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「 140文字の物語 」
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喉から手が出るほど、欲しかった。
どんな手段を使っても、手に入れたかった。
「好きだ」と言えば断れない。
青年の地位がそれを許した。
乙女を自分のものにした。
長い片想いは執着に変貌をしていた。
やっと手に入れたのに嬉しくなかった。
嫉妬は肥大化し、乙女を誰にも見られないようにした。
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「最近、冷たいよね」少女は言う。
「そうかなぁ?」少年はスマホの画面を見ながら言った。
「一緒に帰らなくなったし」少女は少年の背中にまわる。
「それは部活が違うからだろう」少年はスマホの操作をやめない。
「構え!構え!構え!!」少女はスマホを取り上げる。
ようやく少年は少女を見た
僕と君との共通点は天体観測が好きなこと。
流れ星を追いかけ、点と点を繋いで星座を見つける。
誕生日におねだりして買ってもらった望遠鏡を見せると君は喜んだ。
小さなレンズから見る星は輝いていた。
いつもより近い距離に緊張しながら星を見上げた。
星影に包まれる君が美しいと再確認した。
昔は簡単に言葉にできた。
それこそ天気の話のように。
テストの結果のように。
自覚したら胸いっぱいになってしまって言えなくなってしまった。
伝えることのできない一言が心の奥底でわだかまる。
いつか昔のように言えるようになるのだろうか。
変質してしまった感情はそれだけじゃ物足りない。
同級生の葬式に参列した。
同じクラスだった、という接点しかない相手だった。
何もこんなに早く人生を終わらせなくてもいいだろう。
そんなことを考えながら帰路についた。
清めの塩を振って玄関をくぐる。
香典返しの袋の中に、手紙が一通入っていた。
同級生の肉筆で書かれたラブレターだった。
僕と君の物語をもう一度、始めよう。
今度は違う筋書きで、違う結末を用意しよう。
あの日、あの時、出会ったところから開始しよう。
僕も君を知らないし、君も僕を知らない。
それなのに、どうしようもなく心が惹かれた。
奇跡のような再会で、二度と離れないと心の中で誓った。
そんな場所から。
神剣・神楽に出会う前は、無目的に生きていた。
ありふれた日常をだらだらと過ごし続けていた。
少女と出会い、神剣・神楽の使い手になって、生活は一変した。
情に流されたと言えばそうだろう。
それでもどこにでもある日常を捨て去ることを選ぶのには充分な出会いだった。
もう後戻りはできない
いつもはテーブルに置かれないスマホ。
食事中は会話を楽しみたいから、と言った彼が素敵だった。
それが理由で私もスマホを仕舞うようになった。
食事も終わる頃スマホが振動した。
「ごめんね」と彼はスマホをに触れる。
LINEだろうか。
ほんの少しの、嫉妬をした。
「無事子犬が産まれたみたい」
今日あった嬉しいこと、楽しかったこと。
まとめてメールを作成する。
美味しかったデザートの写真を添付する。
出したメールは、すぐさま自動返送される。
届くことのないメールを毎日、作成する。
受取人はすでに不在だ。
あの日、言えなかったこと。
それが心残りで今はいない人にメールをする。
こちらから何通、手紙を出しただろうか。
手紙を出したら、すぐさま返事が着ていたのに。
ある日を境に、ぷっつりと連絡が途絶えた。
メールアドレスも知っているが、手紙を催促したような気がして一歩が踏み出せない。
真面目で繊細な人だから、また涙にくれる日を送っていないといいのだけど。
裏通りにあるバーの扉を開けたら、酒と煙草の匂いがした。
「こんなところまでやってきて。おチビちゃん、ママならいないぜ」
常連客と思われる一人が近づいてきて、肩に触れる。
踵で足の甲を踏み、顎に頭突きをお見舞いする。
仕上げに股関節めがけて蹴り上げる。
「子供をなめちゃいけないよ」
私のどこが悪かったの。
あなた一緒に笑いあえたじゃない。
息がぴったりな恋人同士だと思っていたわ。
私の嫌なところを教えてよ。
直すから。
お願い。
もう一度好きになって。
私にはあなたしかいないのよ。
あなたと別れて一人でやっていくなんて無理なのよ。
強がられるのもあなたがいるからよ。
八百万の神々だって叶えてくれそうにない。
それでも諦めずに神社仏閣をめぐる。
津々浦々をまわって願うことは一つ。
愛する人の生命がかき消えないように。
国歌じゃないけど、さざれ石の巌になりて苔が生すまで一緒にいたいと思ってしまう。
それぐらい大切な人なのだ。
だから願う。
キッチンから包丁の音がする。
鼻をくすぐるいい香りに青年の胃が鳴った。
「おはようございます。寝癖がついてますよ」料理をしていた少女が笑った。
「顔を洗ってくる」青年は一人ではないことをかみしめる。
進む道は暗闇に光の一等星のようだとも。
鏡の中に映った自分は、幸せボケしていた。
遠く離れている君へ。
出せなかった手紙は何通目になるだろう。
君のことだから元気にやっていることだろう。
独りで生きていくのには、まだ慣れないや。
隣に君がいないことに、淋しさが募る。
夢を追いかけて旅立った君に、弱音を綴った便箋を見せることはできない。
いつまでも君を応援している
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