忍者ブログ
ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

録画されたDVDに傷跡があった。
無事に再生できるのか、僕は悩む。
DVDの表面には『お誕生会』と書いてあった。
「再生しないの?」君が尋ねる。
僕は無言で傷跡を見せる。
「見られなかったらその時だから、とりあえず再生してみようよ」と君は明るく言った。
一理あったので僕はディスクを入れる。
PR
白尽くめの室内はどこか不安を生み出す。
名前を呼ばれるまで待合室でぼんやりと待っていた。
病院はいつでも、心を落ち着かせなくする。
私は力強く、両手のひらをぎゅっと握る。
マスクの中、早くなる呼吸。
何度きても慣れなくて、心臓が早くなる。
白尽くめじゃなくて極彩色であればいいのに。
『これが恋だなんて聞いたよ』

完璧な容姿で、完璧な笑顔で、完璧な声帯で、彼は言った。
「これが恋だなんて聞いたよ」と私に向かって。
彼はアンドロイドだというのに、恋をしたという。
信じられないことだった。
物が人間と同じ感情を持つなんて禁忌の領域だ。
「勘違いよ」と私は否定した。
『東京モーニング』

大都会の東京は朝を迎えたばかりだというのに、人がたくさんいた。
僕は最小限の荷物を持って、アスファルトに踏み立つ。
今日から僕も東京人だ。
眩しい朝日を浴びながら、東京モーニングを味わう。
誰も彼もが見ていない朝日だけども、応援してくれているような気がした。
『可愛くない話』

当たり前のように男がいて、当たり前のように女がいた。
当たり前のように二人は恋に落ち、禁断の実をもぎとった。
その結果、知らなくてもいいことを知らされる。
遅い収穫は禁断の実を甘くする。
刈り取られたのは誰?
そんな当たり前すぎる可愛くない話。
禁断の実は穴の中。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

------

僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と僕は言った。
君はパーティーの要のヒーラー。
僕はダメージディーラーだ。
役割は決まっている。
どうせ仮想世界での死だ。
これが本音なら、楽だったのに。
カッコつけた。
喜怒哀楽が乏しい彼は、さらに表情が乏しかった。
平坦な『愛している』にも慣れてきた頃だろうか。
彼の誕生日に、手作りのクッキーをプレゼントした。
どうせ喜びが薄いなら、消えものがいいだろう、と思って。
彼の顔に仄かに笑顔らしきものが浮かんだ。
「うまく笑えていないのは自覚してる」
噂の絶えないクラスメイトと付き合うことになった。
もちろん、お試し期間を条件に付けた。
付き合っている間に、他の女子とそういう関係になられたら厄介だ。
彼はその条件をすんなりと飲みこんだ。
誰もが夢中になるわけが解った。
彼氏ともう呼んでもいいのだろうか。
彼の気配りは卒がなかった。
僕たちは透明に近づく夜空を仰ぐ。
「月が出ている時間がいいよ」と君は言った。
「天体観測に月の明るさは邪魔だよ」と僕は言った。
堂々巡りをくりかえすのは、今夜だけではない。
「でも」なおも言おうとする君の唇に人差し指でふれる。
柔らかな感触に本来の目的を忘れそうになる。
「静かに」
君が泣きながら「ごめんなさい」と言った。
僕は仕方なく、両手のひらを軽く握る。
いつだってそうだ。
謝られると、これ以上怒れなくなる。
結局は、仲直りしてしまう。
理不尽だと感じていても。
僕は長く吐息を吐き出して、君に手を差し伸べる。
君の涙が続いていたけれども、君はそれを握った。
『遠距離殺人』

「メールもするし、電話もする」僕には、それぐらいしか約束ができなかった。
父親の転勤で引っ越しをすると決まった日に、君だけに告げた。
「こんなの、遠距離殺人だよ。私の心はあなたによって殺されるんだ」と君は涙を流しながら言った。
僕は紡ぐ言葉に困ってうつむいた。
『世界45度』

君は僕の部屋で地球儀を回しながら、暇をつぶしていた。
「ゴメン、待たせたね」と僕は謝った。
「世界45度」と君は呟いた。
「気温のこと?」僕は尋ねた。
「傾きのこと。世界が45度、傾いていたらどうなるんだろう」君は地球儀を一周させる。
「きっと変わらない生活だよ」言う。
『同情してくれ、金もくれ』

「俺って可哀想だろう?」と突然、幼馴染が言ってきた。
あまり良い予感はしなかった。
「同情してくれ、金もくれ」と幼馴染は笑顔で言った。
また遊ぶための金に困ったのだろう。
僕はため息をついた。
「残念ながら、同情もできないし、お金も渡せない」と言った。
文通をしているというと、みな不思議な顔ををする。
最初の出会いWEB上だというと、もっと不可思議な顔をする。
今時メールでもLINEでもない繋がりを持つことは珍しいことなのだろう。
私はレターセットを取り出すと手紙を書き始める。
一筆申し上げますと藍色のボールペンを走らせる。
「夜更けの学校には怪談話に出てくるような怪奇現象が起きるんだって」と君は楽し気に言った。
毎度、付き合わされる身としては、遠慮したい事例だった。
「行ってみない?」君は身を乗り出して、顔を近づける。
シャンプーの香りがして、ドキッとした。
「行きたいなら一人で行って」と僕は言う。
PREV ← HOME → NEXT
プロフィール
HN:
iotu(そら)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
フリーエリア
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH