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「 140文字の物語 」
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「大丈夫だよ」
魔法の言葉を口にする。
震える背中を優しく叩く。
「心配することはない」
何度もくりかえされる夜。
「大丈夫だよ」
そんなことは嘘だということを僕も君も気づいている。
それでも頼らなければ超えられない夜。
静かに涙を零す君の背中を抱きしめる。
あと何夜、呟けばいいのだろう
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「本当に泣きたいの?」君は尋ねた。
「泣きたいぐらい辛いよ」僕は言った。
君の強張っていた顔がふにゃっと解ける。
「悲しんでくれて、ありがとう」君は言った。
僕は君との別れに身を引き裂かれそうに辛いのに、君は嬉しそうだった。
これからの君のことを思うと自然と涙が零れてきた。
どうして一日は24時間しかないのだろうか。
仕事をして、ご飯を食べて、お風呂に入ったら、もう眠る時間だ。
働きアリよりも勤勉に働いている。
時計を見れば、寝る時間になっていた。
今日も一生懸命に働いた。
それなのに給料は上がらない。
ずっと低月給でこき使われるのだろうか。
未来が怖い
雨合羽を着て自転車を走らせていた。
傘差し運転はレッドカードが切られる。
ちょっと間抜けだが仕方がない。
交差点で止まる。
赤信号なんてついていない。
傘を差した女性が隣に並んだ。
甘い香りがした。
香水だろうか。
同世代の女子たちとは違う。
良く似合っていた。
凛とした横顔が美しい。
僕が悪いのは重々承知だ。
久しぶりのデートだというのに、君の話を聞かずに、上の空で返事をしていた。
頭の中が完全に仕事モードだった。
君は怒り顔で、両手のひらに爪を立てる。
痛みが走る。
けれども、もっと痛かったのは君の表情。
今にも泣きそうな顔だ。
自分の失敗にようやく気がついた。
あの日、僕と君の心は通じあえた。
紛れもない愛だった。
それから長いことの月日が流れた。
真円だった愛は歪になった。
踏みこんではいけないプライベートを縛るようになった。
別れ話がでるのも時間の問題だった。
僕は欠けた愛を探してる。
また君と真円の愛を抱けるように。
笑い話にしたくない
ずっと歩き詰めだった。
終わることのない坂道に道があっているのか不安になる。
坂道をこえた先に、目的地の屋敷があるはずだった。
それにしてもこんな坂道の上に屋敷を立てたのだろう。
金持ちの考えることは分からない。
ほんのりと汗をかきながら、これで地図が間違っていたら嫌だなと思う。
予定通り嵐がやってきた。
稲光を遠い目をしながら眺めていた。
雷が落ちる度、君が泣く。
それがとても不思議だった。
家の中にいれば安全だし近くには避雷針がある。
怖がる要素はどこにもない。
ガタガタと震える雨戸の音に怯え、僕も服の裾をぎゅっと握り締める。
怖がりな君を優しく抱きしめる
意地っ張りな君は「子供だましだよ」と言った。
ゴールまで歩いていく幽霊屋敷だった。
二人一組になって、挑戦することになった。
僕と君の順番になって薄暗闇に入っていった。
意地っ張りな君は平気そうな顔をしていたけれども立ち止まる。
僕は無理矢理、君の両手に触れる。
引っ張りながら歩く
大きな背にぶつかる。
迷惑そうな顔であなたは振り返った。
作戦成功。
無視されたら、どうしようと思った。
あなたは私の頭をなでる。
それが嬉しくて笑顔になった。
「びっくりするから、今度は声をかけてくれ」あなたは言った。
次も大きな背に向かってぶつかるような気がする。
気づいてほしくて
「おはよう」君が言った。
昨日の一件があったから無視しようと思った。
けれども長年の流れから「おはよう」と挨拶を返していた。
きちんと怒ることはできないのだと納得された。
それぐらい君の笑顔の挨拶は卑怯だった。
嬉しそうに声をかけられて無視なんてできない。
僕はため息をかみ殺した。
良い天気だった。
見事な青空が広がっていた。
君は焼かれ、煙になる。
魂は真っ直ぐと天国へ行けただろうか。
痛みに耐えるよりも、家族で見守るときめてから、こんな日が来ることは覚悟していた。
「愛されていたんですね」係の人が言った。
「愛していました」過去形なのが寂しいけどはにかむ。
あんなに愛し合ったのに、忘れて、なんて残酷だね。
白紙に戻してもう一度出会いから始めたい。
当たり前のように出会って、当たり前のように心を通わさせて。
手順を踏まないで一夜を共にしたから、普通の恋人同士になれなかった。
今からでも恋の告白するのは遅くはないのだろうか。
分からない
松を見上げている男性に、靴下のままで近づく。
男性はこちらには気がついていないようだった。
手にしていた包丁でその背を刺す。
できるだけ深く刺したかったけれども気がつかれた。
男性は振り向き、私の首を絞める。
手から包丁が滑り落ちる。
男性はぎりぎりと喉を絞める。
呼吸ができない。
彼は嬉しそうに、腕を触れ合わせる。
人前ではベタベタしないという約束を破った。
約束を破られた私は裏切られたという感情が胸を占める。
彼から距離を開ける。
「どうしたの?」暢気に彼は言う。
すっかり約束を忘れている。
喧嘩にすらならない。
そのことに落胆する。
「別に」私は悲しみを飲む
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