人生初の告白は見事に玉砕した。
相手は学園の王子様。
私は平凡な女子生徒。
高望みだということは分かっていた。
相手も断るのは慣れているようだった。
優しく断られた。
それでも涙が止まらず、泣いていると幼馴染が物陰から現れた。
「なんてここにいるの馬鹿」と怒鳴ってしまった。
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外は肌を灼くほど太陽が輝いている。
立っているだけで、汗が噴き出してくる。
扇風機が回っている部屋は外よりはマシだったが、エアコンを入れたくなる。
その中、横たわる少女の枕辺で座っていた。
ぎこちなく、指先を両手で包む。
ひんやりとした指先に安堵した。
熱は下がったようだ。
彼は「好きだよ」挨拶代わりのように、毎朝言ってくる。
それに辟易しながら「私は好きじゃないから」と返す。
「心配しないで。一生かけて、口説き落としてあげるから」と不穏なことを言われる。
挨拶代わりの気持ちに応える義務はない。
だから、私は今日も同じ言葉をくりかえす。
ふいに意識が覚醒する。
目覚まし時計を見る。
数秒遅れで、目覚まし時計はメロディを流し始める。
それを止めて、ベッドから降りる。
カーテンを開ければ、弱々しい朝の光が部屋に差しこむ。
窓を思いっきり開ける。
湿気が混ざった空気が頬をくすぐる。
今日も暑い一日になりそうだった。
もう一生、逢うことはないだろう。
永訣の朝に気持ちはスッキリとしていた。
出逢えたことを後悔はしていない。
こうして別々の道を歩むことを知りながら、移ろう季節を数えていた。
サヨナラにくちづけをする。
何度も交わしたくちづけもこれでおしまいだ。
言葉の代わりに唇を重ねた。
生まれて初めて恋をした少年のように、君がいると僕の心臓は弾む。
純粋さは失ったと思っていたけれど、君と一緒だと違った。
映画を観て、カフェでパンケーキを美味しそうに食べる君を見て、僕は幸福に満たされる。
あまりにも君が大切だから、恋のステップはゆっくりと上ろうと思う。
生まれて初めて、人を好きになった。
大切にしたいと傷付けたいをいったりきたりする。
彼女に好きの刻印を残したいと思ってしまう。
そんな僕の感情を彼女はきっと知らない。
毎日、僕に笑いかけてくれる。
今度こそ大切にしたいと思う。
けれども傷付けてしまう。
そんな僕を許してくれる。
「仕方ない」という言葉を何度、飲み込んだだろう。
仕事が忙しいのは、彼のせいではない。
休日に逢えないのも、彼のせいではない。
分かっているけれども、納得できない。
もっと一緒にいたい。
もっと恋人らしいことをしたい。
今日も既読のつかないラインに、ためいきを一つつく。
嘘を重ねることに慣れてきた。
言えなかった言葉が心の底に澱のように溜まっていく。
胸の片隅には涙をこらえる子どもを飼っていた。
時折、表面上に現れては消えていく。
傷つかないというのは真実じゃない。
鈍いナイフで切りつけられるのと同じように痛む。
それでも「大丈夫」と笑う。
太陽に向かって咲く花だから、満月はその顔を知らない。
一度でいいから見てみたいと思ったのは、贅沢な悩みだったろうか。
月は欠けて真昼に顔を出した。
太陽の光にさらされて雲よりも存在感がなかった。
けれども、ひまわりが空を仰いで咲く様子を見ることができた。
月は満足した。
最後の日。
何も言えずに、黙って下を向いた。
どんな言葉を言えばいいのか分からなかった。
あまりにも君が大切だから、記憶に灼きついていて欲しかった。
次はないことは知っていた。
だから綺麗な想い出になって、キラキラと輝くのを望んでいた。
君はただ一人の人だから、大切だった。
君はいつでも「大丈夫」と笑う。
悲しい時も、辛い時も。
涙さえ枯れ果てた瞳で呟く。
いつかぽっきりと折れそうな心を抱えていることぐらい知っている。
だから、一緒にいたい。
君が孤独を感じる時も、苦しくてうつむく時も、傍にいて支えてあげたい。
僕にだってそれぐらいの力はある。
腕に不思議な感触がして、目覚めると少女の顔がどアップだった。
少女の目は笑っていなかった。
怒り顔で、腕を少女が指先でつついていた。
慌てて時計に目をやる。
どうやら寝過ごすところだったようだ。
「ありがとう」辛うじて朝と呼べる時間に起こしてくれたことに礼を言う。
君は空を仰ぐ。
本当は泣きたいくせに、意地っ張り。
涙を見せないように上を向く。
僕はそんな君の隣にいるのに、かける言葉ひとつ見つからない。
君の悲しみが立ち去るまで、傍にいることしかできない。
君の涙を受け止めきれることができればいいのに。
僕にはそんな力がないことが辛い
「UFOの写真、撮ったんだ」と自慢げに彼は写真を見せる。
スマホの液晶に画面にはぼやけた光が映っていた。
「確認できたら、UFOじゃなくなるんじゃない?」
と私が突っ込むと、彼は明らかに落胆した顔をした。
キラキラした瞳が「そっか」と残念そうに呟いた。