幼馴染の家の縁側で日向ぼっこをしていた。
昼間の光は柔らかく、あたたかい。
猫ではないが眠りたくなってしまう。
「好きな人ができたんだ」と幼馴染が言った。
兄妹のように育ってきたけれども、知りたくないこともあるものだ。
思わず耳を手でふさいだ。幼馴染は手を握る。
「隣にいる女の子」
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少年は今日も空色のブックカバーをしている本を読んでいた。
毎日毎日読んでいるのだから立派な活字中毒者だ。
本に狂う姿に少女は退屈していた。
「手、貸して―」と少女は言った。少年は無言のまま手を差し出した。
少女は少年の手のひらと重ねる。
少年の手のひらの方が、ほんの少し大きかった。
咳がコホッと出た。
見舞いに来てくれた友だちに「ごめんなさい」と私は謝る。
長く患っている病気だから、こっちは慣れっこだけれども、友だちは違うだろう。
顔に心配げな表情が浮かぶ。
それからぎこちなく、私の指先を握り締める。
「辛いよね」と友だちの方が、よっぽど辛そうな声で涙ぐんだ。
「iotuは、無理に笑顔を作って最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」
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僕は、無理に笑顔を作って最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
ここで二人そろって、共倒れになるよりもいい。
そんな決断を胸の内でした。
それでもくりかえし後悔が襲ってくる。
「これ以上関わらないでくれ」と作り笑いのまま言った。
君の前で・・・まだ、泣いちゃだめだ。
夫は記念日を忘れない。
二人の出会った日、二人が付き合い始めた日、二人が初めてキスをした日。
その中で格別なのは、結婚記念日だろう。
真っ赤な薔薇の花束を抱えて帰ってくる。
最初は一輪、やがては結婚した年の数だけ。
「君には死ぬまで、綺麗なままでいてほしいんだ」と夫は甘くささやく。
家が破綻した。学校は卒業できるだけで、その先の未来は見えない。
私を取り巻いていた連中は、手のひらを裏返したように去っていった。
そして遠巻きに、私に降りかかってきた不幸を喜ぶ。
信じられる友だち一人、作ることができなかったのだと私は痛感した。
このままでは、野垂れ死にの運命だ。
「ほら」と腕を差し出された。
過去の経験から、吊革につかまれない私がよろめくと知ってのあなたの行動だった。
私は仕方なく、あなたの腕に指を絡める。
これじゃあ、まるで恋人同士。
あなたは親切でしていることだと分かっているから辛い。
このまま恋人になれれば良いのに、ともたれかかった。
君は夜に描いていた夢を現実の夢にするために、歩き出した。
僕はその背中を見送った。
真っ直ぐと将来の夢に向かう君は眩しかった。
たぶん振り返ることもないだろうから、僕は声を上げずに涙した。
言えなかった言葉たちが心の中からあふれてきて、涙が止まらない。
本当は置いていかないで、と。
拾ったばかりの枝で、水溜りの水面に君の名前を書いた。
静かだった水面は玉響に揺れる。
そして、そっと水溜りがあふれかえらないように気をつけて『大好きだ』と枝で書く。
波紋は儚く、揺蕩った。しばらくしたら、この水面も凪ぐのだろう。
その切なさに気がついてハッとする。永遠はないのだ。
隠れ鬼の始まりだ。僕と君は路地裏に隠れる。
「もういいかい?」鬼役の子の声が風に乗ってやってくる。
だから僕も「もういいよ」と答えた。
そして優しく、君の指先を握り締める。
「もし僕が見つかりそうになったら、逃げるんだよ」と僕は言った。
「一緒がいい」と君は涙目になって小さく呟く。
「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」
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僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
君にこんな言葉をかけるのは、いやだったけれども、別れの刻がきた。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と君の瞳を見つめて言った。
君こそ希望そのものだったのに。
いっそ笑い飛ばしておくれよ、最低の嘘に。
新聞を広げると、堂々とその上に箱座りをする。
お気に入りの段ボールを横に置いて、その中に座らせる。
いつもだったら、段ボールの中で丸まって眠るのに新聞紙の上に乗る。
誰だこいつを甘やかしたのは。文句の一つも言いたくなる。
手のひらに乗っていた捨て猫も、今やふてぶてしく丸くなった。
神剣・神楽を持ってしまっても、みんなの生命が守れないと思い知った夜。
砂が指の隙間から零れるように、生命は流れていく。
同胞殺しの妖刀でも、できないことがあるのだと痛感する。
だから、せめて少女だけは守りたいと青年は決意する。
寄り添いあうように、独りぼっちだった過去を振りきる。
海を見ると、昔の傷跡を思い出す。
君と出会ったのは、まだ眩い夏だった。
白いワンピースに藁帽子を被った君は波打ち際を歩いていた。
季節は巡りゆく。
君も元のようにはいられなかった。また、僕も変わっていった。
冷たい潮風にあおられて、もういない君を想う。
今頃、どうしているのだろうか。
二人で内緒の日帰り旅行。
思ったより人波があって、僕は君とはぐれた。
スマホでLINEを送るものの返事は返ってこない。
どうしたものかと思案していると、君がいた。
泣き顔で、僕の両手に爪を立てる。
「置いていかないでよ」と君は言う。
「じゃあ、手を繋ごうか」と僕は提案した。君は頷いた。