私は鳳凰の化身らしい。
だから死ぬ度に強くなるという。
怖くて試したことはない。
それは言い訳で、実際は力が欲しい。
心が揺れ動く。
もっと早く知れたら、家族を喪うことはなかっただろう。
時間を巻き戻して、あの頃に戻りたい。
そしたら生命を削って家族を助けられただろう。
運命は皮肉だ。
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愛猫が音もなく、足にすり寄ってきた。
すっかり冬毛になった被毛を撫でると、ゴロゴロと嬉しそうに鳴いた。
独りきりのマンションに置いて行かれるのは寂しいのだろうか。
愛猫は帰ってくると玄関で待ち受けている。
けれども二匹飼うような金銭的な余裕もなく、構ってやれる時間はないのだ。
中身を伴わない誓いを重ねる。
誠心誠意という言葉は空っぽだ。
だから何度でも誓える。
重ねた言葉は軽く、風船のように飛んでいく。
いつか君のもとに届けばいいのに。
そうしたら君は僕の心を知ってくれるだろうか。
誓いが本物になるだろうか。
そんな高望みを考えてしまう。
嘘ばかりつくのに。
悪ふざけにもほどがある。
君は優しく、僕の両手のひらををぎゅっと握る。
勘違いしてしまいそうだ。
君が僕を好きになる理由はない。
僕がどれほど君を好きでも。
だからこれはいつもの悪ふざけ。
握り返してはいけない。
僕と君の関係が崩れてしまう。
それでもあたたかな手を離したくはなかった。
君が幸せだと僕も嬉しい。
こんな感情をどう伝えればいいのだろう。
君は優しいから僕のことを心配してくれる。
だから僕も君のことを心配したくなる。
僕ができることは少ないから君を幸せにすることは難しい。
君の笑顔を見たいなんて贅沢なのだろうか。
君の心と僕の心が繋がっていればいいのに
人は死んだら星になる。
だから死んだら見つけてほしい。
ある日、君は言った。
今日も星空は見えないみたいだ。
雨がしとしと降っている。
この雨が僕の涙なのだろうか。
ずっと雨が降っている。
君の死を受け入れらずにいる僕にはお似合いだった。
どうすればこの雨は止むのだろうか。
教えてほしい
名前も知らない君に恋をした。
君からしては見ず知らずだから気持ち悪いだろう。
それでも好きという気持ちは止まらない。
一縷の希望に縋りつく。
手紙を書いて、君に渡す。
君は「ありがとう」と言って受け取ってくれた。
だから、僕は期待する。
僕が君を好きなように、君もまた僕を好きだろうと
何でも話せる親友を喪ったのは痛手だった。
僕は慟哭した。
そんなことをしても君は帰ってこないと知っている。
それでも涙は次から次へとあふれてくる。
そんな僕の様子を見ていじめの主犯格は喜ぶ。
復讐してやると心に誓った。
僕が君にできる最後のことだ。
君は天国で幸せになっていてほしい。
僕は待ち合わせの場所までダッシュで駆けつける。
君は小さく手を振った。
「おはよう」と僕が言うと「おはよう」と君は返した。
ついでに鼻水をすすった。
僕は無理矢理、両手を両手で包む。
君の手は氷のように冷たかった。
「いつから待っていたの?」僕が問うと「待っている時間が楽しいから」
君の世界を僕にもわけてほしいんだ。
どこまでも広がった空のように。
どこまでも深い海のように。
君の世界は無限に広がっていた。
僕はというと窮屈な檻の中にいる囚人だった。
君の世界をひとかけ貰えたら、枷が外れるような気がするんだ。
だからお願いだよ。
僕を自由にしてくれないかい?
沈黙が答えだった。
僕も、君も、言葉にできなかった。
散々、話し合った結果だった。
どちらも譲れない夢があった。
一緒にいられることはできなかった。
どちらかが夢を諦めれば共にいられたかもしれない。
そんな不自由なことはできなかった。
「じゃあ」君は立ち上がった。
その背を見送った。
突然僕の前に現れた少女は、戦いの女神の化身だという。
真っ直ぐな視線で僕を見つめる。
これから僕は女神を守る立場になるという。
三流小説でも、題材にならないことが現実に起きた。
僕は戦いの中に身を投じることになる。
それをまだ知らなかった。
小説より現実が奇なりとはよく言ったものだ
春は出会いの季節と同時に別れの季節でもある。
卒業証書を抱えながらソメイヨシノを見上げていた。
もうこの学校ともお別れだと思うと感傷的になる。
「こんなところにいた!」一つ年下の君は言った。
怒り顔で、僕の両手を折れんばかりに握る。
「卒業おめでとう」少しも嬉しくない口調で言う。
夜の世界は銀色。
しんしんと星が降ってくる。
昼の世界は金色。
さんさんと太陽が輝く。
どちらも美しく、比べることができない。
夜の世界は静か。
昼の世界は賑やか。
どちらも幸せで、比べることはできない。
長い夜の世界が迫ってくる。
短い昼の世界は煌めいている。
どちらも大切な時間だ。
恋は苦しくて、悲しいものだという。
必ず成就するものではないという。
それならば僕は一生、恋をしない。
そう決めていたのに、君と出会ってしまった。
どんな巡りあわせだろう。
君のことを思うと嬉しくて、楽しい。
幸せな気分になる。
これならば一生、君に恋をしていたいと思ってしまう。