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「 140文字の物語 」
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今日は両親と共に、結婚相手に挨拶に行く。
この結婚はいわゆる政略結婚だから、失敗はできない。
さんざんと聞かされた言葉だった。
恋愛結婚をして別れるぐらいならマシなのかもしれない。
「初めまして」同じ年頃の少年が手を出して挨拶をした。
私はさりげなく、反抗の意志で指先に爪を立てる。
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少女はキッチンにこもって、桜の花びら型のクッキーを焼いた。
余熱を覚ましたそれをお隣さんまで届ける。
インターフォンを鳴らすと幼馴染の少年が出てきた。
少年は笑顔で「賄賂?」と言った。
「確かに中間テストの成績は悪かったけど」と少女は唇を尖らせる。
「もたれかかるつもりはないよ」
これで会うのも最後だと思ったら、目の奥が熱くなった。
行ってほしくない。
ずっと傍にいて欲しい。
そう思っていても、行動を起こすには私たちは子どもすぎた。
私はぎこちなく、あなたの腕をぎゅっと握る。
言葉にできない分、態度に出た。
あなたはゆっくりと、私の指を一本ずつ剥がしていった。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「永遠を信じている」、と。
・・・どうしようもないな。」

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僕は、さりげなさを装って最後の噓をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
「永遠を信じている」と君の手を握って言った。
古い本にも『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。』というじゃないか。
永遠なんてものはない。
分かりながら口にする。
・・・どうしようもないな。
「この花が枯れたとき、私は生きているのかしら?」ベッドに横たわっている女性はポツリと呟いた。
少しでも気分が明るくなるように、切り花を見舞いの品にしたのは失敗だったろうか。
女性は震える手を伸ばして、花瓶に活けられた花にふれる。
「生きているものは素晴らしいわね」と女性は笑う。
青年は神剣・神楽を敵対した同胞に振るう。
蠱惑的な女性の姿の同胞が青年の首を狙う。
首を落とさない限り、死なない。
どちらも立派な化け物だ。
死んでも不安はない。
青年は家族がいない身だ。
わずかに青年の剣筋がブレる。
自分が死んだら、結界の外で信じて待っている少女はどうなるのだろう。
青年は少女に木陰で本を読み聞かせをする。
読む本はいつも同じ。
少女がお気に入りの『人魚姫』。
恋をして報われずに、泡となった悲劇のお姫さま。
そんな悲しいお話が少女にとって特別だった。
「どうして人魚姫が好きなんだい?」青年は少女に尋ねた。
「だって人魚姫は恋を選んだのよ」と笑う。
この世の中、どこにでも行けるわけではない。
窮屈な生活をしている。
デートコースにも気を遣うありさまだった。
恋人の誕生日に日帰り旅行を決意した。
二人そろって二回目のワクチンは接種済みだ。
恋人は見知らぬ土地にきて大喜びだった。
「はぐれたらいけないから」さりげなく、指先に触れる。
少女と寒くて泳げなくなった海へと向かった。
電車を乗り継ぎ、海についたのは昼過ぎになっていた。
少女は寄せては返す波間を裸足で歩き出す。
少女が遠くなってしまったようで、つい名前を呼びかけた。
用があったわけじゃないけれども。
振り返った少女は哀しい顔をしていた。
そこには愛がある。
録画されたDVDに傷跡があった。
無事に再生できるのか、僕は悩む。
DVDの表面には『お誕生会』と書いてあった。
「再生しないの?」君が尋ねる。
僕は無言で傷跡を見せる。
「見られなかったらその時だから、とりあえず再生してみようよ」と君は明るく言った。
一理あったので僕はディスクを入れる。
白尽くめの室内はどこか不安を生み出す。
名前を呼ばれるまで待合室でぼんやりと待っていた。
病院はいつでも、心を落ち着かせなくする。
私は力強く、両手のひらをぎゅっと握る。
マスクの中、早くなる呼吸。
何度きても慣れなくて、心臓が早くなる。
白尽くめじゃなくて極彩色であればいいのに。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

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僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と僕は言った。
君はパーティーの要のヒーラー。
僕はダメージディーラーだ。
役割は決まっている。
どうせ仮想世界での死だ。
これが本音なら、楽だったのに。
カッコつけた。
喜怒哀楽が乏しい彼は、さらに表情が乏しかった。
平坦な『愛している』にも慣れてきた頃だろうか。
彼の誕生日に、手作りのクッキーをプレゼントした。
どうせ喜びが薄いなら、消えものがいいだろう、と思って。
彼の顔に仄かに笑顔らしきものが浮かんだ。
「うまく笑えていないのは自覚してる」
噂の絶えないクラスメイトと付き合うことになった。
もちろん、お試し期間を条件に付けた。
付き合っている間に、他の女子とそういう関係になられたら厄介だ。
彼はその条件をすんなりと飲みこんだ。
誰もが夢中になるわけが解った。
彼氏ともう呼んでもいいのだろうか。
彼の気配りは卒がなかった。
僕たちは透明に近づく夜空を仰ぐ。
「月が出ている時間がいいよ」と君は言った。
「天体観測に月の明るさは邪魔だよ」と僕は言った。
堂々巡りをくりかえすのは、今夜だけではない。
「でも」なおも言おうとする君の唇に人差し指でふれる。
柔らかな感触に本来の目的を忘れそうになる。
「静かに」
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