忍者ブログ
「 140文字の物語 」
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

久しぶりに地元に帰ってきた。
ますます過疎化が進んで、シャッターを閉めている店も多かった。
子どもの頃、寄り道していた駄菓子屋も屋根が朽ちていた。
剥げたペンキが胸に来る。
もう想い出の中にしかないのだと思うと辛い。
スーツ姿で歩き回っていたら目立ったようだ。
視線を感じる
PR
一日が24時間しかないのがいけない。
どうしても時間に追われる。
仕事が終わって携帯電話を確認すると、メールと着信履歴でいっぱいだった。
これを返していくのかと思うと、うんざりとする。
仕事以上に面倒なことだった。
だが返さないともっと面倒になることは分かっている。
他人からよくのんびりとした性格だと言われる。
私がのんびりしているんじゃなくて周りがせっかちなだけ。
私は私なりのペースで過ごしているだけ。
そんなに急いで、毎日つかれないのかなぁと思う。
あんまり急いでいると他人のさりげない優しさを見落としてしまう。
だからこれで良いの
天真爛漫な少女は知らない。
曇りのない笑顔がどんなに少年にとって救いになっているのか。
今日も楽しげに少女は笑いかけてくる。
それが尊い宝物のように、少年の心に仕舞われる。
雲雀のように少女が少年の名を呼ぶ。
少年の心が弾む。
このまま時が止まってしまえばいいのに、と思う。
太陽のように明るい少女だったから、いつでも幸福だと思いこんでいた。
真夏の太陽のように傍迷惑な明るさで、いつも傍にすり寄ってきた。
それに困惑しながら、徐々に受け入れていった。
変化していく自分に途惑いながら、月日を過ごした。
だからこそ、想いを遂げた日は記念日となった
予定調和のハッピーエンドが待ち受けているのだろうか。
青年は神剣・神楽を握る度に思うようになってきた。
敵【同胞】の命を奪うことに躊躇いがなくなった。
無感情になっていく己が恐ろしかった。
それでも少女の笑顔を守るためなら頑張れるような気がした。
今日もヘアゴムで髪を結ぶ
そっと頬を撫でたそよ風が火照った体に心地よかった。
見上げれば、大きく膨らんだ月が晧く夜空を支配していた。
先ほどまでの喧騒が嘘のように静かだった。
青年は神剣・神楽の柄を握り締める。
わずかな律動が体を癒してくれる。
痛みが速やかに引いていく。
ヘアゴムを外し、髪を解く。
満身創痍な青年が呟いた。
隣を歩いていた少女はそれを聴き落とした。
不吉な感じがして、内容を知りたいとは思わなかった。
訊ねたところで独り言だと片づけられてしまうだろう。
青年は秘密主義だ。
こちらを思いやってのことだと解っているから、零れた台詞を聞けなくて良かったと思う
電車内は混雑というほど混んでなかった。
ラッキーなことに座ることができた。
短い眠りに就こうと目を閉じようとした瞬間、お腹の大きい女性が危なげな歩調で歩いてくるのが見えた。
普段だったら目を瞑ってしまうところだが、勇気を出して立ち上がった。
「良かったら、どうぞ」と言う
青年の額には汗がにじんでいた。
肌にふれると熱い。
熱が下がる気配がない。
それに少女の心はかき乱される。
少女はタオルで青年の額の汗を拭う。
こんな時、自分はちっぽけな存在なんだと少女は痛感する。
熱で苦しむ青年を見ているだけしかできない。
早く熱が下がって欲しいと願う。
海には妖艶なニンフがいる。
船乗りたちを誘う歌声に海は荒れる。
抗うことの出来ない魔力に富んだ歌声に、一人、二人と冥い海の中へと身を投じていく。
甲板に残った少年は必死に耳を塞ぐ。
一度でも聴いたら戻れなくなる。
船は荒波にもまれながら、沈んでいこうとしていた。
誰にでも大なり小なり秘密があるものだ。
それを暴くのはマナーに反する。
過去のことを知るよりも、未来を語り合う方がずっと健全だ。
彼女が歩いてきた道は平坦ではなかっただろう。
ちょっとした時に出る秘密の欠片がそれを告げる。
転がる秘密の残滓に今日も気づかないふりをする。
初めてのキスは海が見える公園だった。
他愛のない話をしていた。
会話が途切れた瞬間、キスされた。
ふれるだけのそれに、胸がきゅんと締めつけられた。
「好きだよ」と彼は言った。
何人の人とこういう時間を過ごしたのだろうか。
上手なキスにドキドキしながら、考えないふりをした。
昔からキスには魔法がこもっているって言う。
眠り姫はキスで目覚めたし、野獣はキスで本来の姿に戻った。
だから簡単にしてはいけないってママが言う。
本当に好きな人にしか、してはいけないって。
好きかどうか分かる前にしたら、本当に好きかどうか分からなくなってしまうから。
目を閉じれば恐怖が襲いくる。
怖くて、独りでは寝ることができない。
少女は青年の寝室の襖を開けた。
予想に反して青年は起きていた。
「眠れないのか?」という問いに少女は頷いた。
「横になった方がいい」青年に勧められるまま、布団にもぐりこんだ。
そっと、青年の指に指を絡める。
PREV ← HOME → NEXT
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH