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「 140文字の物語 」
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野良猫すら通らない路地裏。
二人して身を隠す。
少年は堂々と、少女の指を両手で包む。
光のある世界では手を繋いでくれないのに。と少女は不満に思う。
それに気がつくのか、こうして影のできる路地裏に誘われる。
早く太陽が輝く世界でも手を繋ぎたい。
そんな贅沢なことを少女は思うのだった。
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「好きだったのは、嘘じゃないけど、それだけでは足りないの」と君は切り出した。
「どうすればよかったの?」僕は訊く。
「そういうところ。自分で考えていないでしょ」君は言った。
「言ってくれなきゃ分からない」僕は言葉を重ねる。
「このままだと嫌いになるかも。その前にお別れしましょ」
ひどく優しい仕草で頭を撫でられる。
少しくすぐったくって、とても嬉しかった。
小さな子どもに戻ったように、心は喜びで満ちた。
そこには愛情がこもっているようだ。
いつまでも撫でていてほしいと思うのは贅沢だろう。
手は自然と離れていった。
それが残念で、寂しい気持ちでいっぱいになった
離れ離れになる友だちに手紙を書いた。
涙が零れて、文字もぐちゃぐちゃなそれは、立派とは言い難かった。
けれども、それ以上の手紙なんて書けないだろうから、そのまま差し出す。
友だちは笑顔を浮かべて「ありがとう」と言った。
こんな時まで笑える友だちが羨ましかった。
涙ながら見送る。
好きな人から「好きだ」と告白された。
「できれば付き合って欲しい」とも言われた。
ずっと好きな人からだったので、二つ返事でOKした。
晴れて恋人同士になったものの全ては手探り。
ある日のこと「いつから恋って気付いてた?」と恋人から尋ねられた。
こっそり耳元に「最初から」とささやく。
「そうやっていじわるばかり言うから友だちがいないんだよ」と言われた。
友だちだと思っていた人物から言われた。
彼も友だちではなかったのか。
そう思うと、やりきれない思いに囚われた。
いじわるで言っているわけではない。
感じたことをそのまま口にしているだけだ。
根が曲がっているのか。
漂う雲を眺めていた。
刻々と姿を変える雲は見る分には楽しい。
上空の方では風が強いのだろうか。
やがて大きな雲はサンタクロースに願いをこめる靴下のような形になった。
そういえばいくつまでサンタクロースを信じていたのだろう。
今やサンタクロースを演じる側になった。
信じていてほしい。
風鈴の音が耳に涼やかに響く。
伝う汗に風が吹く。
幼馴染と縁側で西瓜を食べていた。
蝉の鳴き声と風鈴の音と西瓜を食べる音しかしなかった。
幼馴染が上目遣いで、手のひらに爪を立てる。
「なんだよ?」と尋ねると「なんでもない」とそっぽを向く。
暑い中、不機嫌になられても困るのだけど。
産声を上げたのは祝福されるためだった。
決して牢に繋がれるためではなかった。
けれども望まれた生誕はその瞳を開いた時に一転した。
禍々しい邪眼の持ち主だった。
その子どもの生誕は秘され、殺されることもなく生を繋ぐ。
誰もが持ちえぬ瞳の色ゆえに。
彼に限って浮気なんかするはずがない。
不細工ではないけれども、気が利かない彼。
そんな彼を相手できるのは自分しかいない。
そう思っていたかった。
それでも友だちの目撃証言に心が揺れた。
彼のスマホの履歴をこっそりと覗く。
笑い飛ばしてしまいたかったのに、決定的なメールが残っていた。
「キスってどんな感じなのかなぁ」と少女は言った。
『眠れる森の美女』と観たばかりだった。
「試しにしてみる?」少年は言った。
「でもママは簡単にキスしちゃダメって言うの」少女は悲しげに言う。
「魔法がかかっているから?」と少年は尋ねる。
「そうかも」少女は絶好の機会を逃して俯く。
「身の丈よりも、このコンクリートの堤防は高い」青年はコンクリートの壁にさわって微笑む。
「けれども、津波は防げない」と事実を述べる。
すると静かに聴いていた人々の間にざわめきが起こる。
「津波が来たときは山の神社まで逃げるといい。そこまでは波はやってこないからね」青年は言う。
昼下がり。
お腹も満たされ、暖かな日差しが入りこむ空間。
連日の戦闘もあって、青年は眠っていた。
少女は足音に気をつけながら近寄った。
それでも青年は起きなかった。
深い眠りについているのだろう。
少女は軽々しく、手のひらを指先でつつく。
「起きてください」と声をかけても無駄だった。
キスは口移しの愛だ。
これ以上分かりやすい愛情表現はないだろう。
それなのに僕がキスしようとすると、君は逃げる。
「キスは本当に好きな人しかしちゃ駄目なんだから」と理由をつける。
「僕は君のことを本当に好きだよ」すると君は赤面して「証拠がないから駄目」と言う。
だからキスしたい。
君に「大好きだよ」と耳元に囁き、頭を撫でる。
誰にも内緒の恋人同士だった。
僕は君が好きだから、素直に言葉にしているだけだ。
それなのに、君はくすずったそうに笑みを浮かべる。
それがふんわりとしたオムレツのようで美味しそうだった。
そろそろ次のステップに進みたいと思ってしまう。
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