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「 140文字の物語 」
彼が待ち合わせの時間に来ることはない。
いつでも遅れてくる。
今日も遅い。
でも不思議と彼が遅刻をしても怒ったりしなかった。
待っている時間、彼のことを考えているだろうか。
どんな服で、どんな表情で現れるのか、想像するのは楽しみですらあった。
彼は今日はどんな言い訳をするのだろう。
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残業しても、家に持ち帰っても、一向に終わらない仕事。
気分転換にいつもより早く起きて、学校に向かった。
早朝と呼んでもおかしくない時間のせいか、職員室はガラガラだった。
赤色鉛筆で採点をする。
「先生、早いですね」新卒の教師が言った。
「先生こそ、いつもこの時間ですか?」と返す。
誰にも知られてはいけない恋人同士だった。
大きな通りで手を繋ぐのはもちろん駄目。
本当は手を触れ合わせたいのに。
私よりも大きな手を握りたいのに。
いつもの通学路。
思いついたら早かった。
彼を強引に路地裏につれこんでいた。
嬉しそうに、手のひらを触れ合わせる。
彼の方も分かったようだ
よくある修羅場というものだろうか。
僕と君が付き合ったのは間違いだった。
それを再確認しただけだった。
僕は君が好きだった。
出会った時からずっと君だけを見つめ続けていた。
君が「好きだ」と言ってくれた時は最高の幸せだった。
「いつから嘘だってわかってた?」君は尋ねた。
「最初から」
目覚まし時計が鳴って目覚める。
ベッドから降りてカーテンを開ける。
強雨は寝ている間に去ったようだ。
爽やかな朝だった。
いつものように学校に行く準備をして家を出る。
アスファルトのところどころに水たまりができていた。
それをよけながら学校に向かう。
今日も君におはようを言うために。
木陰の下にいても暑い。
日差しの下に出たらもっと暑いのだろう。
容易に想像できた。
汗が噴き出して肌にシャツがくっつく。
不快な感触がした。
そんな中君がやってきた。
日差しを知らない白い肌の君は涼しそうだった。
どんな用事があってきたのかそれに引っかかる。
また無理難題を言うだろうか
旅行は旅行でも特別な旅行だ。
旅行の前に『新婚』とつく。
二人で旅行するのは初めてではないが、それでもときめく。
君は上目遣いで、僕の腕を両手で包む。
「どうかしたの?」と僕は訊く。
「幸せだなぁ、と思って」と君ははにかむ。
それすら愛しくて、僕は君の額にキスをした。
君は俯いた。
目覚まし時計が鳴った。
傍らのぬくもりがもぞもぞろと動いた。
「今日はまだ眠っていて良いよ」僕は優しく声をかけた。
しかし君はぱっちりと目を開けた。
「朝なんて来なければいいのに」と君は不満げに言う。
「そうしたら、ずっと一緒にいられる」君は枕を抱えて言った。
子供っぽい仕草だった
彼は何気ない仕草でスマホを取り出した。
デート中はお互いを見つめあおう、という約束だった。
それなのにスマホを見つめている。
悲しくなったが、重要な用事が舞いこんだのかもしれない。
ぐっと堪えた。
スマホの先の相手を知りたくない。
私よりも魅力的な存在だと知ってしまっているから。
青年の傷跡を少女は指先でなぞった。
「ごめんなさい」少女は涙目で言った。
確かに少女を守るためにできた傷だったが、光栄だと思っていた。
青年はどう答えたらいいのか迷った。
秒針が一周するほど沈黙が漂った。
「君を守れて嬉しい」青年は微笑む。
少女は大きな目から大粒の涙を零した。
僕は道行く女の子を見ていた。
景色を見ているのと同じだと思っていた。
それなのに君は恥ずかしそうに、指を折れんばかりに握る。
「どうしたの?」と僕は尋ねた。
君は答えなかった。
「もしかして目移りするかと思った?」と僕は重ねて尋ねた。
「デート中ぐらい見てほしいの」と君は呟いた。
「落とし穴にご注意を」シルクハットをかぶった紳士が言った。
そこで夢から覚めた。
どんな落とし穴が待っているのだろう。
できれば落ちたくない。
今日から高校生活が始まる。
新入生として学校に入る。
体育館に集められて入学式が行われた。
生徒会長の挨拶にやられた。
見事、落とし穴に落ちた
文化祭のミスコンに推薦された。
可愛く産んでくれた両親の遺伝子に感謝する。
人間関係は第一印象で決まる。
その点、可愛い外見を持って生まれた自分は得だと思う。
いつでも人の輪に入れて、ちやほやされる。
幼稚園の頃からずっと続いている。
学園生活は快適だった。
女の子は可愛くないと損だ
街は霞がかっていた。
1メートル先も見られない。
不安になった幼なじみが「手を繋いでいい?」と訊いてきた。
子どもの頃に戻ったようで僕は少し照れる。
「いいよ」と幼なじみに手を差し出した。
「ありがとう」幼なじみは俯いた。
勝負に買ったようで、心の中で嘲笑した。
気づかれてはいけない
「一緒にいなくなってあげるから、許してね」屋上で君は微笑んだ。
僕は無言で頷いた。
生きにくい学園生活だった。
家にも、学校にも、落ち着ける場所がなかった。
偶然、君と図書室で出逢わなければ、一人で飛び降りたことだろう。
最期の時でも、誰かがいるということは力強いことだった。
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