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「 140文字の物語 」
本当は一人で心細かった。
できれば、ずっと一緒にいたかった。
素直になれない私は「大丈夫」と笑顔を作った。
君は「それならいいだけど。じゃあ、また明日」と言った。
簡単な嘘くらい見抜いてよ。
分かれ道で君と離れ離れになる。
私は君の背中を見送る。
弱音が零れそうになるから上を向く。
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夕方の図書室は貸し切りだ。
少年はいつものように文字を追っていた。
少年が本を読むのは、少しでも現実から離れたかったからだ。
バカなクラスメイト、成績を気にする両親。
生き辛い世の中だった。
そして、図書室通いをするもう一つの理由。
カウンターに座る少女の心を盗む方法を検討中だ。
幼なじみは警戒心が強い。
私がぼんやりしすぎなのかもしれない。
そんな私を心配してくれているのかもしれない。
何もかも一緒にしているせいか、恋人同士という噂が立った。
「付き合っているんでしょ?」クラスメイトが訊いた。
否定しようとしたら「誰のものだと思いで?」と幼なじみは言った
差し出せるものは何ひとつもなかった。
ままごとのように絡んだ小指だけが、証拠の恋だった。
未来への約束も蝋燭の灯のようだった。
期限付きの恋は終わりが見えているからだろうか、花火のように輝いていた。
退屈な永遠よりも刹那の一瞬を選んだ。
瞬きすら惜しい二人の時間。
砂のようだった。
本の世界に没頭していたら、グラスの中の氷は溶けていた。
すっかり味が薄くなってしまったコーヒーを飲む。
今度は氷抜きで用意しようと思った。
本を読み始めると、なかなか中断できない。
結末が知りたくなって、次から次へとページをめくってしまうのが原因だ。
分かっていてもやめられない。
結界が解けていく。
夜明けが近い。
仄かに太陽の気配がした。
神剣・神楽を布に包んで、用意しておいたコートを羽織る。
結界の外で待っていた少女に微笑む。
少女は大きな瞳に涙をたたえて、青年に抱きついた。
待っていてくれている人がいる。
それだけで戦う理由になる。
痛みに耐えながら思った
少女は不満そうだった。
歩く度に、ふれては離れる手。
きっと手を繋ぎたくても繋がない少年に、苛立っているのだろう。
こういうことは男性側からしてほしい。
そう思っているようだった。
少女は仕方なく、手のひらを指先でつつく。
少年は察したのか、少女の手を握った。
少女は顔をそむけた。
天気予報が嘘をついた。
今夜は晴れると言っていたのに雲が広がっている。
これでは星が見えない。
双眼鏡を持ってきたのに意味がなくなってしまった。
スーパーの広い駐車場で立ち尽くす。
呆然としていると自転車を押しながら君が歩いてきた。
「これじゃあ、見られないね」と困ったように言う。
いくつ歳を重ねても、君は自由な世界を持っていた。
いや、年を追うごとに君の世界は広がっていった。
それが僕には羨ましかった。
僕の世界は年々小さく、狭くなっていくばかりだ。
「君の世界を僕にもわけて」と言うと、君はきょとんとした目で僕を見た。
それから満面の笑顔で「いいよ」と言う
アラームが鳴っている。
そろそろ布団から出なければ。
遅刻はしないが、朝の支度でバタバタすることになる。
暖かな布団の中で、微睡みたい。
そんな気持ちがあるがアラームが邪魔する。
勢いをつけて起き上がる。
眠気覚ましに窓を開く。
朝特有の冷たい爽やかな風が室内に入りこむ。
目が覚めた。
交替要員がいないという戦況は、どうしても不利だ。
敵も連携を組んで戦いに訪れることがある。
まだ様子見程度なせいか、生命の危険を感じるほどではなかった。
が、それも神剣・神楽があるおかげだった。
妖刀がなければ死んでもおかしくない怪我を負うこともあった。
それでも戦うと決めている
世界は汚いものや、醜いもので構成されている。
だから、君は綺麗なままでいてほしい。
少ししかない貴重な美しいものだけを見ていてほしい。
他ならぬ君だから。
醜悪なものを見すぎて、心が曲がってしまった僕を救ってくれた。
まだ世界は捨てたものではないと教えてくれた。
そんな君だから。
たまたま隣の家に住んでいるからと、何かと巻きこまれるのは面倒だった。
確かに生まれる前からのお付き合いだ。
両家の仲は良く、双子のように育てられた。
おそろいのスモッグを着ていた頃も、ランドセルを背負っていた頃も、制服を着る頃も一緒だった。
それなのに幼なじみに秘密ができた。
ずっと幸せになる方法を探していた。
どれだけ満ちても欠ける月のように、幸せは長く続かなかった。
麻薬のように一度、幸せを知ってしまうと元には戻れない。
飢餓感から幸せを求めて、手に入れようと躍起になる。
そんな時間を過ごしていて、ふいに気がついた。
なんだ、答えはここにあった。
今日から大人の仲間入り。
久しぶりに会った友人たちも成長していた。
人生の節目を迎えた。
式典が終わった後、呑み屋で同窓会を兼ねた祝いがある。
着慣れない振袖に身を包みながら、今後のことに思いをはせる。
鼓動は高鳴り、期待が大きく膨れ上がる。
これからは子供扱いされないのが嬉しい。
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