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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『思い出スライド』

懐かしい思い出がスライドのように過っていく。
これは走馬灯というものだろうか。
思い返せば、辛い人生だったなと思う。
それでも、最期は笑って旅立てるのなら、良い人生だと思った。
先に天国に行った君もこうして思い出スライドを見たのだろうか。
僕はいただろうか。
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青年の視力が奪われたように、目の前に暗闇が広がった。
厄介な術を持った同胞もいたものだ、と青年は思った。
神剣・神楽をやみこみに振るっていても意味はない。
五感を研ぎ澄まして、同胞の位置を探る。
仮初の夜は明ける。
青年は一薙ぎをする。
すると同胞は逃げ出しして、討ち取れなかった。
僕は夕方の教室で学級日誌を書いていた。
その横で君は日直でもないのに、終わるのを待っていた。
今日も、明日も、一緒に帰れる、と思ったら自然に顔が緩んだ。
「終わった?」君が尋ねる。
「うん、終わった」と僕はシャーペンをしまった。
君は満面の笑みを浮かべながら、僕の手のひらに触れる。
『博士のルール』

どこの大学でもそうだろう。
博士号を取ったからといって、すぐさま教授になれるわけではない。
最初は助手として安月給でこき使われつつ、生徒の論文を読みながら、自分の研究の成果を出す。
そんなわけで博士は金持ちしかなってはいけない。
給料で食べていけないからだ。
『小説婚』

図書室で小説を借りようと一冊引き抜く。
そして最後のページをめくる。
図書カードが入っている。
そこにはいつもの名前が書いてあった。
「こんな本も読むんだ」と見知らぬ女子生徒を思い浮かべる。
それがきっかけで、恋するなんて想像もしなかったし、結婚するとは思わなかった。
『友達以上、片思い未満。』

「私たちの関係って何だと思う?」と君が参考書をめくりながら尋ねた。
「友達だろう」と僕は答えた。
「だよね」と君は淡い笑顔を見せた。
それにドキリとするほどには君のことが好きだった。
でも片思いかといわれると、何かが違っていた。
どんな関係なのだろう。
幼馴染が堂々と、僕の指先を指先でつつく。
いつもの悪ふざけだ。
こんなことをしているから、補習を受ける羽目になる。
僕は無視して、宿題を続ける。
すると、またトントンと幼馴染が指先をつつく。
僕は勉強するのを諦めた。
「何の用?」できるだけ冷たい声で尋ねた。
幼馴染の顔がパッと輝く。
『哀しみと同じ顔をしている』

歓びは哀しみと同じ顔をしている。
少なくとも君は、憂いながら、その憂いを楽しんでいる。
それは僕は気がついていたけれども、黙っていた。
君の哀しみは『悲しみ』ではないからだ。
そこに愛情がこもっているから。
鏡の中の僕も、哀しみと同じ顔をしていた。
『結局、嘘は言えなかった。』

僕が君と離れて、この街に出ることは夏の頃に決まっていた。
君と蝉時雨を聞きながら、アイスを食べていたころには決まっていた。
もう二度と戻ってこない。
と知っていたけれども『また今度』と言って別れようとしていた。
結局、弱虫の僕は嘘は言えなかった。
『ふたりひと首』

「ねぇ、面白そうじゃない?」と君が本を手に取る。
その表紙には『ふたりひと首』と書いてあった。
「ホラーはちょっと」と僕が渋ると君は笑った。
「読み間違え」と君は頁をめくる。
「ふたりで短歌をひとつ作るの。ひとりで詠むのも楽しいけど」君の説明に僕は赤面した。
「ご飯はどうしますか?」と少女が尋ねた。
青年は「適当でいい」と答えた。
「食べたい物はありますか?」なおも少女が問う。
「適当でいい」と青年はくりかえし、家を出た。
食べられるものであればそれでいい。
青年はそう思っていた。
帰ってくると、テーブルには青年の好物ばかりが並んでいた。
その革靴はいい加減疲れていた。
新しい革靴を買うべきだろう。
それは僕にも分かっていたけれども、乗り気にならなかった。
君が最後にプレゼントしてくれたものだからだ。
ハートマークのメッセージカードは『これからも頑張ってね』と書かれた君の文字はお守りだ。
くたびれた革靴を抱きしめる。
『夜を泳ぐ錦恋』

まるで夜を泳ぐ錦恋のような恋をした。
あなたはずっと寄り添ってはくれないから、そっと傍にいた。
あなたは錦に染まった恋を私にくれた。
けれども、それは自由奔放に夜に泳いでいた。
私は必死に手を伸ばすけれども、ぬくもりは掠るばかりだ。
そんな恋も朝がくれば終わり。
『詩を編む』

毛糸玉からマフラーを編むように、たやすく詩を編む。
まるで決まった編み目があるように、編み図も見ずに編んでいく姿は憧れだった。
マフラーの色は私の好きな空色。
白い朝から始まって、朝焼けになり、昼になり、夕焼けになり、星が瞬く夜空になる。
それは魔法の手だった。
『波のウソをおしえて』

「ねぇ、波はどうしてできるの?」と君は無邪気に言った。
無学な僕には難しい問いだった。
「それは、きっと悲しさがあふれてくるからだろうね」と僕は夢見るような答えを言った。
「じゃあさ、波のウソをおしえて」こっそりと君は僕に囁いた。
それならできそうだ。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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