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「 140文字の物語 」
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いつもの帰り道に新しい雑貨屋がオープンしたようだ。
可愛い物が好きな彼女が「寄りたい」と言ったので「良いよ」二つ返事で返した。
彼女は熱心に店内を回る。
雑貨を見つめる表情にほんの少しの、嫉妬をした。
付き合いたてだから、そんなに見つめてもらったことはない。
雑貨が羨ましかった。
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くっきりとした輪郭を持った月が天頂にあった。
目覚めるのには、かなり早い時間だった。
目が覚めてしまったので夜風を浴びたくて外へ出た。
虫が鳴いていた。
二度寝はできそうになかった。
どうしてあんな悪夢を見たのだろうか。
背中に汗がにじんで寝着にぺったりと貼りついている。
月を仰ぐ。
冷酷と近隣国に知られる皇帝には一つの秘密があった。
妃だけが知っている小さな秘密だ。
書類整理をしている皇帝の元に妃がお盆を手に訪れる。
妃が扉をノックすると「入れ」と短く返事が返ってくる。
お盆の上には焼き立てお菓子。
皇帝は甘党なのだ。
手を伸ばしてお菓子を噛む。
皇帝は微笑む。
夢を見た。
人間の一生を早回しにしたような夢だった。
まるで自分じゃないような、もう一人の私が生きたような感覚があった。
泣き顔で、手のひらを軽く握る。
もう一人の私は悲しいぐらい一生懸命に生きていた。
今朝はなかなかベッドの上から起床できそうになかった。
どうしてそんな夢を見た。
幸せになって、なんて嘘だよ。
世界で一番不幸になって欲しい。
僕の心を傷つけたのだから、それぐらいは安いはずだ。
でも、心のどこかで不幸になって泣く君を想像して、胸が痛む。
素晴らしいほどの矛盾だ。
魅力的な君は、僕の気持ちを知らずに幸せになるんだろうな。
未来は簡単に描ける。
「ねぇ、暇?」同居人が声をかけてきた。
特に用事がない僕は「暇だよ」と答えた。
すると同居人の顔が輝いた。
「コンビニに行かない?」同居人は言った。
「何か欲しいものがあるの?」僕の言葉に「ナイショ」と笑う。
コンビニに着き同居人はアイスコーナーに真っ直ぐに向かった。
財布代わりか
君は目を逸らしつつ、僕の腕を両手で包む。
その頬が赤いのは夕暮れだけではないよね。
君の手は僕の手より冷たくて、儚い気持ちになった。
迷子にならないように僕の腕に触れる君のうなじに口づけを落とした。
僕の頬も夕方だからと言い訳できないほど赤くなっているに違いない。
お揃いの二人だ
海がない県に住んでいると、海を見ただけで嬉しくなる。
長いこと電車に乗って、何回も乗り換えて、海に辿りついた。
波打ち際を歩く。
人間が海を好むのは、生命が海からやってきたからだろう。
砂の感覚は柔らかく、靴に入りこむ。
それすら嬉しくって、はしゃいでしまう。
特別な一日になった。
近いようで遠い。
ふれそうでふれない。
それが僕と君の距離だ。
君と手を繋ぎたい。
そうしたら二人の関係は変わるかもしれない。
君は僕を意識してくれるだろうか。
わがままだと分かっている。
繋げない手。
ぎこちなく、両手のひらを握る。
今はまだこの距離でいい。
君の方から振り返ってほしい。
妖刀神剣・神楽。
押しつけられるようにして手にした剣だった。
同胞を殺すことができる剣は、血を求めて律動する。
どうやら裏切者の同胞が近くにいるようだ。
青年は鞘を払う。
柄を握り締め、周囲を見渡す。
警戒は本物になる。
逆さ十字のピアスをした裏切り者が屋上で笑っていた。
最近、異世界への渡航者が増えた。
生まれ育った世界が窮屈だからだろうか。
日帰り旅行をするような手軽さで、異世界を転々と渡るものが多い。
かくいう僕も休みの日は異世界を満喫している。
ふいに見知った顔を見つけた。
「偶然だね」と君は言った。
素晴らしい偶然だった。
「また次の世界で」
片づけをしていたら写真が一枚、出てきた。
インスタントカメラで撮られたそれは懐かしかった。
今は生意気になった幼馴染と並んで写っていた。
二人とも笑顔だった。
追憶にふけりそうになる。
けれども、この写真の後が思い出せない。
思い出は風化してしまったのだろうか。
どうしても引っかかる
少女の指先は絆創膏だらけだ。
慣れないことはするもんじゃない。
それでも手作りのお弁当を食べて欲しかった。
「吊革、掴めないだろう?」少年は手を差し出した。
「ありがとう」少女はお礼を言った。
少女は恥ずかしそうに、少年の腕に指を絡める。
まだまだ恋人同士としては未熟だなと思った。
-
君の涙はあたたかい。
誰かを思って泣く涙だからだ。
僕の涙とは違う。
静かに雫を零して、誰のことを思っているの?
僕以外の誰かなんだろうね。
それが分かっているから、僕の涙は冷たくなる。
それでも僕は涙を流す。
誰も見ていないところで。
君には絶対に見せない。
それが僕の少ない矜持だ。
君は嘘吐きだ。
空気を吐くように嘘を吐く。
僕はどれが本当か、見極めなければならない。
だいたいのところ騙されて、振り回される。
帰り道、別れる場所で「またね。好きだよ」と君は笑った。
だから僕は「また」と返した。
君が吐いた嘘と本当。
見抜けなかった。
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