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「 140文字の物語 」
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君は虹色の未来を追いかけるのに夢中だった。
君なら叶えることができるだろう。
そう分かっていたから、僕はいつでも俯いていた。
君と一緒に、夢を見ることはできない。
夢は君だけのものだ。
君の夢が叶わなければ、僕と一緒にいられることができるのでは。
そんな浅ましいことを考えてしまう。
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一人で夕暮れの十字路に立ってはいけない。
夕方は逢魔が時。
顔を隠した魑魅魍魎が通り過ぎる。
そう言い含まれていたのに立ち止まってしまった。
それはやってきた。
美しい姿を見て驚く。
僕を見て美の女神の化身だと告げる。
人の身だから不自由であると。
どうすればいいのか分からなかった。
人生初のデート。
それも大好きな子とのデートだ。
印象を良くしたいと思う。
そして、次につなげたい。
そうはいっても慣れないことの連続だ。
一緒に歩くだけでも緊張する。
こういう場合、手ぐらい繋ぐよな。
そう思うがタイミングがつかめない。
それでも目を逸らしつつ、指を触れ合わせる。
君は本当に優しい。
取り繕うためではなく、偽善のためではなく。
誰にでも優しかった。
冷たい態度を取られようと、キツイ言葉を投げつけられようと。
君は親切をやめようとしなかった。
誰からも見向きもされない僕にまで優しくしてくれた。
そんな君を傷つけた。
僕を許す君がいけない。
君は笑う
ストレスに次ぐストレス。
溜息をついても終わらない仕事。
帰りは日付が変わる前に帰ってこれたら早い方だ。
とうとう煙草に手が伸びた。
一呼吸して、煙を吐き出す。
このところ吸わなかったから「禁煙できるかも」と思っていたが無理そうだった。
募る苛々で手を出してしまったことに後悔する。
廊下に点々と残る足跡。
どれも水分を含んでいた。
それは居間まで続いていた。
濡れた髪のまま、足跡の持ち主はテレビを見ていた。
「テレビを見る前にやることがあるだろう?」面倒見の良い少年が言った。
「面白い番組がやっているよ」と微笑む。
とりあえず肩にかけていたバスタオルで髪を拭く
「手、貸して」と何の気なしに言われたので素直に差し出した。
しばらしくしてくすぐった感触があった。
青年は少女を見た。
手には油性ペン。
大きな目をさらに大きくする。
「見ちゃ駄目」と堂々と、両手のひらにしがみつく。
書かれた文字は見えない。
こんないたずらを教えてのは誰だ。
嘆息する
砂糖を煮詰めた甘さの君は、今日も僕以外に優しい。
顔を合わせれば口論になってしまう。
本当はその甘さにたかりたいアリなのに。
その一片の甘さを口にすることはできない。
君の冷たい眼差しに見据えられたのは何度目だろうか。
僕にも優しくしてほしい。
その一言が言えなくて今日も空回り。
「はいはい、お掃除の邪魔をしないでね」と片隅に追いやられた。
これが掃除機をかけるなら理解できる。
けれども、掃除するのはルンバだ。
スイッチを入れられた機械は几帳面にフローリングを滑っていく。
これでは人間の方が機械に合わせているようだった。
何でもかんでも母は手を抜いていく。
怪我なんて日常茶飯事だ。
真剣・神楽をもってしても無傷でいることはできない。
同胞殺しの妖刀は大きな傷は塞いでくれる。
中立の病院に行けばだいたいの傷を治してくれる。
それは青年よりも少女の方が知っているはずだ。
しかし少女は泣く。
青年は仕方なく、少女の指に触れる。
「大丈夫だよ」
「こういうキャラクターが好きなんですか?」後輩が尋ねた。
アイドルグループの写真を目ざとく見つけられてしまった。
「可愛い感じですね」お世辞かもしれないが嬉しかった。
「うちの嫁がこんなに可愛いのは当たり前」と言ってしまった。
「でも、二次元なのが残念でしたね」
「裏切らないぞ」
夜更けには雨から雪に変わっていた。
朝になったら溶けて、もう見られないのだろうと思った。
新聞受けから新聞を取り出す時、一面の銀世界を見て童心がよみがえる。
雪は消えないで、わずかながら積もっていた。
まずは足跡をつける。
そのあと綺麗な場所から雪を集めて、小さな雪だるまを作る。
「携帯どころだろ?電話貸してもらってもいい?」困ったようにあなたは言った。
だからスマホを貸した。
あなたは笑った。
「ありがとう」とスマホが返ってくる。
アドレス帳がDeleteされていた。
策士の手段に心が揺れ動く。
これが初めてじゃない。
もうすでに何回かあった。
嫉妬深く過ぎる。
喧嘩の余韻を残して電車に乗った。
どちらも無言だ。
幸いに座れるスペースがあったので腰を下ろす。
君は怒り顔で、指を触れ合わせる。
話したいことがある時の君のクセだ。
自分も言い過ぎたと思っていたから、聞いても良い気分になっていた。
君は小さく「ゴメン」と言った。
素直な謝罪に驚く。
細い呼吸だ。
時折、咳が混じる。
胸が上下するのを見つめていた。
横たわる人は目を瞑っていた。
こちらを見ることはもうないだろう。
やがて、息が止まった。
まるで眠るように静かな最期だった。
それが合図のように古馴染みが室内に入ってくる。
「きっと幸せだったんでしょう」と肩を叩かれた。
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