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「 140文字の物語 」
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修学旅行の帰りのバス。
隣の女子がうつらうつらしていたので、僕は手のひらをくすぐった。
目覚めた女子は怒り顔で、僕の指をぎゅっと握った。
もう悪戯ができないように。
それすら愛おしくて、僕は笑ってしまった。
女子は目を鋭くして、僕を見つめる。
全然、怖くなかった。
恋をしているのかな?
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「iotuは、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
君は何も知らないままでいて。」

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僕は、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をついた。
それは本音とは真逆の嘘だった。
心の準備はできていない。
君の前で平静な顔をするので、せいいっぱいだ。
「まだ一人で生きていける」と君なしの人生を想像できないまま、僕は言った。
君は何も知らないでままでいて、幸福な人生を歩んでと思う。
今日もギリギリの時間に電車に飛び乗った。
これを逃すと遅刻する、そんな時間の電車だった、
いつものように朝ご飯は抜いてしまった。
座りたい、と思いながら電車に揺られる。
血の気が引く感覚がした。
すると「どうぞ、お座りください」と初老の紳士が言った。
ありがたく席を譲ってもらった。
スーツに羽根が生えていても、道行く人たちは気がつかないものだ。
自分たちの人生で精一杯だからだ。
それを電柱に腰をかけながら、ひとりの天使が見守っていた。
俯きがちに歩く少女に目が留まった。
天使は羽根を隠して少女に近づいた。
薄暗い瞳をした少女は驚きもせず、ぼんやりと天使を見た。
君に嘘でもいえない。
その言葉は『大嫌い』。
大好きな君相手にいえるはずがなかった。
そんな嘘をついて、万が一にも君に嫌われたら、考えるだけでも沈鬱となる未来だった。
だから、君の前では正直にいようと思う。
まだ『大好き』の一言を勇気を奮って言えないけれども。
言える日が来るだろう。
桜を花見してから、ほぼ半年。
月見の季節になった。
夜になる度に、君は空を見上げ、落胆する。
花見の時のように、行くわけではなかった。
月が見える時間は限られている。
そして、ここ数日曇り空だった。
星座早見盤を片手に、君は今日も熱心に空を見上げる。
花見以上に夜空に夢中になっていた。
20歳の誕生日に『松』を『待つ』にかけた和歌と共に、革靴が贈られた。
これからの人生を独りでも歩き出せるように。
贈り主の慈しむような視線は忘れられない。
初めて大人扱いされたのだから。
それにふさわしい人物になる、と革靴に誓った。
少なくとも贈り主に厭きられないように、と目標だ。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「君が幸せなら、幸せだよ」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、まるで愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それとも最後だから、甘く嘘を紡いだのだろうか。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
君の笑顔を見たくて囁いた。
「君が幸せなら、幸せだよ」と言った。
本当はそこに僕も含まれていなければならない。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
「大丈夫か?」と訊かれたから、反射的に「大丈夫」と答えてしまった。
どうやら返事を間違えたらしい。
あなたは心配そうな顔で「全然、大丈夫じゃないか」と私の頭を撫でる。
こういう場合、どんな風に答えれば良かったのだろうか。
「そうかな」と私は笑顔を浮かべて言った。
泣きたかったのに。
研究室のカレンダーは春からめくられていない。
めくる人物がいなくなったからだ。
部屋の主は新しい方程式に没頭する。
カレンダーなんていらないように、来る日も来る日も研究を続ける。
やがて出来上がったのは奇跡のロボット。
鼓動を刻まない心臓を除けば、部屋の主の愛娘そっくりだった。
夕方、何かを探すように君は夕陽を見つめていた。
探すものは見つからない。
そう分かっているように、落ちていく夕陽を眺めていた。
約束一つできない我が身であれば、俯くばかりだった。
ぎこちなく、君の指を指先でなぞる。
夕陽よりも燃えるような赤い糸が結ばれているのか、と確認するように。
夢の世界にさまよいこんだのだろうか。
異形な人物たちが行きかう街にいた。
どこかで見たことのある風景だった。
まるで眠る前にめくっていた本の世界へと誘われたようだった。
すでに読み終えた本は枕元にあったはずだ。
兎耳の紳士がシルクハットを取り「物語をもう一度、始めましょう」と言う。
朧げな記憶で絵を鉛筆で描くことになった。
お題はシャッフルされた。
僕はその中から、一枚を引く。
『脇差し』と札には書いてあった。
「脇差しって何?」僕が訊くと君は馬鹿にしたような笑顔を浮かべた。
知らないことが恥なような気がして僕は歯噛みする。
「刀剣の一種だよ」君は楽し気に言う。
今日は雨が降らず、晴天でデート日和だった。
この日のために雑誌を読み予行演習はばっちりだった。
僕は「はぐれるかもしれないから」と言い訳をした。
目を逸らしつつ、君の指先を握り締める。
僕の手を違い、細い指は消え入りそうなほど儚く感じた。
僕の顔が赤くなっていることがバレないかな。
青年は少女と水族館で魚を泳ぐのを見ていた。
少女がこういった場所に来るのは、初めてだったらしい。
少女が無邪気にはしゃぐ度に、青年の胸は痛んだ。
神剣・神楽の巫女というだけで、どれほど自由を奪われていたのか。
それを知らさらせるように。
戦いが終わったら色んな所を巡ろうと決意した。
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