人が驕りを覚えたのはいつのことだろうか。
楽園でリンゴをかじった時だろうか。
それとも神から炎を教えてもらった時だろうか。
血で血を洗う争いの中で、つかの間の平和を甘受する。
連綿とつながる歴史は闘争の暦。
幸福に気がつかないまま、一つの時代が終わろうとしている。
今は進むだけだ。
「この世界で二人きりになれたらいいのにね」と君は苦笑した。
お祭り騒ぎは嫌いではなかった。
けれども静かに二人きりになれるのとどちらがいいかと問われたら、後者だろう。
長いこと片思いをしていたから、祝福されるのは嬉しい。
二人の恋は始まったばかりだ。
二人きりでじっくり温めたい。
今度の彼氏は奥ゆかしい。
真面目で、誠実で、照れ屋で、優しくて、少しばかり不器用だ。
友達に誘われた合コンで出会った。
人数合わせに連れてこられたのが分かるほど浮いていた。
今まで付き合ってきた彼氏たちとは違う。
私がどんな女かもしれないで、丁寧に扱ってくれる。
幸せだと強く感じる
教育にうるさい母だった。
門限があり、遊ぶ友達も制限された。
学校が終われば、塾やピアノ教室に行くのが当たり前だった。
夜遅くまで勉強をして、宿題が終わる頃には空腹が耐え難い時間になっていた。
けれども、すべてが終わるまで夕食にはありつけなかった。
今でもそれを恨みに思っている。
君は気分屋で好奇心旺盛だ。
それに顔が良い男にめっぽう弱い。
すぐに惚れた腫れたの大騒ぎになる。
その度に、振り回される僕の気持ちになってほしい。
熱しやすく冷たくなる君に付き合えるのは僕ぐらいのものだよ。
今日も恋人と別れた君にの耳元にささやく。
「僕以外に、満足しないように。」
その獣は金色の美しい瞳を持っていた。
いつでも鋭い目をして、辺りを見回していた。
だから、誰もがその獣を怖がっていた。
長い年月が過ぎ、獣が息を引き取る瞬間がやってきた。
それを悲しむのは獣の傍にいた少女ひとりのみ。
みんながホッと安心していた。
もう獣の瞳に怯えなくてすむと笑う。
「僕と結婚してほしい」と彼が言った。
社会人になってからできた彼。
結婚適齢期だ。
真面目な彼は将来を考えて貯蓄もしているし何よりも私に誠実だ。
きっと子供ができたら可愛がってくれるだろう。
「不幸になるだけよ」私とは正反対の人生を歩んできたのが分かる。
「僕が、君を幸せにしたい」
この関係に名前を付けるとするならば、どんな名前が相応しいだろう。
僕は君のことが大好きだけれど、君はどう思っているだろうか。
友達と呼ぶには近すぎる。
かといって恋人ではない。
お互いの意思を確認しあったことはない。
嫌われていないことは知っている。
でも好きの種類はどうなんだろう
あなたは私のことを面倒だと思ってる。
幼なじみという腐れ縁だから付き合っている。
そんな様子を感じて、私の心を沈みこむ。
私があなたを頼るのは幼なじみだからではない。
私のことをよくわかっているあなただから、助けてもらえる。
ただの幼なじみだったら、こんなにも頼ることはないのよ。
同胞殺しの妖刀神剣・神楽を振るう度に、生命が削られているような気がする。
最初は少し疲れた程度だった。
それが体が重くなり、神剣・神楽を握らない日は寝こむようになった。
戦い過激化しているせいだろうか。
戦わない日は少ないから気づかなかったけれど体のあちこちが悲鳴を上げている。
ついた溜息が白く凝る。
最寄り駅まで歩くのに街灯が頼りな季節だった。
まだ街が目を覚まし切らない頃。
少年は少女を迎えに行く。
幼稚園から一緒にいるからか、それが習慣化している。
少女は時間通りに玄関から出てくる。
歩き出した少年に止めるように。
少女はそっと、少年の腕を両手で包む。
全問答えが埋まった。
掛け時計を見るとまだ時間がある。
ケアレスミスがないかチェックする。
今度こそ完璧な答案だ。
少女は教室を見渡す。
白金色の頭髪の少年はぼんやりと窓の外を見ていた。
彼にかかればこの程度の問題は朝飯前なのだろうか。
余裕がない自分との違いを格差を見せつけられる。
覚めた夢の続きを見ているのだろうか。
隣で君が健やかな寝息をたてていた。
僕よりもわずかに高い体温があたたかい。
時計に目をやると、起きるには少し早いぐらいの時間だった。
二度寝をしたら、この夢のような時間が消えてしまうのだろうか。
手を伸ばして君の髪を撫でる。
サラサラと零れる。
「寂しい」とあなたは言う。
そんなあなたに手を差し出すと首を横に振る。
優しくしてあげたいのに、あなたは「いらない」と言う。
あなたは高い壁を築いて、周りを拒絶する。
二度と傷つかないために。
どうすればいいのか、私は途方に暮れる。
あなたを抱きしめて、独りではないことをしらせたい