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「 140文字の物語 」
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不安で震えていた夜。
あなたは優しく、手のひらを両手で包んでくれたね。
それだけで安心した。
寂しさも苦しみも、全部解けていった。
でも、それも過去のこと。
クリスマスの明かりに照らされながら、独り街を歩く。
あなたがいない。
それだけでこんなに辛くなるなんて知らなかった。
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本に挟まっていた栞が風で吹き飛ばされた。
まるで空を舞うようにひらひらと流されていった。
慌てて追いかける。
着地地点には人影が一つ。
細い指が栞を拾った。「ありがとう」と礼をいうと「難しい本を読むんですね」と返ってきた。
「そうでもないよ」と褒められたことに照れる。
出会いは別れへのカウントダウンだ。
ずっと一緒にいられることはない。
いつか離れ離れになる。
それが今だっただけだ。
ホームで電車を何本も見送った。
目を逸らしつつ、指を握る。
冷たくなった指先を暖めることは、もうできない。
さよならを言う勇気すらなく、ただ手を握っていた。
街がクリスマスに彩られる季節。
吐く息も白く凝る。
マフラーに顔をうずくめながら、帰り道を急ぐ。
携帯電話で時間を見る。
着信履歴も、メールもなかった。
今日も彼は終電間際まで仕事だろうか。
体を壊さないか不安になる。
忙しいのはわかるから、声をかけづらい。
携帯電話をしまう。
深海に潜って、誰からも見られたくない。
どこまでも沈んでいって、海底で永遠の眠りにつきたい。
けれども現実的ではないから、我慢する。
深い眠りのまま、目覚めなければ良いのにと思う。
今日も目覚ましで起きながら、やってきた朝に落胆する。
毎日の中、磨耗していく精神を抱えて。
初めて会った時から他人とは思えなかった。
まるで昔から知っているような気がした。
遠い過去に出会っているような感じがした。
そんなはずないのに、そんなことを思わせた。
巡り会いという言葉がしっくりくる。
そっと、指先を両手で包む。
ぬくもりが懐かしいと感じた。
語りつくせない
目が覚めた。
傍らの温もりに安堵した。
心臓はうるさいぐらい早鐘を打っていた。
まだ起きるには早い時間だ。
健やかな寝息を立てる彼女に問いかける。
いつまで一緒にいてくれるのか。
目を静かに閉じる。
もう悪夢を見ないように祈るような気持ちで布団にもぐりこむ。
失われることが怖い
-
そこはどんなところですか? 
ここよりも居心地の良い場所ですか? 
そこに行きたいと言ったら、呆れますか? 
今、生きている世界はとても窮屈なんです。
ちっぽけな自分を抱えて生きていくのが、とても辛いのです。
だから、そこが素敵な場所なら行きたいと思ってしまうのです。
-
悲しいことがありました。
とても悲しくて、街のイルミネーションも目に入らないぐらいでした。
うつむきながら、家に帰ってきました。
誰もいない部屋でようやく息がつけました。
我慢していた涙がハラハラと頬を伝いました。
悲しいこと悲しいといえないのが辛かったのです。
毎日、新しい朝が生まれる。
不思議なことは一つもないけれども、君と過ごすと違って見える。
昨日の続きの朝でさえ、煌いて見える。
一瞬一瞬が愛しく思えるんだ。
この世界で僕は今日も君と生きていく。
繋いだ手を離さない。
これからもずっと温もりを携えていく。
少女は勝手に変化した。
蛹が蝶になるように、女性へと変わってしまった。
二人並んで撮った写真を切り裂く。
もう少女はどこにもいない。
置き去りにされた。
一緒に遊ぶことはないのだと思うと感傷的にもなる。
いつだってそうだ。
仲良くなった少女たちはこちらの思惑通りにはならない。
どんなに頑張っても白金色の頭髪の少年に敵わない。
手元に返却された答案用紙を見て少女は震える。
見本として張り出された答案用紙は完璧だった。
迷うことのない筆跡でつづられたそれに、少女は沈黙した。
次こそは自分の番だと心を奮い立たせる。
そうでもしなければやってられない。
口唇にルージュを乗せてみた。
鏡の中、ぎこちなく微笑む自分を見る。
全然、似合ってなかった。
青白い肌に、真っ赤なルージュが浮いて見えた。
ベタベタ感触がして、より苦手意識を冗長する。
まだルージュを塗るには早いようだ。
ティッシュで拭った。
ルージュは引き出しにしまった。
少女の言葉ひとつで心が揺れる。
先程まであった自信が揺らぐ。
他人にどう思われていても気にならないのに。
少女だけは違う。
振り回されているのに、意外と嫌じゃない。
この気持ちに名をつけるとしたら、恋心だろうか。
すんなりと受け入れられた。
それだけ少女の影響力は強かった。
カーテンを開け、窓ガラスを撫でる。
寒さで体が震えた。
思い切って窓を開ければ冷たい夜風が通り抜ける。
とろんとした眠気は吹き飛んだ。
吐く息も白い気温は肌を刺す。
空気は澄んでいて星々が綺麗だった。
いつまでも見飽きない光景だった。
どうして冬の空は綺麗なのだろうかと考える
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