「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」
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僕は、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
それでも、これが最後の嘘になるのならかまわない、と僕は思った。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と君に声をかけた。
心は痛んだけれども、それで君が旅立てるのならいい。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
「君がいなくなって泣くぐらいなら、笑ってやる」と少年は言った。
不思議なことを言うのね」と少女は感心した。
「君がいなくなったことに清々してやる」と少年は笑う。
その笑顔を見た少女は溜息をついた。
「それは、ちょっと悔しいわね」
「だから君はどこにも行かないでくれ」と少年は言う。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」
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僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
辛い現実を見続けるのに、僕は疲れてしまったのだ。
「君の記憶から消し去ってくれてもいいよ」と優しく君に告げた。
君が忘れ去っても、僕はずっと覚えているだろう。
本音は仕舞い込んだまま、僕は微笑んだ。
君が僕以外の男性と並んで歩く夢を見た。
僕と一緒にいるよりも楽し気だった。
そこで夢は途切れた。
嫌な予感を抱えながら、僕は君をデートに誘った。
用事があるから駄目だと断りの返事が返ってきた。
僕は独り街をぶらつく。
そして夢の続きを見てしまった。
夢であってほしかったのに、と思った。
寝る前のおまじない。
僕は良い夢を見られるように、妹の額にキスをした。
唇から伝わってくる熱は熱かった。
薄暗い部屋でも、分かるぐらい潤んだ瞳。
僕は深く息を吸いこんだ。
また風邪でも引いたのだろうか。
掛布団を肩までかけて「お休み」と僕は言う。
妹は小さく咳をした。
優しく頭を撫でた。
僕は海岸沿いに植えられている松を写生した。
下手の横好きだと分かっている。
風が強くなってきたから、彩色するのは諦めた。
スケッチブックは家のダイニングテーブルに置いて風呂に入った。
回収しようと思ってスケッチブックを開くと、松は修正されていた。
僕はそんなことをした君を許さない。
まるで生きていることを確認するように。
君はさりげなく、僕の腕を指先でなぞる。
君のひんやりして指先が深まった秋のようで、少しばかり切なかった。
君の指先がぱたりと止まった。
だから、僕は紅葉のような君の手を握りしめた。
君は目を丸くして驚いたようだった。
僕は気にせず熱を分ける。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは傷をいやすための嘘でした。
「永遠を信じている」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」
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僕は、君から目をそらしながら最後の嘘をついた。
それは自分の嘘をいやすための嘘だった。
自分勝手で、君のことをこれっぽっちも思っていなかった。
「永遠を信じている」と水に文字を書くように言った。
どうか嘘だと気づかないで。
祈るような気持ちで僕は都合よく思った。
君の瞳は見られない。
「君のことを愛していない」途惑ったように青年は切りだした。
「だから、永遠を誓うことはできない」せめての誠実に少女に向かって言った。
「そう」と少女は頷いた。
「いつから嘘だってわかっていた?」青年は尋ねた。
すると少女は「出会った日から」と答えた。
ずっと騙されていてくれたのだ。
「欲しいものありませんか?」少年は少女に問う。
少女は笑顔で「あなたのそはにいることが幸せだから、ないわ」と言った。
少年の心臓がチクリと痛んだ。
いつまでも少女のそばにはいられない。
その日がきても、少女は笑顔で見送ってくれるだろう。
それが分かっているから、少年は哀しかった。
すっかり忘れていた結婚記念日。
いつものように残業をして、終電に飛び乗った。
煌々とついたダイニングの蛍光灯で、僕はようやく結婚記念日だということを思い出した。
冷めた数々のごちそうに僕は「ゴメン」と謝った。
君は怒り顔で、僕の手のひらの爪を立てる。
まるで子猫のような仕草だった。
「こんなごみ溜めから現れるのかね」と疑心暗鬼に老婆は言う。
龍を探すにはかっこうの夜長月だ。
きっと龍は現れると少年は信じて、ごみ溜めの頂に陣取る。
それに呆れながら、老婆はごみ溜めの周りを歩き回る。
少年にはため息すら届かないだろう。
二人を照らすように月が輝いていた。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」
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僕は、目をそらしながら最後の嘘をついた。
膠着状態に陥った今を解決するために。
それは現状打破のための嘘だった。
僕は意を決して君を見つめた。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と、君を困らせないために僕は最後の嘘をついた。
君はホッとしような顔をした。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
親友が深刻な顔をして呟いた。
「大嫌い、って言えないの」
「何かあったの?」と私が尋ねると、親友は首を振る。
「だったら、言わなくても良いんじゃない?」私は言った。
「何でも許しちゃう自分が嫌なの」と親友は言った。
完全なのろけ話だった。
私は心の中で溜息をつきながら笑顔を浮かべる。