っている。
部屋の中は蒸し暑く、隣で眠る君の体温は熱い。
君があまりにも静かに眠るのだから、僕は不安になる。
無理矢理、投げ出された両手に触れる。
僕よりも熱のこもった両手から、離れる。
そして、蹴飛ばされた毛布を君にかける。
まだ朝には早い。君よ良い夢を。
『夏のいない秋』

今年は夏がやってこなかった。
向日葵畑の迷路も、蝉時雨も、大きく切った西瓜も、夏と一緒に味わうことができなかった。
季節は一つだけ進んだ。
秋はいつまでたっても来ない夏を待って待ちぼうけ。
淋しさに涙が零れて秋雨前線になった。
夏のいない秋は、季節を一つ譲る。
『懐柔の街』

安心を金で買った街だった。
近隣の街は『懐柔の街だ』と囁く。
それでもいいじゃないか、と僕は思った。
生命は一度喪ったら、二度と手に入らない。
金を積むことで救える生命があるのなら、いくらでも積む。
その精神に今日も僕たちは守られている。
おびえる必要はどこにもない。
『コピペ彼ピ』

私の彼ピはコピペだ。
本物の彼ピを作ってみたいと思ったこともあった。
けれども私の容姿では、それは贅沢というものだった。
レンタルじゃないだけマシなのかもしれない。
コピペ彼ピにLINEで『愛してる』とタップする。
数分後、コピペ彼ピは『俺も』と返事をしてくれた。
「iotuは、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

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僕は、いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をついた。
それは現実逃避のため嘘だった。
逃げ場所を探して、君の懐に忍びこんだ。
これで最後の嘘にするから、と自分自身に言い訳をして。
「絶対にあきらめたりはしないよ」と僕は明るい口調で言った。
嘘だと言えたら、どんなに素直に泣けるのだろう。
昨日まで遅刻ギリギリだった寝坊の代名詞の君が、起きていた。
迎えに来た僕は、そのことにビックリした。
朝食もすでにすましているらしい。
「この子ったら朝日と同じぐらいに起きたのよ」と小母さんが言った。
「これからは早寝早起きなんだから」と君は笑った。
女の子が好きな占いだろうか。
「桜が散っちゃったら悲しいから、散らない桜を作って」と君が言った。
言われて僕は悩む。
桜は散るからこそ、美しい。
そこには慈愛も、慈悲もなく、ただの事実があるだけだ。
それを君にどう伝えたらいいのか、それが難しかった。
せっかく日本には四季がある。
それを堪能するために桜は散る。
君は泣き顔で、僕の両手を指先でなぞる。
僕の体温よりも低い君の手は、ほんの少しくすぐったい。
「ずっと一緒にいてくれないと、ダメなんだから」嗚咽の合間に、君が言う。
「君とはずっと一緒だよ」僕は手を繋いだまま言った。
「今日、一緒に歩いていた人は?」君は鼻水をすすり上げて尋ねる。
『憂患な日々』

君はいつでも笑っていた。
辛い時も、悲しい時も、苦しい時も、笑っていた。
遠く離れてみれば、思い出は君の笑顔ばかりだ。
今頃、君はどうしているのだろう。
連絡を取ることもためらわれて、僕は憂患な日々を送る。
君は君らしくあるのだろうか。
それだけが僕の心配だった。
『生まれたことが罪であり、
 生きていくことが罰なんだ』

可愛い双子の妹と生を受けた。
そして妹は若いうちに天国へと召された。
双子として生まれたことが罪であり、独りで生きていくことが罰なんだと思う。
今でも妹の笑顔の写真を見て涙が零れる。
どうして僕だけが生きているのだろう。
『私よおばあちゃんへ』

「どなたさま?」とおばあちゃんは無垢な笑顔で尋ねる。
すっかり忘れ去ってしまったことが悲しかった。
けれども、思い出は私の中にきちんとしまってある。
だから、大丈夫。
「私よおばあちゃんへプレゼントを持ってきたの」と声をかける。
「私は、おばあちゃん?」
「サヨウナラ」と君が言った。
「じゃあ」でも、「また明日」でもなく、はっきりと「サヨウナラ」と言った。
だから、僕も「サヨウナラ」と笑顔で言った。
君は踵を返し、自分の家に向かって行った。
最後の夜を過ごすのだろう。
君が振り返ることもないだろうから、僕は声をからして涙を流した。
町から子供が消えていくよ。
その度に、ご神木が成長していく。
次は年齢的に私の番だろうか。
ご神木の成長は目に見えるほどだった。
どうしてこんなことになってしまったのか、私は知りたくない。
次の番の夜、幼馴染がこっそりと部屋に入ってきた。
そして、私の手をとり、町から抜け出した。
足に鎖をつけられた少女は、牢番に問いかける。
「いったい、いつになったら出られるんでしょうね」と少女は鎖に触る。
じゃらりと音を立てた鎖は重々しかった。
牢番は少女の問いに無視をする。
それもそのはずだった。
牢番は声を失った、かつての牢人だったのだ。
少女は知らずに問いかけ続ける。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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