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「 140文字の物語 」
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無意識の仕草だったのだろう。
男はズボンのポケットを探り、不思議そうな顔をした。
手のひらには飴玉があった。
それに苦笑した。
察するについ先日まで、煙草を吸っていたのだろう。
男は口寂しそうに飴玉を口に頬りこんだ。
それから気まずそうな顔をして、こちらを見た。
禁煙を始めて日が浅い。
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友だちが映画のDVDを持って遊びに来た。
友だちご贔屓のアイドルが主演を張った映画だということをの僕ですら知っていた。
早速、上映会になった。
どうやら恋愛ものだったらしい。
主演のアイドルが相手役に口唇を許した。
友だちは奇声を上げて狂う。
素早くDVDを取り出して、真っ二つに割った。
春は出会いの季節であり、別れの季節でもあった。
君は泣き顔で、自分の両手のひらを握る。
まるで我慢をするように、いや、この別れに未練の言葉を吐かないように我慢していた。
僕は少しだけ笑って、君の頭を撫でる。
すると君は決壊したダムのように、今まで以上に涙を流した。
僕は息を飲んだ。
「iotuは、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「永遠を信じている」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

------

僕は、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をついた。
君の耳元に二人だけの秘密にするように。
それは現実逃避のための嘘だった。
そこには、本当のことなどひとかけらもなかった。
それでも僕には必要だった。
「永遠を信じている」と永久の愛を誓った。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
君は涙ながら「なんでこの手を離してくれないの」と言った。
「離したら、僕の見てないところへ行くだろう?」僕は最後の一言を飲みこんで言った。
君は自分の人生に終止を打とうとしていた。
それが分かるだけ、僕は君の隣で見てきた。
「あなたには関係ないでしょ」と僕の手から離れようとする。
夕焼けが早くなったと感じられた。
君と並んで歩くと、君の頬まで染める。
どこか哀しい季節になった。
昨日まで夏だったのに、景色が全く違って見えた。
そんなセンチメンタルリズムを感じていると、「寄り道して帰らない?」と君は言った。
どうやら君も僕と同じ気持ちを感じていてくれたようだ。
君はこれから起きることに怯えていた。
二人で過ごす初めての夜。
ひどく緊張をしていたのだろう。
君は泣きそうになりながら、僕の指先に指を絡める。
僕にまで震えが伝わってきた。
「大丈夫だよ」と僕は慰めにならないことを言う。
潤んだ瞳が煽情的に僕には映った。
できるだけ優しく、と思った。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、目をそらしながら最後の嘘をついた。
嘘だと悟られるわけにいかなかったから、君の目を見ることができなかった。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と僕は言った。
僕の傍にいて良いことなんて一つもないだろう。
お互いが駄目になる。
本音は仕舞い込んだまま。
気がつけば落とし穴にはまっている。
推しができるということはそういうことだと思っていた。
道のそこら中に落とし穴は用意されている。
『落とし穴にご注意を』という看板もむなしく、新しい落とし穴にはまった。
どうやっても抜け出せそうにない。
空の高さを見上げながら、新しい穴の中で座る。
文化祭の後夜祭はダンスパーティー。
少女はなかなか相手が決まらない。
少女が片意地を張らなければ、カップルになってくれるような少年もいるだろう。
けれども、少女は妥協ができなかった。
白金色の頭髪の少年よりも相応しい相手を見つけたい。
そして見せつけてやりたい。
対抗心が邪魔をする。
友だちは付き合いたての彼女の誕生日にダイヤモンドリングを贈ろうと思う、と言ってきた。
途方もない愛の深さに驚愕した。
いくら何でも愛が重たすぎる、と思った。
僕の気持ちを知ってほしいんだ、と友だちは照れる。
利用されるだけ利用される関係になりかねないので、遠回りに友だちを諭す。
空調の利きすぎた部屋で少女が「寒い」と呟いた。
しきりに指先を触れ合わせる。
暑がりな少年は、大げさなと思いながら設定温度を上げる。
そして、仕方なく少女の指先と自分のそれを触れ合わせる。
少女の指先が氷に触れたように冷たくて、少年は驚いた。
少女に熱が伝わるように手を握りしめた。
「iotuは、小さく笑って最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、小さく笑って最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と笑顔とはちぐはぐに冷淡に僕は言った。
君は驚いた顔をして、途惑ったようだった。
君に会えば会うほど、溺れていく。
君への愛が深まっていく。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「世界で一番、大嫌い」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

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僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それはどんな茨道であろうとも前へ進むための嘘だった。
君とはもうお別れだ。
だから君の心に刻みつけてほしかった。
「世界で一番、大嫌い」と僕は嘘をついた。
君は悲しそうな顔をして、唇をかんだ。
嘘だと見破ってくれたらいいのに、と僕は思う。
君の吐く嘘をひとつずつ真に受けていたら、君は苦笑いをした。
そして『簡単な嘘ぐらい見抜いてよ』と言った。
それは無茶な話だった。
僕にとって君は完全なのだ。
その完璧な君が吐く嘘は手がこんでいる。
それに僕は、君を疑いたくなかった。
だから『ごめんね』と僕は首をかきながら、笑った。
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