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「 140文字の物語 」
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唐突に後ろから抱きしめられた。
少女の心臓はビクンっと飛び上がった。
生まれて初めての恋愛中だから、こういう時どうすればいいのか分からない。
力いっぱいではなく、壊れ物にふれるように優しいふれ方に頬も熱くなる。
「離してあげられなくてごめんね」
少年の声が耳元に吐息ごとふれあう。
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今日のお菓子はマフィン。
チョコチップが入っている特製だ。
青年の元に少女は運んできた。
「また抜け出してきたのですか?」青年は少しあきれ顔になる。
「あら、だって美味しいものは二人で食べたほうがより美味しいでしょ」
少女はマフィンを渡す。
青年は二つに割って大きな方を少女に手渡す
ドラマも佳境だ。
主演女優が涙ながらにセリフを吐く。
「もう一度好きになって」
切ない名演技だったが、恋人役は「嫌いにはなれないけど、好きにはなれない」と返答した。
そして泣く女優を置いて去っていく。
脚本家は何を思って書いたのだろうか。
二人の純愛が売りのドラマだったはずだ。
「好きです。付き合ってください」見ず知らずの男性に言われた。
嬉しいと思うよりもドン引きしてしまった。
「初対面ですよね」私は勇気を奮って言った。
「話しかけたのは初めてです」男性は笑う。
少し幼い印象があってドキッとした。
「大丈夫です。一生かけて、口説き落としてあげるから」
「告白しても良いかい?」青年は穏やかに尋ねた。
「え。ちょっと、待ってください」少女は慌てる。
「いつなら良い?」青年はのんびりと訊く。
「いつならって。そういうんじゃなくて、心の準備というものが」と少女は赤面する。
「冷蔵庫のプリンを食べたのは俺だ」青年は言う。
「紛らわしい」
少女との共同生活にも慣れてきた。
家事全般を少女がこなしてしまうために青年は暇になってしまった。
これといった趣味を持っていないのが仇になった形だ。
束の間の平穏だということを肝に銘じなければならない。
神剣・神楽がある以上、戦いは避けられない。
同胞殺しの妖刀が血に飢えている。
「ご注文はお決まりでしょうか?」視線をレジから客に移す。
「アイスコーヒーMサイズで、持ち帰りで」高校生ぐらいだろうか。
注文に慣れていた。レジを打ちながら、自分と比べてしまう。
客が笑ったから、営業スマイルを浮かべた。
「お待たせしました」
「お姉さんもお持ち帰りさせてくれる?」
今日、彼と別れた。
思い出を残して置きたくはないから、彼を連想するものを捨てていく。
最後に残ったのは携帯電話の写真だった。
砂浜に枝で書かれた『I love you』の文字を見て涙を流す。
どうして最後まで一緒にいられなかったのだろう。
永遠を信じていたのに破られた。
フォトをDeleteする。
「お願い」親友が頭を下げる。
「うちの弟、本当に勉強がヤバいんだ」家庭教師の依頼だ。
「教えるなんて私にはできないよ」
消極的に断る。が、親友の粘り勝ちとなってしまって、今日を迎えた。
「新しい先生だよ」親友はそう言うとドアを閉じた。
「子供をなめちゃいけないよ」不敵な笑顔をする
いつまでも続くかのような殺し合い。
今晩も神剣・神楽を手に家を出る。
無言で少女はついてくる。
足音だけが響く。
神剣・神楽の分だけ重たくなった右手に、溜息をついてしまった。
少女は「すみません」と謝った。
下を向いているから悪い。見上げればまばらな星。
「必ず帰ってくる」と言った。
年頃になったら妃を持つものだ。
生まれてきた頃からの幼馴染たちは婚約者候補だった。
それが皆、家格にあった男性の元に嫁いでしまった。
家臣たちは大慌てで候補を絞り出す。
その中出会った娘は「あんたとは結婚しないよ。」と訛りのある声で言う。
「素直じゃないとこも可愛くてよろしい。」
「ここじゃない場所に行きたいの」少女は呟いた。
それ耳にした少年は速かった。
籠の鳥である少女を外の世界へ連れ出した。
喜んでくれるだろうと少年は単純に思っていた。
少女は日に日にやつれていく。
そこで初めて選択が間違っていることを知った。
「帰りたい」少女の声は後悔が滲んでいた。
見目麗しく、心まで美しい。
外交の切り札になるような王女がいた。
城の中で絹の織り物の中でくるまれている。
それはまるで鎖のように。
夜風すら当てぬように大切大切に育てられていた。
王女は我が儘を言わずに、ポタージュのような時間の中で微睡んでいた。
王女は一つ一つを慈しむ人だった。
カップルというものは往々にして迷惑なものだ。
二人の世界を構築して、周囲を巻きこむ形になると手に負えない。
それでも恋というのは尊いものであるから、止めやしない。
「あそこに悩んでいる人がいるわ」
「君は本当に優しいね」
カップルが近づいてくる。
「黙れバカップルが」私は言った。
寄せては返す波がまるで揺り籠のようだった。
波打ち際を歩きながら、潮風を受ける。
ふいに胸の奥から熱いものがこみあげてきた。
溢れてきたものは止めることはできない。
ポロポロと涙を零す。
泣き顔で、手のひらを握り締める。
海まで連れてきてくれ人は私の頬を撫でる。
私は子供のように泣く
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