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「 140文字の物語 」
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男の人は大きな体と大きな声で、距離をつめてくる。
初めてのお付き合いだから、ちっとも加減が分からない。
近すぎると怖い、離れても嫌。
もうちょっと曖昧な距離がいい。
それを告げて、離れ離れになるのも嫌だった。
だから今日も告げられなかった。
繋いだ手が震えているのに気がつかれたかも。
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雲と雲の隙間にできた夜空が傷跡のように思えて、眠れない。
雲が痛がっているように思えるのだ。
そんなことはないのに、想像は広がる。
そして、脱走していく羊の群れを数えながら、窓から天井に目を移す。
意味のないことだと分かっているけれども、気休めだ。
朝が来る前に、そっと目を瞑る。
季節外れの肝試し大会。
こんなことを開催しなければ手すら繋げないのは情けない。
主催の計らいで、気になるあの子と一緒になれるようにクジを作ってくれた。
怖がりなあの子は「手を繋いでいい?」と言ってきた。
作戦通りだった。
僕はいたずら心を起こして、ぎこちなく、腕を指先でなぞる。
遊園地もそろそろ閉まる時間だ。
「最後にどれに乗りたいの?」と尋ねると、君は渋い緑色の観覧車を指さす。
意外に恋人らしいことをするんだな、と僕は思った。
二人そろって日本茶色の観覧車に乗る。
空がどんどん近くなっていく。
にんじん色の夕焼けが綺麗で、永遠を信じたくなった。
「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

------

僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それは自分が楽になるための嘘だった。
自分だけでも手いっぱいなのに、君の分まで面倒を見られない。
君を喪うぐらいなら、嘘をつく。
「これ以上関わらないでくれ」と言った声は情けないほど震えていた。
君は何も知らないままでいて欲しいと願う。
「お願いしていく?」と僕はできるだけ軽い口調で言った。
地域に親しまれている稲荷神社だ。
「神無月だから神様は出張中だよ」と君は笑った。
「じゃあ、出雲までいく?」僕は笑って言う。
「せっかくだからお参りしましょうか」君は言った。
僕は『君が誰のも物にもなりませんように』と祈った。
「あなた恋愛している?」と朝っぱらから母に訊かれた。
父はお味噌汁を飲んでいたのか、むせて咳きこんだ。
「こいつは恋よりも、食い気だろ?」と2杯目のご飯を食べていた兄が言った。
「良いお相手がいないなら、ご紹介してもらいましょうか?」と母は言う。
「自分で決めるよ」と私は言った。
今日の夜会も壁の花。
平民から成りあがった男爵令嬢と踊るような貴公子はいない。
そんなことは分かっている。
けれども社交界に出るのは大切だ。
色々な情報が飛びこんでくる。
それを父に知らせるのが役目だ。
今日も耳を澄ませていた。
すると一人の男性がやってきた。
アメジスト色の瞳が光る。
学校の屋上は貸し切り。
先生が屋上に入らないように鍵をかけているからだ。
僕たちは秘密を知っている。
その鍵が壊れていることを。
だから、今日も屋上に入りこんだ。
いつもは楽しそうな君が一言も喋らない。
それどころか怒り顔で、僕の指先を軽く握る。
「他の子と喋っていたでしょう」と言う。
「どんな君も好きだけど、笑顔の君が好き」と僕は告げた。
すると君は頬を赤くした。
「気安く『好き』なんて言わないで」と君は頬に手をやる。
僕はちょっと意地悪な気分になった。
「どうして?本当に思っていることなのに」と尋ねてみる。
「だって恥ずかしい」と俯いた君の語尾が小さくなる。
猫にDeleteボタンを踏まれた。
今まで入力していたデーターの一部が消えた。
こまめにバクアップを取っていたからいいものの、消えたデータは頭の中だ。
早く入力しなければ忘れてしまう。
キーボードの上に鎮座した猫をどけようとする、が、ちっとも動かない。
このまま記憶すら盗む気か、と怒る。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

------

僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
どうか、この嘘が貫けますように、そう神様に祈った。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
二度と曇らせたくなかったから、嘘をついた。
「いなくなったりしないよ」と微笑みすら浮かべて言った。
君に嘘だと言えたら、どんなに楽になれるだろうか。
ぼくたちが恋する理由は何だろう。
好きになってしまったから?
みんながお付き合いしているから?
独りぼっちは寂しいから?
どんな理由があるだろう。
どれもが正解で、どれもが不正解だった。
ぼくはきみだから恋に落ちたんだ。
シンプルな理由だけれども、それが事実だった。
そういうきみは?
僕と君とは、ありふれた出会いだった。
同じ学校の同じクラスの隣の席。
初めて言葉を交わしたクラスメイト。
僕は君に惹かれて、文化祭の後に告白した。
君は笑顔でOKしてくれた。
そして、今またありふれた哀しい別れを告げる。
進路が別れたのだ。
僕は上京して大学に通う。
君は専門学校だった。
「椿を数字にしたら、どの数字になると思う?」と僕は君に問いかける。
縁側で日向ぼっこをしていた君は「1番でしょ」と言った。
「どうして、そう思うんだ」僕は振り返って尋ねる。
「あなたが1番好きな花だから、1番」と笑顔で言った。
僕は椿の葉を放して「そうか」と頷いた。
よく見ている。
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