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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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東の空が鮮やかな天体ショーを見せたのに、君はどこか遠い目をしていた。
「綺麗だろう?」と俺が言うと、君は鼻で笑う。
それに俺は納得できなかった。
「毎日、見られるものでしょ?」と君は言った。
そう言っている間に、月は白くなっていった。空も青を増していく。
ひねくれものだな、と思う。
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君は映画に夢中だった。
ずっと二人で見てみたいと言っていた恋愛映画だから当たり前だろうか。
ハンカチを手に、君はスクリーンを注視する。
僕はさりげなく、君の指先を軽く握る。
左手の薬指に違和感を覚えた君は驚いた。
一つの記念日が増えたことに、僕は満足を覚えた。
プラチナの指輪は輝く。
『燃料切れの宇宙船が向かう先』

母なる惑星から飛び出して、とうとうやってきた。
クルーたちには分かっていたことだった。
これが緩慢的な自殺だということを。
燃料切れの宇宙船が向かう先は『死』だ。
コールドスリープで眠る住人たちと絶望への旅路へと向かう。
クルーたちも年老いていく。
『私の「やる気特急」時刻表なし』

「お前って変わってるよな」と職場の先輩が言った。
「何がですか?」モニターを見ながら、キーボードを叩く。
「怠けている日もあれば、今日みたいに急に残業したりして」と先輩は缶コーヒーを飲みながら言った。
「私の『やる気特急』時刻表なしなんです」
『偽物のクジラに添う』

海の中でクジラの浮き輪に寄り添う。
私もクジラになったみたいで、自由に泳げる。
偽物のクジラに添う。
それだけで充分だった。
大きな浮き輪と共に海の果てまで行けそうな気がした。
寂しさを紛らわせるように、寄り添いあって、どこまでも泳いでいく。
偽物クジラと。
君はいつもよりも饒舌に語る。
お酒の席だということもあるのだろう。
カシスソーダを持て余しながら、ぽつぽつと僕に話しかける。
誰かに聞いてほしかったのだろう。
たとえ、ここにいるのが僕でなくても君は同じ話をしたのだろう。
心の中に溜めておくには苦しい話だった。
ロンググラスをなぞる。
虹色は地域によって数が違うのだと知ったのは、国が隷属してからだった。
帝国との戦に負けたのだ。
小さな国だったが、ひとつだけ誇れるものがあった。
虹色の歌を唄う美しい第一王女。
皇太子の婚約者として、和平条約が結ばれた。
姉を慕っていた第二王女はそれを聞いて傷つく。
代わりたかった。
公園はにぎわっていた。
二人でベンチに座って日光浴をしていた。
「あの子、どうしたのかしら?」と君は言った。
泣いている女の子がいた。
「ちょっと行ってくる」と僕は立ち上がった。
女の子と目線を合わせて「こんにちは」と僕は言った。
泣き顔で、手のひらを指先でなぞる。『こんにちは』と。
『対温計』

僕と君の体温は反比例。
まるで体温計ならぬ対温計。
僕が暑いと長袖を脱ぐと、君は信じられないような目で見る。
そんな君はキャミソールに貼るホッカイロをしている。
まだそんなに寒くない時期だというのに。
そんな君の指先は氷のように冷たくて、僕を心配させるのには充分だ。
『サヨウナラはコンニチハ』

片言の日本語で、隣の女子が声をかけてきた。
「サヨウナラはコンニチハ?」女子はテキストを手に言った。
「サヨウナラは別れの挨拶。コンニチハは出会いの挨拶」面倒ながら俺は答えた。
「サヨウナラの次がコンニチハなら同じでしょ」と女子は朗らかに笑った。
『ありふれた切捨て』

奴隷たちの命なんて、紙よりも軽い。
荷物を運ぶ奴隷たちを監視している使用人が陽気に鞭を振るう。
それでも、奴隷たちは文句は言わない。
一言も文句を漏らさずに、重たい荷物を運び続ける。
そうしなければ、我が身に降りかかってくるからだ。
ありふれた切捨てだった。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
胸の痛みは消えやしないな。」

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僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
僕と君の関係は曖昧すぎた。
それに決着をつけたかった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と僕は心にもないことを言った。
君は「そうだね」と笑った。
それが決定打だった。
胸の痛みは消えやしないな。
男の人は大きな体と大きな声で、距離をつめてくる。
初めてのお付き合いだから、ちっとも加減が分からない。
近すぎると怖い、離れても嫌。
もうちょっと曖昧な距離がいい。
それを告げて、離れ離れになるのも嫌だった。
だから今日も告げられなかった。
繋いだ手が震えているのに気がつかれたかも。
雲と雲の隙間にできた夜空が傷跡のように思えて、眠れない。
雲が痛がっているように思えるのだ。
そんなことはないのに、想像は広がる。
そして、脱走していく羊の群れを数えながら、窓から天井に目を移す。
意味のないことだと分かっているけれども、気休めだ。
朝が来る前に、そっと目を瞑る。
季節外れの肝試し大会。
こんなことを開催しなければ手すら繋げないのは情けない。
主催の計らいで、気になるあの子と一緒になれるようにクジを作ってくれた。
怖がりなあの子は「手を繋いでいい?」と言ってきた。
作戦通りだった。
僕はいたずら心を起こして、ぎこちなく、腕を指先でなぞる。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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