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「 140文字の物語 」
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節くれた指先が薔薇を手折る。
笑い方を忘れた主の下に届ける。
主は今日も窓辺に佇んでいた。
薔薇を差し出すと主は手に取る。
「お前だけは変わらないのね」
吟遊詩人であれば気の利いた言の葉を綴れるだろう。
けれども戦場しか知らない武士である自分には返す言葉が思いつけなかった。
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墓地はお線香の匂いがした。
生温い風に乗って鼻をくすぐる。
少女が上目遣いで、少年の指を指先でつつく。
「ねぇ何か話してよ」と少女が言った。
「何かって何を話せばいいの?」少年は質問をした。
「何でもいいわよ」少女の声が震えていた。
「じゃあ、怪談でもいいの?」少年は尋ねた
-
「お元気で」と手を振ってくれた君。
無性に抱きしめたくなって荷物を放り投げた。
走って小さな背を抱きしめる。
「卑怯ですよ」と君は涙混じりの声で言った。
「本当は最後まで笑顔で見送るつもりだったんですよ」と君は言った。
どうしてこんな愛しい存在を置いていけるのだろうか。
巻き込まれた当初は面倒事だと思った。
神剣・神楽に選ばれたといわれても嬉しくなかった。
世間知らずの少女を放り出すこともできずに受け入れた。
それも今は思い出になってしまった。
毎夜、繰り返し行われる命のやり取りにも慣れてきた。
中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結ぶ。
少女は何をするのも、嬉しそうだった。
近所の公園に花見に来た。
小さな公園だから、出店などない。
ベンチに腰かけ、少女特製のお弁当を食べる。
平和だなとしみじみと思う。
ほんのつかの間の休息だと分かっている。
神剣・神楽を手にしている以上、戦いは避けられない。
考えたくはない
首にかけられたメダルの重さに、ここまで頑張ってきたことが無駄ではなかったと思い知る。
今は晴れ晴れとした気分でメダルに触れる。
誰よりも努力をした。
練習は決して楽なものではなかった。
途中で投げ出したい気分になったこともあった。
回り道をして手に入れた
青年は中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結ぶ。
それはこれから始まる戦闘のためだと少女は知っていた。
儀式のような習慣だった。
どうして青年は髪を切らないのか疑問だった。
願掛けをしているのだろうか。
それとも理髪店に行くのが面倒なのだろうか。
直接訊くのがはばかれて謎のままだ
些細なことで口論になった。
それ以来、口を利かなくなった。
こうなったら我慢勝負だ。
先に折れたほうが負け。
そんな日々が続いて、このまま離れ離れになるのだろうかと思った。
それが嫌だったから、謝った。
すると彼は優しく、両手で私の両手を包む。
温もりが伝わってきて涙が零れた
空は鮮血のように赤く染まっていた。
それが怖くて、不安を掻き立てる。
まるで二人の未来を案じているようだった。
少女は泣き顔で、少年の指にしがみつく。
離れたくないといわんばかりにぎゅっと握る。
ぽろぽろと零れる涙に少年が困惑しているのが分かっていても涙が止まらない。
仕事が忙しいのは分かる。
「仕事と私、どっちが大切なの?」なんて馬鹿なことを訊きたくはない。
困らせると分かっているから、言葉選びは慎重になる。
本当はずっと一緒にいたい。
24時間365日、飽きるまで傍にいたい。
そんなことはできないけれど。
気持ちは最高潮になる。
-
君の願いは叶わない。
僕の願いも叶わない。
それは声をあげる前に、二重螺旋のように決まっていた。
こんなにも惹かれあうというのに。
僕たちはそれを言ってはいけないのだ。
ありふれた小説のように展開していく物語の扉を閉じる。
これ以上、ページをめくることはできない。
中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結ぶ。
神剣・神楽を持ち、玄関まで歩いていくと良い香りがした。
青年を待っていた少女から甘い匂いがしたのだった。
香水だと気づくのに時間がかかった。
少女にとっても特別な日なのだろう。
青年は玄関を開け遠くを見る。
昏い夜更けがやってきていた。
コンビニのコーヒーを飲みながら、ドーナツを頬張る。
本当はドーナツショップの椅子に腰掛けながら、まったりとしたい。
立ったままアイスコーヒーを口に含む。
酸味が口に広がる。
ドーナツの甘さを洗い流すようだった。
ふいに時計を見ると、昼休みが終わろうとしていたところだった。
独りでご飯を食べた。
いつもだったら向かい側に君がいるのに、今はいない。
居心地の悪さも手伝って、いつもより早く食べ終わった。
何をするのも一緒だったから、隣にいないというだけで不自然さを感じてしまう。
喧嘩なんてするんじゃなかった。
謝って許してもらおう。
携帯を開いた。
ドアを開けるとひんやりとした空気が頬をなでた。
汗ばんだ体にはちょうど良かった。
室内は薄暗かった。
ドアを静かに閉め、ソファに近づく。
部屋の主は眠っていた。
ちょっとやそっとでは起きないだろう。
仕方なく、指先を指先でつつく。
つまらない。
持ってきたアイスを開封してかじる
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