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「 140文字の物語 」
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君はすっかり眠りの世界だ。
健康的な寝息が聞こえる。
少しつまらないと思った。
僕は軽々しく、君の指先を指先でなぞる。
白くて細い僕をとは大違いの指を一本一本をなぞる。
それでも眠りに囚われた君は起きる気配はない。
君の寝息を聴いているうちに僕にも欠伸が出る。
寄り添って寝たくなった
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君は不満があるのだろう。
押し黙ったまま僕を睨む。
いつもだったら君が切り出すのを待っていただろう。
けれども、僕の心に余裕がなかった。
「どうしたの?」僕は尋ねる。
「別に」君はぶっきらぼうに言う。
不満が駄々洩れしていた。
目は口よりも有言だった。
君はついっと僕の視線から逃げる。
「アイス買ってこようか?」君が尋ねた。
虚栄心が湧く。
いつも買ってもらっている自分が子供のような気がして「いらない」と答えていた。
「本当に?」君は念押しする。
「天気がいいうちに買い物に行ってきなよ」僕はついつい冷たく言ってしまった。
僕の心が傷つく。
たかがアイス一つで。
君は恥ずかしそうに、自分の両手のひらに指を絡める。
いつものようにいたずらをしてこない。
それを意外に思っていると君はそっぽを向いたまま呟く。
「これ以上、嫌われたくないから」小さな声は僕の元まで届いた。
「嫌いじゃないよ。迷惑しているだけだよ」と僕は訂正する。
「同じことだよ」
いつの間に僕と君の距離は開いてしまったのだろうか。
寄り添うように傍にいられたのはいつのことだっただろう。
開いてしまった距離は星々のように遠い。
埋められる日が来るだろうか。
一度、開いてしまった距離を埋めるのは難しいと知っている。
このまま「サヨナラ」をするのは寂しいと思う。
久しぶりのデートだというのに彼の視線を独占できない。
彼は道行く女性に目を移りする。
すぐ傍に、めいっぱいお洒落をした女の子がいるというのに。
気合を入れてきたのに空振りだった。
力強く、彼の腕に指を絡める。
ようやく彼はこちらを見た。
「疲れた?」彼が心配そうに尋ねるから首を振る
君が「ねぇ」と僕のコート裾を引く。
「どうしたの?」僕は尋ねる。
「寒いね」と君は微笑む。
「そうだね」と、歌であったようなやりとりをする。
「手を繋ぎたい」君は俯いた。
僕は手袋を外し、左手を差し出す。
君は目を瞬かせる。
そして、君もまた手袋を外す。
少し冷たい手が僕の手を握る。
外はコートがいるぐらい寒いのに、店内は汗ばむぐらい暑かった。
君はストールを外しながら、ウィンドウショッピングをする。
僕もコートを脱いで、腕にかけた。
雑貨屋さんで君は立ち止まる。
僕から目を逸らしつつ、腕を触れ合わせる。
君が迷っている時のサインだ。
いったい何が欲しいのだろう
愛する人と、僕と君とで誕生日を祝う。
君と出会わせてくれた大切な人だ。
そんな愛する人の誕生日なのだ。
愛する人が生まれてこなかったら、君に巡り合うことはなかっただろう。
君と一緒に計画を立てていた。
内緒で準備をしていたけれども、バレていたようだ。
愛する人は朝から笑顔だった。
『スミマセン』が口癖になっていた。
「スミマセンをありがとうに変えてみたら?」友達が言った。
「それだけでも人生違って見えるよ」とアドバイスしてくれた。
そういうものだろうか。
緊張したけれども『ありがとう』と言ってみた。
相手は笑顔になった。
ささやかなことだったけれど嬉しい。
慈悲のように木は緑の葉を茂らせていた。
この季節、常緑樹は貴重な彩りだった。
白い雲が広がって、冷たい雨が降るのだろうか。
どうせなら雪の方が良いと思う。
緑に映えるだろう。
それを見た君は喜ぶだろう。
寒い中、子供のようにはしゃぐ姿が想像できる。
そんな君を見て僕は微笑むだろう。
ゼリーやプリンを買って君の家を訪れる。
風邪を引いた君へのお見舞いだった。
「ゴメンね」と言った君の声はガラガラだった。
君はティッシュを一枚、引き出して鼻をかむ。
かわいそうという意識と可愛いという意識が湧いてくるから不思議だった。
君は「移したら悪いから」と帰りをうながす。
お菓子を英語でスイーツと呼ぶと高級感が溢れてくるのが不思議だった。
コンビニで巷で噂になっていたスイーツをゲットする。
売れ行きは順調のようで最後の一個だったらしい。
それを買って、君の家に向かう。
仕事で忙しい君へのご褒美だ。
二人の関係も進むといいな、という下心もあった。
背伸びをしたクリスマスディナーの帰り道。
いつものように少年は少女を家まで送っていく。
少女には話したいとことがたくさんあったようだ。
玄関の門まで来ても喋っている。
少年はさりげなく、少女の指を触れ合わせる。
手袋をしていない指先は冷えていた。
思わず、ぎゅっと握ってしまった。
君はニコニコ笑顔になる。
満面の笑顔を浮かべるから、僕は理由を訊いた。
「祝われる私よりも。祝ってくれる貴方が嬉しそうだから」君は弾む声で言った。
当たり前じゃないか。
今日は君が生まれてきた日だ。
僕と出会ってくれて、一緒にいてくれる。
そんな大切な日が嬉しくないはずがない。
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