もっと素直になってよ。
君が僕のことを好きなのは、とっくのとうに知っているんだ。
僕の告白に頷いてよ。
そうしたら、僕ら最強の両思いだ。
何もかも捨てて、誰も知らない街で暮らそうよ。
身分や肌の色なんて関係ないよ。
二人の想いが通じ合っているだけで充分だ。
後悔する暇なんて与えないよ
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よくある政略結婚だった。
見目麗しい乙女は同じぐらいの階級の青年と婚約した。
青年は乙女に気に入られるように、花束を持ってご機嫌伺いに行った。
乙女は花を一輪、花束から抜くと花びらをむしった。
無惨にも美しい花は絨毯に散った。
明確に乙女はこの婚姻を拒絶する。
意思の証明だった。
僕と君は幼馴染み。
幼稚園の頃から一緒のお隣さん。
何をするのも一緒でどこへ行くのも一緒だった。
「好きな人ができたの」君はこっそりと打ちあけてくれた。
だから、僕も「協力するよ」と言った。
「本当?ありがとう」君の笑顔が眩しかった。
君が好きで、嘘をついた。
本当は邪魔をしたいのに
梅雨前の公園は活気づいていた。
楽し気な家族連れの中、輪から外れてベンチに座る少女に目が行った。
するとが満面の笑みを浮かべながら、腕を折れんばかり握られた。
「今は誰とデートしているのかな?」
「ごめん。そういうつもりはなかった」
久しぶりのデートだ。
彼女の機嫌を損ねたくない。
いつも可愛い可愛いと褒めてくれるけど、可愛い以上の言葉ってないの?
いつまでもお子様ランチ扱い。
もう結婚できる年齢なのよ。
妹のようなものって、不自然な関係になってきているの。
それを貴方は気がついている?
他にも好きだって言ってくれる人がいるのよ。
貴方だけの妹じゃないのよ
悲しいことがあっても、辛いことがあっても、笑っている。
本当は泣き出したいぐらい苦しいのに。
自分の感情を押し殺すことが得意になった。
我慢を重ねている君の痛みを知っていた。
それなのに見て見ぬふりした。
君が笑っていたから。
知らないふり上手くなったと思う。
強がる君を見つめながら
私が「寂しい」と言ったら、あなたも「寂しい」と山びこのように返した。
一緒に並んで夜空を見上げているのに、どうしてこんなに切なくなるのでしょうか。
どうしても埋められない孤独が二人を繋いでいるのでしょう。
だから、気持ちが呼び合うのでしょう。
繰り返される不思議な経験でした。
目覚ましの音が止まった。
僕はまだ目を瞑っていたのに目覚ましが鳴りやんだ。
それから傍らの存在を思い出した。
自分とは違う体温が気持ちよく寄り添っていた。
「朝なんて来なければいいのに」と君は呟いた。
それに僕は同意見だった。
でも眠りと目覚めの狭間で、君の言葉に答えられなかった。
ちょっとした意見の食い違いで口論になった。
せっかくのデートもそこで切り上げた。
楽しくない気分で我が家に帰った。
携帯電話が鳴るのを無視した。
どちらが悪い、というわけではなかったが完全に無視した。
それが恋の終わりだった。
自分の方から謝ったら違った未来が待っていたのだろうか。
「さよなら」の季節に君を想う。
別離は僕と君の関係をあっけなく打ち砕いた。
一緒にいられた時間はわずかだった。
それらは想い出という記憶に仕舞いこまれてしまうのだろう。
初めから分かっていた。
けれども、今度は違うと思いたかった。
何度くりかえしても慣れない感情に心を揺らされる。
どんなものにも必ず終わりがやってくる。
始まりとワンセットになったそれは時に幸福で、時に哀しくて、時に切ない。
いつまでも続くわけではない日々は、漠然とした不安を呼び起こす。
終わりを見つめて、毎朝目覚める。
振り返った時に確かに幸せだったと確認するために。
積み重なる時間に思う
今日は出会ってから1年の記念日。
久しぶりのデートだったから気合が入る。
珍しくスカートをはいて、香水をつける。
待ち合わせ時間通りの彼に飛び切りの笑顔。
今日は嬉しいことばかりだった。
別れ際、彼は遠慮がちに、指に触れる。
不思議に思っていると、左手の薬指に指輪をはめてくれた。
正論はいつだって人を傷つける。
悩み、苦しんでいる人に必要なのは正論ではない。
慰めや共感だ。
分かっていたけれども、乗り越えてほしかったから正論を口にした。
君は裏切られたという表情をした。
視線が痛々しくて見てられなかった。
その場限りの優しさで君を包みこめば良かったのだろうか
呼ばれているような気がする。
それなのに体は重く指すら動かせない。
無理やり瞼を開ける。
すると泣き出しそうな少女の顔が見えた。
「やっと、目を覚ましてくれた」と言った。
真っ白な天井がここがどこのなのか知らせる。
少女の涙を拭おうと手を伸ばす。
いつでも笑っていてほしいと思ったから
夏の炎天下だというのに、その手をつなぎたいと思った。
ふれそうでふれられない距離にいるのに、そのもどかしさに悪くないと思ってしまう自分がいる。
一緒にいられる時間は限られているというのに。
終わろうとしている季節に始まらない想い