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「 140文字の物語 」
月光が差しこむ部屋でゴミ袋を片手に君の残骸を捨てていった。
君はもう僕の元には戻ってこない。
それが分かっているから、涙が浮かぶ。
新しい恋を始めた君は、今頃幸せだろうか。
僕は悲しいばかりだ。
写真立ての中で笑っている君にハッとする。
付き合いたての頃の写真だ。
これも捨てるのか。
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かくれんぼで路地裏に二人して駆けこんだ。
鬼も見つけられないだろう。
小さくうずくまって並んで座る。
君が両手をあげる。
だから僕も両手をあげる。
君は嬉しそうに、両手のひらを触れ合わせる。
お互いに笑顔が浮かぶ。
「ここなら見つからないね」と君は小さく言う。
「そうだね」と僕も言う。
「宿題は終わったの?」
「明日の支度はできたの?」
「目覚まし時計はセットした?」
次々に訊かれて、げんなりとする。
心配をしてくれるのは嬉しい。
恥をかかないように気を使ってくれるのも分かる。
でも、めんどくさいひとたちだと思ってしまう。
もっと信頼してくれても良いと思ってしまう。
ここ数日の仕事量は半端でなかった。
残業をしても間に合わない。
削れていく睡眠に早く休日が来いと願う日々だった。
帰りの電車はガラガラで座れた。
最寄り駅まで眠ろうと目を閉じた。
居眠りしていると揺らされた。
起きたくなかったのに目覚めさせられた。
「降りる駅じゃないの?」と言われた
社会人になる前、コスメカウンターに飛びこんだ。
今まで化粧をしたことがなかった。
でも社会に出れば女が化粧をするのは当然なのだ。
学校で教えてくれればいいのに、と歯噛みする。
香水も扱っているのだろう。
良い香りがした。
コスメカウンターのお姉さんは親切で化粧品を紹介してくれた。
雲が覆う空。
月も星さえも見られない真夜中。
妙に生温い風が吹く。
出かけに見たDVDも良くなかったのだろう。
手が震える。
早く家の寝室に帰りたい。
それなのに同居人は「アイスが食べたいからコンビニに行こう」と言う。
恐る恐る、同居人の手のひらに触れる。
振り払わないで握り返してくれた。
愛犬の呼吸が荒々しいものになった。
家族中が見守る中、愛犬は目を閉じた。
徐々に冷たくなっていく体温に、涙が零れた。
私が生まれた時にやってきた犬だった。
散歩は面倒だったが、いつも一緒だった。
「幸せだった?」伏せた目に尋ねる。
姉が「きっと幸せだったんでしょう」と言ってくれた。
何でも言い合える幼なじみだった。
それがほんの少しの価値観の相違で口論になってしまった。
帰る方向は一緒だから学校から家まで無言を貫き通さなければならないのか。
そう思ったら謝罪の言葉が出た。
幼なじみも謝った。
これでいつも通り。
仲の良い幼なじみ同士だから、そうなると話が弾む。
生まれて初めて彼女というものができた。
どこがいいのか分からないけれども、告白したらOKがもらえた。
そんな彼女と初デートだ。
無難に映画を観て、カフェに入るというスケジュールだ。
自分のモノよりも小さな手を握りたい、と思ってしまう。
映画館の中で彼女がそっと、俺の指に触れる。
いつもの帰り道に新しい雑貨屋がオープンしたようだ。
可愛い物が好きな彼女が「寄りたい」と言ったので「良いよ」二つ返事で返した。
彼女は熱心に店内を回る。
雑貨を見つめる表情にほんの少しの、嫉妬をした。
付き合いたてだから、そんなに見つめてもらったことはない。
雑貨が羨ましかった。
くっきりとした輪郭を持った月が天頂にあった。
目覚めるのには、かなり早い時間だった。
目が覚めてしまったので夜風を浴びたくて外へ出た。
虫が鳴いていた。
二度寝はできそうになかった。
どうしてあんな悪夢を見たのだろうか。
背中に汗がにじんで寝着にぺったりと貼りついている。
月を仰ぐ。
冷酷と近隣国に知られる皇帝には一つの秘密があった。
妃だけが知っている小さな秘密だ。
書類整理をしている皇帝の元に妃がお盆を手に訪れる。
妃が扉をノックすると「入れ」と短く返事が返ってくる。
お盆の上には焼き立てお菓子。
皇帝は甘党なのだ。
手を伸ばしてお菓子を噛む。
皇帝は微笑む。
夢を見た。
人間の一生を早回しにしたような夢だった。
まるで自分じゃないような、もう一人の私が生きたような感覚があった。
泣き顔で、手のひらを軽く握る。
もう一人の私は悲しいぐらい一生懸命に生きていた。
今朝はなかなかベッドの上から起床できそうになかった。
どうしてそんな夢を見た。
幸せになって、なんて嘘だよ。
世界で一番不幸になって欲しい。
僕の心を傷つけたのだから、それぐらいは安いはずだ。
でも、心のどこかで不幸になって泣く君を想像して、胸が痛む。
素晴らしいほどの矛盾だ。
魅力的な君は、僕の気持ちを知らずに幸せになるんだろうな。
未来は簡単に描ける。
「ねぇ、暇?」同居人が声をかけてきた。
特に用事がない僕は「暇だよ」と答えた。
すると同居人の顔が輝いた。
「コンビニに行かない?」同居人は言った。
「何か欲しいものがあるの?」僕の言葉に「ナイショ」と笑う。
コンビニに着き同居人はアイスコーナーに真っ直ぐに向かった。
財布代わりか
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