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「 140文字の物語 」
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君と放課後一緒に帰るようになって、どれぐらいたつだろう。
それでもいまだに手を繋げていない。
並んで歩くの精一杯だった。
他愛のない話をしていたら駅までついてしまった。
名残惜しいが別れだ。
いつものように別れの挨拶をしようとした。
君は恥ずかしそうに、僕の指を軽く握る。
温かった。
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僕は言葉が足りないらしい。
また君を怒らせてしまった。
どうすればいいのか分からず、視線を逸らした。
夢の君は、笑っていたのに。
どうして現実の君は、僕にだけ笑ってくれないのだろうか。
夢は所詮、都合の良い塊でしかないのだろう。
願望を集めて、再構築する。
僕以外に向けた笑顔を元に。
いつも少年と帰る時は遠回りをする。
後ろで影を踏まないように気をつけて歩く少女には不思議だった。
一緒にいる時間が長くなるのは、単純に嬉しいけれども。
それが少年の負担になっているのではないかと考えてしまう。
今日も遠回りをして滑り落ちていく夕陽を並んで見た。
美しい光景だった。
「まるでリンゴのようだ」青年は少女の頬を撫でる。
「食べたくなる」赤面した少女に青年は言葉を続ける。
事実だったから、少女はぐっと我慢する。
恋すら知らない少女は、揺れ動く気持ちに途惑う。
青年の挙動に振り回される。
きっと、今の自分は間抜け面をしているに違いない。
少女は俯いた。
青年は夜遅くまで作業をしていた。
カタンっと小さな音がした。
不審に思いドアを開けたが、誰もいなかった。
そっと置かれた握り飯と小さなメモ。
少女の字で『頑張ってください』と書かれていた。
部屋にお盆ごと持ち帰り、握り飯を口に運ぶ。
あたたかい塩握りは、少女のように優しい味がした。
青年は箒で木の葉を集めていた。
視線を感じて顔を上げると不思議そうな表情の少女と目が合った。
青年はやましいことはなかったが狼狽する。
「焼き芋を作ろうと思ったんだが、食べるか?」青年は木の葉を集めていた理由を話す。
「用意しますね」少女は笑顔を浮かべて、台所の方に姿を消した。
二人で並んで帰る道。
放課後にした罰ゲームは『家に着くまで喋らない』というものだった。
いつも以上に、街並みのざわめきが耳に届く。
まるでカノンのように追いかけてくる足音。
それは想像以上に楽しい。
ふいに君を見た。
君は泣き顔で、僕の指先に触れる。
罰ゲームは辛いものだったと知る。
君を好きになって自由を失った。
君の一挙一動に振り回される。
君が笑えば、僕も嬉しくなった。
君が涙を零せば、僕も悲しくなった。
心の振り子は揺れっぱなしだった。
僕の一番は君になってしまった。
それは幸せでいて、不幸せであった。
君を好きになれなければ、僕は僕らしくあれたのに。
少女は星だけの明かりを頼りに、波打ち際を歩く。
陽が落ちると辺りは真っ暗になる。
寄せては返す波音を聞きながら、少女と離れないように気をつける。
何が嬉しいのか、少女は海を楽しんでいた。
「そろそろ帰らないか?」青年は提案した。
「あと、もう少しだけ」少女は言う。
そして心から笑う
せっかくの記念日だったのに、喧嘩をしてしまった。
ずっと楽しみにしていたから、無言で歩くのは辛い。
このまま今日はお別れなのだろうか。
送ってくれるのは嬉しいけれど、足音だけが響くのは悲しい。
そうこうしているうちに家までついてしまった。
離れるのが嫌で力強く、腕をぎゅっと握る。
桜の様子が気になって眠れない。
まだ固い蕾もつけていない鋭い枝ぶりが強風に煽られていないのか。
折れることはないだろうが心配になった。
パジャマの上にコートを羽織ると、庭に出た。
肌を切るような強風の空は漆黒だった。
雨戸を叩いていたように強い風が吹いていて寒かった。
桜はあった。
「花見?お前がか?気持ち悪い」と幼馴染の少年は言った。
言われた少女は持っていた鞄で少年の背中を叩いた。
「何するんだよ!」少年は抗議した。
「失礼なのはそっちの方でしょう?」少女は澄まして答える。
「だって、お前は花より団子だろう?花なんか全然見てないじゃないか」少年は言った。
過去が呼んだような気がして目が覚めた。
少女は起きる。
カーテンを開けると月光が静かに差しこんできた。
欠けた月はしんしんと輝いていた。
星たちの輝きも月に譲ったのか控えめのようだった。
懐かしい夢を見ていたような気がする。
覚えていないことが少し悲しかった。
少女は月を見上げる。
仕事が終わるぐらいを見計らって電話をかけた。
1コール目であなたは出た。
ビックリして無言になってしまった。
「ちょうど電話をかけようと思ったんだ」あなたは言った。
機械を通した声だというのに、あなたの優しさが伝わってくる。
「仕事は終わった?一緒にご飯が食べたいと思うんだけど」
プリンターから印刷された紙は熱を持っていた。
機械は忙しそうに紙を排出する。
それに目を通して、僕は切り裂く。
陳腐な表現が羅列した紙に価値はない。
僕だけのオリジナリティのある文章でなければ、読者の胸を打つことはできないだろう。
いわゆるスランプに陥っていた。
苦しみが長く続く。
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