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「 140文字の物語 」
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「私のこと好き?」と少女は何度も確認する。
その度「大好きだよ」と少年は答える。
いっぱい傷ついてきたのだろう。
どれだけ確認しても不安になるのだろう。
もっと早く出会っていれば、苦しみも悲しみも分かち合えたのに。
「私も大好き」と少女は言った。
わずかとはいえ納得できたのだろう。
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それは柔らかくて温かかった。
気持ちよくて思わず握りしめる。
「痛い!」少女の声がした。
青年は寝ぼけ眼で状況を把握しようとしたが、寝起きだ。
頭が働かない。
「もう朝ですよ。ご飯もできています」少女は言った。
目をこすろうとして、柔らかいものの正体に気がついた。
少女の細い腕だ。
「アイスを食べたい。寄り道しようよ」と彼女は言った。
「この寒い中、アイスはちょっと」と俺は言った。
「店内は温かいよ。暖房が利いた場所で食べるアイスは美味しいよ」
その言葉に負けて寄り道することになった。
個別注文して席に着く。
「ずるい。そっちの方が大きい」ずるいのはどっちだ。
「待ってよ!」後ろから声が追いかけてきた。
ほどなく腕をガシッと掴まれた。
頬を上気させた少女がいた。
「コンパスの差、いつになったら覚えるの?」少女は言った。
同年代でも背の高い少年と背の低い少女では歩幅が違う。
「ごめん、考え事していた」その場を取りつくろうように少年は謝った
初めてデートをした水族館が閉鎖するという。
来場者数と維持費の関係で続けてはいけない、という世知辛いものだった。
最終日は混むだろうと、日付をずらして水族館に向かった。
水族館は惜しむ人々でいっぱいだった。
はぐれないようにと手を繋いだのも、初デートの時を思い出させた。
懐かしい
本当は一人で心細かった。
できれば、ずっと一緒にいたかった。
素直になれない私は「大丈夫」と笑顔を作った。
君は「それならいいだけど。じゃあ、また明日」と言った。
簡単な嘘くらい見抜いてよ。
分かれ道で君と離れ離れになる。
私は君の背中を見送る。
弱音が零れそうになるから上を向く。
夕方の図書室は貸し切りだ。
少年はいつものように文字を追っていた。
少年が本を読むのは、少しでも現実から離れたかったからだ。
バカなクラスメイト、成績を気にする両親。
生き辛い世の中だった。
そして、図書室通いをするもう一つの理由。
カウンターに座る少女の心を盗む方法を検討中だ。
幼なじみは警戒心が強い。
私がぼんやりしすぎなのかもしれない。
そんな私を心配してくれているのかもしれない。
何もかも一緒にしているせいか、恋人同士という噂が立った。
「付き合っているんでしょ?」クラスメイトが訊いた。
否定しようとしたら「誰のものだと思いで?」と幼なじみは言った
差し出せるものは何ひとつもなかった。
ままごとのように絡んだ小指だけが、証拠の恋だった。
未来への約束も蝋燭の灯のようだった。
期限付きの恋は終わりが見えているからだろうか、花火のように輝いていた。
退屈な永遠よりも刹那の一瞬を選んだ。
瞬きすら惜しい二人の時間。
砂のようだった。
本の世界に没頭していたら、グラスの中の氷は溶けていた。
すっかり味が薄くなってしまったコーヒーを飲む。
今度は氷抜きで用意しようと思った。
本を読み始めると、なかなか中断できない。
結末が知りたくなって、次から次へとページをめくってしまうのが原因だ。
分かっていてもやめられない。
結界が解けていく。
夜明けが近い。
仄かに太陽の気配がした。
神剣・神楽を布に包んで、用意しておいたコートを羽織る。
結界の外で待っていた少女に微笑む。
少女は大きな瞳に涙をたたえて、青年に抱きついた。
待っていてくれている人がいる。
それだけで戦う理由になる。
痛みに耐えながら思った
少女は不満そうだった。
歩く度に、ふれては離れる手。
きっと手を繋ぎたくても繋がない少年に、苛立っているのだろう。
こういうことは男性側からしてほしい。
そう思っているようだった。
少女は仕方なく、手のひらを指先でつつく。
少年は察したのか、少女の手を握った。
少女は顔をそむけた。
天気予報が嘘をついた。
今夜は晴れると言っていたのに雲が広がっている。
これでは星が見えない。
双眼鏡を持ってきたのに意味がなくなってしまった。
スーパーの広い駐車場で立ち尽くす。
呆然としていると自転車を押しながら君が歩いてきた。
「これじゃあ、見られないね」と困ったように言う。
いくつ歳を重ねても、君は自由な世界を持っていた。
いや、年を追うごとに君の世界は広がっていった。
それが僕には羨ましかった。
僕の世界は年々小さく、狭くなっていくばかりだ。
「君の世界を僕にもわけて」と言うと、君はきょとんとした目で僕を見た。
それから満面の笑顔で「いいよ」と言う
アラームが鳴っている。
そろそろ布団から出なければ。
遅刻はしないが、朝の支度でバタバタすることになる。
暖かな布団の中で、微睡みたい。
そんな気持ちがあるがアラームが邪魔する。
勢いをつけて起き上がる。
眠気覚ましに窓を開く。
朝特有の冷たい爽やかな風が室内に入りこむ。
目が覚めた。
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