麗らかな日差しが教室を満たしていた。
昼ご飯の後の授業は古典だった。
定年間近な先生が机の合間を縫って朗読していた。
斜め前の男子生徒は堂々と居眠りをしていた。
机に突っ伏して見る夢はどんな夢だろう。
どちらにせよ気持ち良さそうに眠る姿が羨ましかった。
私には真似ができない
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いつからだろう。
君と別れる日を数えるようになったのは。
ずっと一緒にいられない。
そんな当たり前のことを怖いと思ったのは、いつからだろう。
さよならの日に笑顔でいられるように、一日一日を大切にするようになった。
二人が過ごす瞬間が優しい想い出に変わるようにと願う。
今頃、何をしているのだろう。
好きな人のことなら、些細なことでも気になる。
まだ眠っているかもしれない。
メールをしても迷惑じゃないかな。と不安になる。
まぶたを閉じても面影が過ぎって仕方がない。
朝はまだ早いというのに、気がかりで眠れない。
恋というものは人を不器用にする
ゲームに熱中していたら、家を出るギリギリの時間になってしまった。
急いで身支度をする。
トースターからパンを掴んで、鞄を背負う。
小走りになりながらパンを咀嚼する。
化粧は電車の中ですればいいかと、改札を通る。
急ぎ足で階段を駆け下りる。
定刻通りに到着した電車に乗りこむ。
買い置きのシャンプーを使い切ってしまった。
薬局に行ったけれども、いつものメーカーは売り切れだった。
売り場をうろうろして適当なシャンプーを選んだ。
いつもと違う洗いあがりに、値段で選んだことを後悔した。
他の薬局を回ってでも、いつものメーカーを探せばよかった。
彼は真面目だから覚えていてくれるだろうと思っていた。
どんな物をくれるのだろうか。
今年の誕生日は平日だから、夜しか会えないけれど精いっぱいお洒落をした。
彼は雰囲気の良いバーで小箱を差し出した。
そこには誕生石の指輪が入っていた。
サイズは左の薬指にちょうど良かった。
答えは要らない。
君の瞳に書かれているから。
僕がどんなに君のことが好きで。
君がどんなに僕のことを好きか。
言葉にしなくても伝わってきた。
だから、僕も視線を逸らさずに君を見つめた。
瞬きをくりかえす君の瞳がようやく笑ってくれた。
僕もつられて笑ったよ。
似た者同士だね。
少女は器用にリンゴをむく。
白い実を器に盛っていく。
「どうぞ」と差し出された。
美味しくてあっという間に一玉食べてしまった。
「もう一つ、むきましょうか?」という少女の問いに青年は頷いた。
神剣・神楽から選べられてから久しぶりの平穏だった。
これを守らなければと青年は思った。
胸にしみる優しい言葉。
肩の荷が下りるような温かい言葉。
お日様のような暖かな言葉。
みんな君がくれたんだ。
ずっと独りで走ってきたように思っていたけれども。
本当はそうじゃなかった。
君の言葉が僕を支えてくれたんだ。
そのことに気がついた時、僕の胸は君でいっぱいになったんだ
寝ぼけ眼でカーテンを開く。
窓を開けると爽やかな風が通り抜ける。
朝陽が昇るところだった。
空を染める美しさに言葉を飲む。
世界はこんなにも素敵なものだということを気づかされる。
朝焼けは室内を照らす。
天井を仰ぐ。
蛍光灯はいらないようだ。
しみじみとした朝の景色を見つめた。
君が幸せなら、それでいいよ。
悲しんだり、苦しんだりしているよりも、ずっといい。
僕がいない世界でも君が笑っていられるなら、それでいいよ。
地球の反対側で零れた涙を拾い集めて君に辿りついたんだ。
だから、その涙が枯れたなら、それでいいよ。
僕は僕の世界に戻るだけだから。
好きなものを好きといえることは幸福なことだ。
歳を重ねれば重ねるほど雁字搦めになる。
好きなものを好きといえなくなる。
胸の奥にそっと仕舞いこむ。
届くはずがないと諦めながら、ただ息を吸って吐いていくだけだ。
仕舞いこんだ気持ちを独り眺める。
もしもの可能性を考えてしまう。
「幸せになりたい」酔いに身を任せながら君は零す。
それを隣で聞きながら、僕はグラスを傾ける。
君は何度目かの失恋をしたばかり。
恋が壊れてしまった原因に気がつかない限り、君は幸せになれないだろう。
分かっていたけれども、僕は言わなかった。
君と過ごす時間が貴重だから。
携帯電話が鳴る音で目覚めた。
メールの件数にぎょっとした。
液晶画面の隅に表示された時間は待ち合わせの時間をとっくに過ぎていた。
完全な寝坊だ。
とりあえず起きた旨をメールにしたためる。
急いで身支度を整える。
駆け足で待ち合わせの場所に向かうと彼女は笑った。
寝癖を直される
鞄の中には折り畳み傘がいつでも入ってる。
でも、彼には内緒にしている。
雨が降り出したら一緒にカフェで時間つぶしをするから、黙ってる。
一秒でも長く一緒にいたいから、永遠の秘密。
窓の外を見て、雨を止むのを待っている横顔をジュースを飲みながら見蕩れる。
止まないで欲しい。