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「 140文字の物語 」
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桜木の下で邂逅した。
もう二度と会えないと思っていたから、信じられなかった。
会えなかった時間だけ歳を重ねた君は「やあ」と微笑んだ。
まるで昨日もあっていたような軽い口調だった。
僕は慟哭した。
そんな僕の背を君は優しく撫でてくれた。
それすら別れの時の仕草に似て涙が止まらない。
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今日もスマホの画面を見せられる。
フローリングの床に四肢を伸ばして寝ている。
飼い猫らしい姿のフォトだった。
「うちの子可愛いだろう?」だらしのない顔で同級生は言う。
猫は可愛らしいが、それはどこの猫も一緒にしか見えない。
だから「そうだね」と無難な相槌を打つ。
「他にもあるんだ」
僕が男で、君が女だということはランドセルの色で分かった。
成長するにつれ、体にも変化が出てきた。
僕は骨ばってきたし、君は柔らかな肉に包まれてきた。
いつまでも一緒にいられると思っていた。
それが体の変化から二人を切り裂いていく。
いつまでも、はなくなった。
もう同じ道を歩けない。
幼少の頃は期待をされていなかった。
だから庭で流れる雲を一日中、見ていても誰も気に留めていなかった。
それが普通だったのだ。
戦で長男である兄が亡くなるまで。
急に後継ぎとしての道を歩くことになった。
もう自由はどこにもない。
空を見上げる余裕すらなく、今は文武に励むことになった。
「猫!」君は目聡く見つける。
野良猫だろうか、飼い猫だろうか。
長い尻尾の猫が路地裏に走り去った。
こうなるとお手上げだ。
君は当然のように路地裏に向かう。
僕はそれを追いかける。
君はくつろぐ猫に撫でる。
「満足だろ。帰るぞ」と僕は言う。
君は目を逸らしつつ、僕の両手を指先でつつく。
二人の間に静寂が漂っていた。
繋いだ手のぬくもりが心細かった。
このままではいけないと口を開く。
けれども言葉にしようとしたら、何を言えばいいのか分からなった。
君は「言わなくても分かるから」と囁いた。
繋いだ手にわずかに力がこもる。
だから、僕は無言で頷いた。
二人は影を追った。
彼が待ち合わせの時間に来ることはない。
いつでも遅れてくる。
今日も遅い。
でも不思議と彼が遅刻をしても怒ったりしなかった。
待っている時間、彼のことを考えているだろうか。
どんな服で、どんな表情で現れるのか、想像するのは楽しみですらあった。
彼は今日はどんな言い訳をするのだろう。
残業しても、家に持ち帰っても、一向に終わらない仕事。
気分転換にいつもより早く起きて、学校に向かった。
早朝と呼んでもおかしくない時間のせいか、職員室はガラガラだった。
赤色鉛筆で採点をする。
「先生、早いですね」新卒の教師が言った。
「先生こそ、いつもこの時間ですか?」と返す。
誰にも知られてはいけない恋人同士だった。
大きな通りで手を繋ぐのはもちろん駄目。
本当は手を触れ合わせたいのに。
私よりも大きな手を握りたいのに。
いつもの通学路。
思いついたら早かった。
彼を強引に路地裏につれこんでいた。
嬉しそうに、手のひらを触れ合わせる。
彼の方も分かったようだ
よくある修羅場というものだろうか。
僕と君が付き合ったのは間違いだった。
それを再確認しただけだった。
僕は君が好きだった。
出会った時からずっと君だけを見つめ続けていた。
君が「好きだ」と言ってくれた時は最高の幸せだった。
「いつから嘘だってわかってた?」君は尋ねた。
「最初から」
目覚まし時計が鳴って目覚める。
ベッドから降りてカーテンを開ける。
強雨は寝ている間に去ったようだ。
爽やかな朝だった。
いつものように学校に行く準備をして家を出る。
アスファルトのところどころに水たまりができていた。
それをよけながら学校に向かう。
今日も君におはようを言うために。
木陰の下にいても暑い。
日差しの下に出たらもっと暑いのだろう。
容易に想像できた。
汗が噴き出して肌にシャツがくっつく。
不快な感触がした。
そんな中君がやってきた。
日差しを知らない白い肌の君は涼しそうだった。
どんな用事があってきたのかそれに引っかかる。
また無理難題を言うだろうか
旅行は旅行でも特別な旅行だ。
旅行の前に『新婚』とつく。
二人で旅行するのは初めてではないが、それでもときめく。
君は上目遣いで、僕の腕を両手で包む。
「どうかしたの?」と僕は訊く。
「幸せだなぁ、と思って」と君ははにかむ。
それすら愛しくて、僕は君の額にキスをした。
君は俯いた。
目覚まし時計が鳴った。
傍らのぬくもりがもぞもぞろと動いた。
「今日はまだ眠っていて良いよ」僕は優しく声をかけた。
しかし君はぱっちりと目を開けた。
「朝なんて来なければいいのに」と君は不満げに言う。
「そうしたら、ずっと一緒にいられる」君は枕を抱えて言った。
子供っぽい仕草だった
彼は何気ない仕草でスマホを取り出した。
デート中はお互いを見つめあおう、という約束だった。
それなのにスマホを見つめている。
悲しくなったが、重要な用事が舞いこんだのかもしれない。
ぐっと堪えた。
スマホの先の相手を知りたくない。
私よりも魅力的な存在だと知ってしまっているから。
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