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「 140文字の物語 」
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あれはまだ蝉時雨の中の記憶。真夏の記憶。付き合いたての僕たちの記憶。
夏期講習も終わり、本格的な夏休みに入った。
君は満面の笑みを浮かべながら、僕の両手を両手で包む。
「たくさん思い出を作ろうね!」と君は声を弾ませて言った。
一度きりの夏の記憶。
雪が舞う今日も君は僕の隣にいる。
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「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

------

僕は、祈るような神聖な気持ちで最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。そのための嘘だった。
「怖いものなんてないよ」と君に言った。
こうして君と離れていくのが怖いのに、作り笑いで僕は告げた。
「それなら良かった」と君にも笑顔が浮かぶ。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
君はアルバムを広げていた。
そんな君の存在感は薄く、今にも消えてしまいそうだった。
君は何枚かの写真をアルバムから引き抜く。
そしてその写真を僕に見せる。
どれも二人が笑顔で映っている写真だ。
「必要?」と君は尋ねる。
「君が必要なら」
「そのくらいなら、持っていくのを許してくれる?」
霞でも食べているんじゃないか、と思うぐらい君の食は細い。
少しでも栄養価のある物をと頭を巡らせて、僕はキッチンに立つ。
幸い君には好き嫌いはない。
できたての料理をダイニングに並べる。
君は「ありがとう。いただきます」と感謝の言葉を述べる。
「どういたしまして」と僕は笑顔になる。
外は雷鳴がとどろいていた。
雷が避雷針にひとつ落ちる度に、唇を噛む。
こんな日に限って、あなたの帰りは遅い。
雨に濡れて帰るあなたの心配よりも、たった一人きりで雷に耐える自分自身を優先させた。
あなたがいれば『大袈裟だな』と笑いながら、抱きしめてくれるのに。
部屋の片隅で縮こまる。
ビルの屋上、フェンス越しに裸足の君と目が合った。
僕がいるフェンス前には揃えた靴と白い封書。
どんな気持ちで君はそこに立っているのだろう。
かける言葉は見つからなかった。
だからさりげなく、君の手のひらに指を絡める。
フェンス越しの握手に君は仄かに笑った。
そして君はゆるりと解いた。
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
・・・どうしようもないな。」

------

僕は、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
それは本音と真逆の嘘だった。
こんな嘘を君についてどうするのだろう。
事態は変わらないだろう。
それでも言わずにはいられなかった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と尊い毎日に向かって言った。
本当に・・・どうしようもないな。
ここ数日あたたかかったから、体内時計が狂ってしまったのだろう。
枝に桜が綻んでいた。
もうすぐ寒波がやってくる。その時、この咲いたばかりの桜はどうなるのだろうか。
誰にも気づかれずに散ってしまうのだろうか。
それは哀しい。
手にしていたスマホで桜を撮影して、タイムラインに流した。
いつか遠い未来に郷愁を覚えるのだろうか。
僕は列車に乗りながら、変わっていく風景に目をやった。
生まれ育った町から遠ざかっていく。
今は寂しさを感じない。心の中は期待であふれていた。
君から最後に貰った手紙を開封する。
要点を得ない文章が並んでいて、おしゃべりな君らしいと脱力する。
修学旅行の班活動。
何故だか、みんな好き勝手に歩き出した。
予定表通りにはならない。
笑顔で『集合時間に再会しようか』と言って去っていく。
私と班長だけが残った。
「どうする?」と班長が訊く。「予定表通りに」と私を答えた。
班長は目を逸らしつつ、両手のひらを触れ合わせる。
嬉しかった。
「iotuは、痛みを堪えながら最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
・・・うまく笑えたかな?」

------

僕は、胸に走る痛みを堪えながら最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
僕というゲージの鍵を開けるね。
これで君は自由だ。どこにだって行ける。
「世界は希望で溢れている」と最後に君の羽を撫でる。
どんな突風でも君は飛んでいけるだろう。
僕は君に・・・うまく笑えたかな?
薄暗い寝所で一夜限りの花が咲く。
仮面舞踏会とはそういうものだとお互い知っていたはずだった。
夜が明ける前に、ダンスを踊りましょう。
どんな曲目も、ステップを間違えるなんてことはしない。
儚い出会いだから、酒に浮かされたような瞳で見つめあう。
もう一度好きになって、とは言えない。
青年は不幸にも苦悩し続けることになる。
青年の心を盗む少女との出会いによって。
蝶のようにひらりひらりと舞い遊ぶ少女は、青年の気持ちをハラハラとさせた。
それでいて青年の心をつかんで離さないのが不幸なところだった。
どうすればこの想いを忘れ去ることができるのだろうか。苦悩は続く。
真夜中にLINEが飛んできたから、寒い思いをしながら外に出た。
用件は書いていなかったから、文字に残せないことだろうと思った。
ただ『会いたい』とだけ、文字にされた。
慰めの言葉をピックアップしながら歩いた。
すると君は笑顔だった。裏切られたと思った。
君は軽々しく、腕を指先でつつく。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

------

僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
神様、どうかこの嘘に祝福を。
それは前へ進むための嘘だった。
君を置いていく。
だから君に対して、冷たい言葉を吐く。
「これ以上関わらないでくれ」と迷惑そうに僕は言った。
こんなことしか言えないなんて。自分自身に失望する。
僕はただ前を向く。
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