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「 140文字の物語 」
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テーブルの上にお弁当箱が鎮座していた。
走れば、まだ間に合うだろう。
エプロンを外して、お弁当箱をつかむ。
日陰を選んで歩いている背中が見えた。
名前を呼ぶと不思議そうな顔をして振り向いた。
お弁当箱を見せる。
「もう忘れ物しちゃ駄目だよ?」と言うと「ありがとう」と額にキスされた。
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せっかくの休みが揃ったというのに、貴方の視線はすれ違う女の子を見ている。
久しぶりのデートだからと買ったばかりのワンピースを着てきたのに。
褒めてもくれなかった。
もう飽きられたのかな、そんなことを思ってしまう。
貴方の視線を独占したい。
ここにこんなに可愛い女の子がいるんだぞ。
テレビでひまわりでできた迷路が紹介されていた。
「面白そうだね」と私は言った。
「そうだね」と貴方は言った。
私はリモコンでテレビの電源を切った。
食事中はテレビを見ないのが我が家のルールだ。
話題はそれきりだった。
貴方は私と違って忘れない。
日曜日、ひまわりの迷路に連れてこられた。
今でも思い出す。
別れの際だった。
君はぎこちなく、僕の指先を両手で包む。
そして大粒の涙をためながら笑った。
君を置いていくのは、身が割けるように辛かった。
どうしても一緒にいられないことが悲しかった。
それでも最後に君が笑ってくれたから救われた気がした。
この別れは無駄ではない。
僕らから君にあげられる一生分の幸せを形にした。
それは君の左手の薬指と同じサイズの指輪。
これから先、君と一緒だったらやっていけるような気がしたんだ。
苦しい時も、悲しい時も、傍にいて分かち合いたい。
その背に負った荷物を軽くしてあげたい。
そんなことを思ったのは君が初めてだ。
仕事の最中だった。
眩暈がして、天地が逆さまになったような気がした。
血が垂直落下していく感覚がした。
貧血を起こしているのだろう。
分かっていてもどうにもならない。
床に倒れる。
その直前に手が伸びてきた。
床と正面衝突する事態は避けられたようだ。
抱えてくれた同僚に感謝を告げる。
-
君を想う時は独りきりのことが多い。
君が隣にいないから、君を想うのかもしれない。
二人の時は、それだけで幸せいっぱいだ。
でも独りきりの時は寂しさが募る。
君の声が聞きたい。
夜半過ぎに眠れずに、そんなことを考える。
こんな時間に電話をかけたら迷惑だろう。
君の声を思い出しながら眠る
嘘をつくのは簡単だ。
それで場が和やかになるなら、喜んで嘘をつく。
「君のことが好きだよ」僕は君の耳元にささやいた。
君は目を三角にして、僕を見つめる。
「嘘つきの言葉なんて信じられない」君ははっきりと言った。
「本当なのに」そのまま耳にキスをする。
嘘つきの本音なのに伝わらない。
君と一緒だと空気を吸いすぎてしまう。
その結果むせて恥ずかしい目に合う。
本当は君と楽しく話したい。
それなのに沈黙が漂ってしまう。
きっと君の足音すら愛しいと感じるせいだ。
君のすべてを耳で、鼻で、喉で、目で感じたいからだろう。
僕の鼓動は高鳴っている。
君と同じ空気を吸っている。
1月の誕生日にガーネットの指輪を貰った。
誕生石である宝石は学生でも買える手ごろの物だ。
バイトをしてお金をためて買ってくれたのだろう。
それが想像できて鼻で笑う。
これが4月生まれだったら用意できたのだろうか。
無理に決まっている。
月光の中では落ち着いて見える指輪は物足りない。
-
しとしと降る雨は貴方の涙を思い起こされる。
私の知らない場所で貴方は泣いているのだろうか。
それなら今すぐ貴方の元に向かう。
独りで泣いているなんて悲しすぎる。
貴方の苦しみを分かち合いたい。
だから、黙って泣いていないでほしい。
どうか伝えてほしい。
私は貴方のために強くなるから。
僕は君のふわりとした髪を撫でる。
「もう、子ども扱いやめてよ」君が抗議する。
別に子ども扱いしたわけではない。
髪にさわりたかったから、さわっただけだ。
それをストレートに伝えても通じないだろう、と思った。
残念な気分だったが、髪にふれる回数を減らそうと思った。
嫌われないために。
君は僕がいないと何もできない。
そのことをいい加減思い知れば良いのに。
君ひとりで成し遂げたことがあるのかい?
成功させるのに、僕が隣にいただろう?
そのことにいつになったら気がつくのだろう。
君は僕がいないとダメなんだ。
でも、同じくらいに僕も君が隣にいないと寂しくてダメなんだ。
-
君に翼をあげよう。
君が好きな人のところへ、君が飛んでいけるように。
もしここへ帰ってくる羽目になっても大丈夫。
目印になるように鮮やかな花を持って待っていよう。
だから、安心して飛び立ってくれ。
無力な僕ができる唯一のことだ。
君が独りじゃなかった証に見送るよ。
さぁ羽ばたく時間だ。
純白は無惨に散らされた。
運命とは不思議なもので、加害者と被害者がひっくり返ることがある。
美しい乙女は涙を耐える。
嵐のように起きた事件に流される。
抗いひとつあった方がこちらは楽しいものだ。
二度と消えないように所有の証をきっちりとつける。
この暴行に乙女は何も言わなかった。
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